組合員が自らつくる参加型福祉サービス 福祉クラブ生活協同組合:comcom9月号

「港北子育て支援サービスワーカーズ ぽけっと」の山根桂子さん

「今日も元気ですか?」と声をかけながら、食材や生活用品などを組合員が自分の担当組合員に届けます。

2015年7月、神奈川県を中心に活動を広げる「福祉クラブ生活協同組合」が日本医療福祉生活協同組合連合会に加入しました。福祉クラブ生協は、日本で最初に誕生した福祉を専門におこなう生協です。

福祉クラブ生協がめざすのは、「在宅福祉支援システムづくり」です。「各地域の生活者が、組合員として参加し、コミュニティオプティマム福祉による街づくり」を掲げています。

在宅福祉支援システムづくりの3つの柱
在宅福祉支援システムづくりの3つの柱

コミュニティオプティマム福祉

年をとっても、障がいをもっていても、長年住み慣れた地域を離れることなく、地域での人間関係を大切にしながらくらしつづけたい。誰もが願うこの思いを実現するためには、地域でのたすけあい・ささえあいが何よりも大切だと考えます。たすけあいによる地域の最もふさわしい福祉のありようをコミュニティオプティマム福祉と呼びます。

福祉クラブが、地域に必要な福祉サービスをその地域に住む自分たちの手でつくり続けて27年目になりました。

親の支援を重要視する「港北子育て支援ワーカーズコレクティブ ぽけっと」

地域に必要な「もの」「サービス」をつくる

副理事長 大谷多佳子さん

「福祉クラブ生協」は1989年4月、1020世帯の組合員で設立されました。「組合員の困りごとに、対応できる組合員が手を上げて『ワーカーズコレクティブ』という組織をつくり、願いを実現させようというのが、基本の考え方です。組合員と『ワーカーズコレクティブ』と職員でつくる生協です」というのは、副理事長の大谷多佳子さんです。

「ワーカーズコレクティブ」は、地域にくらす人たちが、必要な「もの」や「サービス」をつくるために、働く人が自ら出資し、働き方に応じて分配し、かかわり合いながらみんなで運営する組織です。雇用労働ではなく無償労働(ボランティア)でもない、「有償労働のコミュニティワーク」という働き方です。

例えば、「世話焼きワーカーズコレクティブ」(以下、世話焼きW.Co)は共同購入事業の配達を担っています。その配達には「ポイント」と「宅配」という2種類の業務があります。「ポイント」業務は、自宅に届いたセンターからの荷物を仕分けし、近隣の組合員に配達します。「宅配」業務は、配送センターから宅配車両で配達をおこないます。どちらも組合員宅へ食材などを届けつつ、困りごとなどの相談にも応じます。流通産業でも宅配でもない、まさに地域の「世話焼き」です。

「ポイント」は、こんなことをしています

事業を支え、助け合いを広げる「世話焼きW.Co」

副理事長 大場英美さん

副理事長の大場英美さんが、横浜市にある「世話焼きW.Co」で「ポイント」として働き始めたのは、子どもが幼稚園に入ったころでした。「子どもが小さくても自宅でできることと、ちょっとした地域参加のような、ご近所の組合員とのおしゃべりに魅力を感じました。子どもが発熱すれば休み、夏休みは子ども連れでできるので自由で良かった。面白かったのは、自分たちで工夫してアイデアを出し、実現していくことでした」。「ポイント」は、担当するエリアの広さ、件数、運ぶ手段(自転車でも歩きでも車でもOK)を自分たちで決め、届けてもらう側の組合員も近所の「世話焼きW.Co」から来てくれるので、安心感につながります。福祉クラブ生協の共同購入事業を支え、組合員同士の助け合いを広げる「世話焼きW.Co」は今では、22自治体・行政区に増えました。

組合員が増えてくると、家事の手伝い、保育園の送り迎え、食事や移動手段の確保など、困りごとも多様になっています。各地域で様々なワーカーズコレクティブができ、訪問介護やデイサービスなど介護保険に対応した事業も立ち上がり、現在は18業種108団体のワーカーズコレクティブ、約3400人が活動する規模になっています。(2016年3月末現在)

入居施設やデイサービスの食事づくりを担う「とまと」

自分たちが受けたいサービスをつくる

福祉クラブ生協の創設の頃からかかわる進藤邦子さん

進藤邦子さんは15年前、ワーカーズコレクティブのメンバーとして組合員の通院に付き添っていました。ある日、「行くところがなくて、楽しいことが何もない」とつぶやいたのを聞き逃しませんでした。「デイサービスがあれば行くところができる」と仲間に呼びかけ、みんなでデイサービスを立ち上げたのです。ワーカーズ同士で助けあい、協同して新しい事業にとりくんできました。念願かなって開設したデイサービスに通う組合員は「ここには、昔から知っている人がいて安心で楽しい」と喜んでくれていました。

ところが、しばらくすると「近くに、入居施設があればいいのに」という声がたくさん出てきました。「どうやったら入居施設がつくれるんだろう?」と、ワーカーズのみんなで相談を始めました。土地探し、建設会社との話し合いなど、建設準備に奔走する毎日は、大変だったけど楽しかったと、進藤さんはふり返ります。

こうして2012年、入居施設「きらり港北」が開設しました。デイサービスや保育施設、本部機能なども併設した建物は、港北区新羽地区の活動の拠点にもなりました。いっしょに働く後藤恵美子さんは「デイサービスも入居施設も、将来、自分たちがお世話になる場所だから、自分が受けたい介護をしようとやっています」と笑顔で語ります。

デイサービスワーカーズコレクティブ「あゆみ」は入居施設「きらり港北」と同じ建物内

最期まで自分らしく生活したいと願う組合員のために

「成年後見」の相談を受ける佐々木肇さん

地域に高齢者が増えてくると、一人ぐらしの方など将来に不安を抱える人が増えてきます。「福祉クラブ生協は、法人として『任意後見』にとりくんでいます。組合員が、将来、判断能力が低下したときのために、福祉クラブ生協が任意後見人になることを想定し、支援内容などをあらかじめ決めておくのです。一人ぐらしや身寄りのない方は、認知症になったらどうしようと不安が強いので、最近は契約相談が増えてきています」と佐々木 肇さんはいいます。佐々木さんは、民間企業を退職後、3年前から「成年後見サポートW.Co」で活動を始めました。組合員が自分らしく生きるための支援は何か、希望にかなった後見サポートをこれからも提供していきたいです」と語ります。

自分たちで必要なサービスをつくり出し、助け合うことで在宅でくらし続ける仕組みをつくろうという福祉クラブ生協の活動は、さらに大きく広がっています。

労務・経理を担う本部事務ワーカーズコレクティブ「櫂」

(編集部)
写真:大村洋介

福祉クラブ生活協同組合

福祉クラブ生活協同組合

<福祉クラブ生活協同組合>

●設立年月日  1989年4月
●組合員数   16,434世帯
●出資金    15億9,771万円
●総事業高   38億8,486万円

※2016年3月31日現在