会長談話「新型インフルエンザ等対策特別措置法」改正案成立に危惧を表明します

日本医療福祉生活協同組合連合会
代表理事会長理事 髙橋 淳

 

WHOが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をパンデミックと認定する中、新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」を追加する改定案(以下、改正特措法)が、3月11日の審議開始から2日後の3月13日に成立しました。

改正特措法では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で国民の生命などに甚大な影響を及ぼすおそれがある場合などに、首相による緊急事態宣言が可能になると定められています。首相の権限が拡大される一方、国民の権利が著しく制約される可能性があります。また、首相は緊急事態時に民放の放送内容に指示をすることはしないと国会で答弁しましたが、改正特措法上は政府が民放に介入する可能性を否定できません。
このような人権制限は、必要最小限度にとどめられるべきですが、宣言を出す場合の基準は元の特措法のままで「著しく重大な被害」「全国的かつ急速な蔓延」と発動要件はあいまいです。また、集会などを制限することがどの程度感染拡大防止効果があるのか科学的根拠も示されていません。その対象も、「政令で定める多数の者が利用する施設」とされているのみで、極めて広範な施設に適用可能な規定となっています。
新型コロナウイルス感染症の被害を最小限に食い止めることが最重要課題であることは論を待ちません。しかし、首相がイベントの自粛や一斉休校を唐突に要請したことには各方面から疑問がよせられています。国民や国会への説明は不十分と言わざるをえません。このような現状をみると緊急事態を理由に首相に過大な権限が付与される改正内容に疑問が残ります。

緊急事態であるからこそ、専門家の意見をふまえて科学的根拠を明らかにし、国会で迅速かつ丁寧な論議を行い、国民の理解を得ることが重要です。このような過程を経ずに、緊急事態宣言によって首相に権限を集中させることに強い危惧を表明します。

以上

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