「人はひとりでは生きていけんのじゃね、お互いに支えあわんとね」医療生協健文会:comcom11月号

お結びの会

「みんな手伝って。男手がないと困るけぇね。ほら、汁を入れて、机並べて」「今日は男性が手伝ってくれた盛り付けじゃから、どうじゃろ?よぉ見てくださいね」。

ここは、生協小野田診療所2階の組合員ルームで開かれている「お結びの会・男前サークル(以下、お結びの会)」。毎月第3木曜日の午前11時から午後1時まで、支部運営委員や近隣に住む単身男性が集まっておこなわれる、おしゃべりして、食事をする場です。2016年3月にはじまりました。

お結びの会

休眠支部からのスタート

小野田中央支部は2013年から支部長不在で2年ほど休眠支部でしたが、支部の再開をめざし、つながりマップにとりくみました。2015年のことです。担当理事や運営委員が集まり、マップとつながりつくろう宣言シートは完成しました。ちょうどそのころ、班会に参加していた組合員が認知症になり、行方不明の後、遺体で発見される出来事がありました。さらには、およそ1か月飲まず食わずの男性を発見し、地域に閉じこもり男性が多数生活されていることを知りました。

支部の運営委員は7人。うち2人がハンディキャップを抱えており、男性が1人、運営委員になりたての方が2人、会計担当は仕事があり日々の活動は難しい状況。支部長不在のため常務理事が代行を務めています。ついさっきまで何もしていなかった支部が、いきなり地域のために何かをしようと思っても、何をどうしてよいのか分かりませんでしたが、みんなの中に「人と話したり、食事をできる場所があればいいな」という思いはありました。

大村敬子さん(左から2人目)

「医療福祉生協は健康づくりをいろんな場所でやっています。居場所づくりもすすんでいます。でも、何か違和感を持っていました。班会や居場所って、そこに来ることができる人しか参加できません。亡くなった認知症の組合員は、ずっと班会に参加していましたが、認知症で班会に来られなくなってからは、つながっていませんでした。認知症や病気などになった時点で違う世界の住人になるのではありません。くらしは続いていくのです。元気なときでないと班会や居場所に参加できないのはおかしい。参加できない人はどうするのか? 生協の仕組みや活動がそのような人にアプローチできないか、これがそもそもの発想です。来たくても来られない人へアプローチをするのだから、送迎もしますし、気になる人へお誘いの電話もします」というのは、常務理事(小野田中央支部支部長代行)の大村敬子さんです。

医療・介護とくらしを結ぶ場

女性は集まっておしゃべりが得意。男性はどうだろうか?「一人が気楽でいいよ」という人がいるけれど、本当にそうだろうか。誰ともつながらずに一人で生活することを心底望んでいるとはどうしても思えない。そこで、単身男性に人と人を結ぶ場を提供し、参加を通じて社会とのかかわりを持ってもらえればと「お結びの会」がスタートしました。

宣伝チラシをつくり、診療所から心配な患者を紹介してもらうなどして、第1回目のお結びの会には7人の単身男性が集いました。参加費は100円です。助成金をもらっていないため、カンパのお米、漬け物、野菜を使って、お結びと豚汁、小鉢を運営委員さんが手作りしました。一緒に食事をして、少しゲームをしたり、音楽を聴いたりしますが、ほとんどおしゃべりです。

お結びの会

最初は「一人でもなんともない」と話されていた方が、「一日、誰とも話さんこともある」とつぶやきます。ある人は、「妻が亡くなって、何がどうなっているか分からんで苦労した」など生活上の苦労話を語ります。次回は天ぷらが食べたいとの声が。主婦には普通の料理ですが「油が怖いし、あげるタイミングが分からん」とのこと。なるほどと納得します。

会の最後には、心を込めて、一人ずつ握手をして終わります。最初は照れくさそうにしていた参加者も、3回目になると出口で握手をするのを待っていてくれるようになりました。心通う瞬間です。

お結びの会

食後のおしゃべりでの一場面。「みなさんの中で入れ歯の人いますか? この人ね、ここに来るようになってから下の歯医者(生協小野田診療所歯科)に行くようになったんよ。今度、総入れ歯になるかもしれんのよ」。それを聞いたある参加者は、「私、入れ歯や。入れ歯にしたら食べ物が美味しくなくなった、合わなくなったらろれつが回らなくなる。初めてつくるから緊張しとるんじゃろ。大丈夫いねぇ。すぐできる。歯がないと困ることもあるけど、歯が痛くならんでええわ。歯なんてないほうがええわ、ハハハッ!」。アドバイスが正しいかどうかは別として、先輩から入れ歯ライフを聞いた本人はずいぶん安心した様子です。診療の場で専門家の話を聞くこと、くらしの場で経験者の話をきくこと、両方あってこそ一歩前にすすめるようです。お結びの会は医療・介護とくらしを結ぶ場でもあります。

支えられる人がいるから、支える人が輝く

単身男性からスタートしたお結びの会は、高齢者にも広がっています。つながりマップで、支部運営委員は「デイサービスたんぽぽ」に多くの組合員ボランティアが参加していることを知りました。大切な財産がすぐそばにあったのです。事業所、組合員が協同することによって高齢者版お結びの会がはじまりました。15人ほどの参加で初回を迎えましたが、宇部日報()に掲載されたこともあり相談が増えています。将来的には、総合事業を視野に入れています。

 ※宇部市と山陽小野田市を中心とした地域の夕刊紙

11月には、他の支部で新たにできる自治会館を利用して、ご近所さんの力を借りながら、町内会単位でお結びの会を開催する予定です。子ども向け「お結びの会」も企画中です。

「つながれない人を救いたい」と、ちょっとだけ前のめりの熱い思いで始まったお結びの会。回を重ねるにつれ、人が集まるにつれ、その熱い思いが少しずつ冷やされながら、見えてきたのは「楽しさ」でした。

大村さんはいいます。「正しい・間違っているなど二つの結論で考えるのではなく、その中間にもいろんなものがあります。お結びの会も一緒です。支える側、支えられる側の二つしかないのではなく、ごちゃごちゃです。当然、役に立ちたいという思いはありますし、それは自然なこと。奉仕したいと思ってやっても別にいいんじゃないでしょうか。でも、結局は誰かのために奉仕している自分を楽しんでいるというか。まぁ、発展途上です。私たちはどういう形で成熟するのでしょう、楽しみでもあり不安でもあります」。

支える人、支えられる人という二分法では、どうも座りがわるい。支える人は、支えられる人がいて初めて輝きます。支える私、支えられる私、何もしない私、そこにいろんな私がいること、ただそれだけといえばいいすぎでしょうか。

お結びの会

最後に、ハンディキャップを抱える普段無口な運営委員さんがポツリといったひと言を紹介します。

「人はひとりでは生きていけんのじゃね、お互いに支えあわんとね」

文:会員支援部 江本 淳
写真:大村洋介

生協小野田診療所

<医療生協健文会>

●設立年月日  1990年3月1日
●組合員数   18,251人
●出資金    5億9,969万9,000円
●支部・班数  19支部 80班
●事業所数   病院1 医科診療所2 歯科診療所3 介護関連10

※2016年8月31日現在