地域防災のとりくみで、連携をひろげる 倉敷医療生協:comcom7月号

防災を考える会

岡山県倉敷市は、人口約48万人、白壁の町並みで観光地として有名な「美観地区」や、重工業地帯の水島地区、港町の玉島地区など、地理や歴史の異なる多様な地域で形成された、とても魅力的なまちです。

防災の拠点としての玉島協同病院

台風16号で潮位が上がった海面

台風16号で潮位が上がった海面

水が引いた後はがれきの山に

水が引いた後はがれきの山に

1978年、倉敷市の南西の端、玉島港を臨む海岸に玉島協同病院が開設されました。普段は晴れた日が多く、温暖な瀬戸内式気候に恵まれた地域ですが、2004年、大型で猛烈な勢力を持った台風16号が中国地方を襲いました。大雨と暴風に加え、玉島地区は大潮期間の満潮と重なり、広い範囲にわたって高潮による浸水被害が発生しました。当時、海のすぐ近くにあった玉島協同病院も、あっという間に浸水しました。

住まいが海岸沿いという組合員の青木みち子さんは「玉島地区は、浸水した家が多く、病院の機器類も水に浸かって大変でした」と、当時を振り返ります。青木さんは、その後、倉敷市の防災学習会に参加して、防災の出前講座を聞くうちに「自主防災組織をつくりたい」という思いが強くなったそうです。岡田きぬ子さんは「この地域は、温暖な気候で地震も少ないし、防災への意識が弱い気がします。浸水したら2階に上がって、ダメならあきらめるという人は多いです。このままではいけない、何とかしたいという気持ちがあります」といいます。

いざというときに何が必要か話し合う青木みち子さん(左から2人目)や岡田きぬ子さん(左端)など玉島西中学校区の防災を考える会の参加者

いざというときに何が必要か話し合う青木みち子さん(左から2人目)や岡田きぬ子さん(左端)など玉島西中学校区の防災を考える会の参加者

病院が高台へ移転

海岸沿いにあった病院は2014年12月に高台に移転することになりました。病院開設のころからかかわる大本芳子さんは、「台風16号では、自宅にいた高齢者が亡くなりました。高潮の危険があるこの地域に住む者として、二度とそういうことが起きないようにしたい」と語ります。移転を決めたときは、「病院は自分たちを見捨てるんか」という声もあったと大本さん。「何かあったら、とりあえず高台に逃げてほしい。新しい病院には防災の拠点としての強い期待を感じました」。

大本さん、倉敷市社会福祉協議会の小野さん、勇崎・自主防災組織会長の西山さん

病院の移転前の10月、「玉島西中学校区の防災を考える会」が始まりました。その後も継続して5月までに6回開催し、地域の様々な団体に参加を呼びかけました。参加者は、町内会、老人会、倉敷市保健所、社会福祉協議会、玉島中部高齢者支援センター(地域包括支援センター)、玉島西中学校、近隣の介護事業所など。活動が広がりをみせる中、社会福祉協議会から「地区社協の災害ボランティアや自主防災組織に呼びかけて、さらに参加を広げてはどうか」と意見が出され、自主防災組織会長が参加するようになりました。2015年9月には、地域の避難所の一つ玉島南小学校体育館で「防災講演会」を開催しました。岡山理科大学から西村敬一教授を招き、最新の知見に基づく巨大地震と津波の怖さを学びました。講演会には、家族連れなど約100人が参加。関心の高さがうかがえました。

家族連れなど約100人が参加した「防災講演会」

家族連れなど約100人が参加した「防災講演会」

みんなで防災つながりマップづくり

倉敷医療生協版「つながりマップ」をどうつくるかを話します

参加者から活発な意見が飛び交います

「災害が起きたら、地中の高圧ガス管は危険。どこにあるか知っていたほうがいい」「断水になったら井戸が大事」。玉島協同病院を会場に開催された「第5回玉島西中学校区防災を考える会」に集った参加者から熱心な意見が出されました。

防災の課題整理のために4月の第5回会議では、倉敷医療生協版「防災つながりマップ」づくりが提案されました。マップづくりは、まず(1)作成範囲 (2)活用方法 (3)何を書き込むかを決めていきます。マップの作成範囲は小学校区単位で、A3サイズでつくること。活用方法や何を書き込むかは、いろいろな意見がたくさん出ました。熊本で大きな地震が起きた直後ということもあり、津波や高潮、地震で家屋が倒壊したらどうするかなど、グループに分かれて真剣な話し合いがすすみました。

5月の第6回会議では、たくさん出た意見をもとに、実際にマップを作ってみました。

5月の第6回会議の様子

5月の第6回会議の様子

日ごろからの連携はとても大切

倉敷市玉島中部高齢者支援センター(地域包括支援センター)の大山陽三さんは「災害が起きたら、高齢者は自力避難が困難になる場合もあるので、日ごろからの連携はとても大切だと思います」といいます。

高齢者支援センターから参加した大山さん、倉敷市保健所の河本さん

倉敷市保健所の主幹保健師の河本伊津子さんは「地元の人しか知り得ない情報がたくさんあります。市のハザードマップは範囲も広く、内容もおおまかなので、地域の細かな内容が盛り込まれたマップはいいですね」とマップづくりに期待をこめます。

第6回会議で実際に作ったマップ

第6回会議で実際に作ったマップ

「防災を考える会」をきっかけに、普段接点のない人たちのつながりが生まれてきました。倉敷医療生協の地域防災のとりくみは始まったばかりです。

(編集部)
写真:大村洋介

<倉敷医療生協>

玉島協同病院

玉島協同病院

●設立年月日  1955年2月28日
●組合員数   6万5,365人
●出資金    16億9,000万円
●支部・班数  45支部 745班
●事業所数   病院3 助産所1 医科診療所4 歯科診療所7 介護関連12

※2016年3月31日現在