「遠くの親戚より 近くの他人」ろっこう医療生協:comcom10月号

ろっこう医療生協の活動

山村ちずえさん

山村ちずえさん

「大根をおろしてね」「そうめんはいつゆでる?」。お互いに声をかけあいながら昼食会の準備がすすみます。今日は、神戸市灘区の団地内の集会所で2か月に1度開かれる「よんさんみなみの食事会」です。名前の由来は「東西に走る国道43号線の南側にあるからです」と、組合員の山村ちずえさんが教えてくれました。

ろっこう医療生協西郷支部は神戸市灘区を中心に活動しています。灘区は市の東部に位置し、全国的に有名な酒蔵メーカーが本拠地を置く市内でも有数の酒蔵地域です。

食事会

震災から21年、声かけから広がる活動

支部長の横野征子さん

支部長の横野征子さん

1995年1月17日5時46分、淡路島北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生。神戸市は震度6、一部地域では震度7に相当する揺れが発生しました。死者6千434名、10万棟以上の住宅が全壊し、全半壊は25万棟以上と大きな被害を出しました。多くの人が、阪神・淡路大震災により住宅を失い、生活基盤を失いました。速やかな住宅の大量供給が必要になり、兵庫県、神戸市、西宮市、尼崎市、伊丹市、宝塚市は都市再生機構(UR)や民間マンションを20年の期限で借り上げて「借上復興公営住宅」として住居を提供しました。

西郷支部では、震災直後から隣接した市営住宅で食事会を開催してきました。「市営住宅に移り住んでくる人が孤立しないようにと始めた活動でした」と語るのは支部長の横野征子(ゆきこ)さんです。現在は、市営住宅だけでなくUR住宅の住民にも広く声をかけて、食事会への参加を呼びかけています。

元気な顔が集まって、食事会がはじまります

藤田比沙子さん

藤田比沙子さん

藤田比沙子さんは、震災直後から食事会に参加しています。藤田さんの自宅は震災で全壊。自宅は再建できたものの、数年前に夫が亡くなり、ふさぎこむようになったといいます。しかし、仲間から声をかけられて出かけるようになることで、少しずつ明るさを取り戻しました。

「食事会に来ることで一人ぼっちにならなくてすんだ」というのは八瀬林芙美子さんです。「人のお世話になろうとは思っていないけど、ここに来るとやっぱり楽しい」と語ります。みんなでおしゃべりをしながら昼食会の準備をするのも楽しい時間になっています。

12時前に少しずつ人が集まってきます。料理を並べながら、参加者の顔を見て「今日は3号棟から誰も来ていないね」と気にかけているのは下村ヒデ子さんです。朝から準備していた下村さんは今日が86歳のお誕生日。「手伝ってと声をかけられるからついつい来ちゃいます。でも朝起きるのも遅くなったし、正直、しんどいときもあります。だけどここに来なければどこにも出かけない。それがわかっているから、来ない人にも一人ひとり電話して誘うんですよ、顔見せてねって」。みんなが集まってきたところで、食事会がはじまります。最近のことや、ニュースの話などおしゃべりをしながらの食事は格別です。

食事会

頭をよぎる不安。だけど目標があるから

震災から21年たった今、復興支援住宅入居者が退去を迫られるという大きな問題に直面しています。前出の山村さんは、震災後、復興住宅に入居しました。「入居の際に20年経過したら返還するという説明はなく、契約書にも書かれていませんでした。明け渡しを知らせる手紙が届いたときは本当に動揺しました。1年半後には出ていかなければならないんです」といいます。移り住んでから、長い年月をかけてやっと仲間ができたのに、また散り散りに別れてくらすことを、強制されるつらさは、言葉ではいい表せないものです。年齢など条件によって住み続けられる可能性はあるとのことですが、「他の災害復興公営住宅では、行政が住人に対して明渡請求訴訟を提起して、もう、入居者自身がくたくたです」「あの人は70代やから、出ていかなあかんねん」「署名したらどうなるんやろう」と食事をしながらも話題は住まいの話に。

そんななか、「私たち西郷支部の運動テーマは『孤独死をなくそう』です」と山村さんは力強くいいます。「医療生協の組合員から『孤独死』を出さない、それが目標です。私が不安なように、みんなも不安。でも一人で考えてもしかたがない。こうやって誰かと会ったり、話すと不安もやわらぐんです。そのために食事会や訪問活動を積み重ねています。遠くの親戚より近くの他人、お互いに鍵を預けられるくらいの関係になれれば安心です」。

食事会

西郷支部では、団地の住民に班会での健康チェックやサークル活動への参加呼びかけなど、様々な孤独死をなくすとりくみをしています。「あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)」が主催する食事会や喫茶のお手伝いなどの活動に協力、また、民生委員のもとで高齢者の一人住まいの方を訪問する「見守り行動隊」にも参加しています。ろっこう医療生協西郷支部のいのちとくらしを守る~孤独死をなくす~とりくみは続きます。

組合員と職員でつながりマップを作成

ろっこう医療生協は、2015年度、つながりマップを19か所で作成、支部ごとにマップをもとに組合員と職員がいっしょに19か所の「あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)」を訪問し、ろっこう医療生協の事業と活動を広めました。

(編集部)
写真:大村洋介

六甲道診療所

<ろっこう医療生協>

●設立年月日  1980年11月
●組合員数   21,389人
●出資金    5億5千738万8千円
●支部・班数  15支部・159班
●事業所数   医科診療所4、介護関連8

※2016年7月31日現在