つながりマップで地域を見直す 鹿児島医療生協:comcom4月号

桜ヶ丘支部のつながりマップづくりの様子

鹿児島医療生協は、鹿児島市南部にある鹿児島生協病院、県中央部の霧島市にある国分生協病院、薩摩半島南部の南九州市にある川辺生協病院の3病院を中心に、クリニックや介護事業所を運営しています。2015年度、同生協では県内全39支部の組合員と3病院の職員が、「つながりマップ」づくりにとりくみました。

つながりマップで“地域が見える”

支部が作成したつながりマップ

つながりマップとは、地域の現状を地図上に可視化することで、くらしの課題を見つけ、自分たちでできること、地域の人たちと連携してとりくめることを明らかにし、具体的な行動につなげていくためのツールです。2015年5月、医療福祉生協連は「つながりマップサポーター養成講座」を東西2会場で開催。合計61生協212人が、つながりマップの目的や作り方、活用方法などを学びました。

理事の田中かすみさん

理事の田中かすみさん

この講座に参加した鹿児島医療生協理事の田中かすみさんは、同年8月から生協内で開催する学習会で講師を務めました。「いざ自分の言葉で話そうとすると、分からないことがたくさん出てきました。“自分たちのマップ”を作るといっても、具体的にどうつくればいいのかは手探り。模造紙に手描きしたり、市販の地図を拡大コピーするなど、集まって、考えて、わいわいと語り合いながら、それぞれの支部が工夫を凝らして動き始めました」

実際に作成してみると、「何をどこまで作ればゴールなのか分からない」「終わりが見えない」といった声が出てきました。支部の範囲が広すぎて描ききれない地域もありました。作りながら知恵を絞り、健康チェックの場所を拠点にしたり、小中学校単位に細分化するなど、支部にあった方法で作成しました。

「日ごろの活動ではあまり意識していませんでしたが、地図に描き込むことで“つながりが希薄”な地域が見えてきました」と田中さん。さらには、スーパーマーケットが少なくなっていること、歩いて行ける範囲に居場所が少ないこと、新しい支部がつくれそうな地域を見つけるなど、初めて気がついたことがたくさんあったといいます。

思いから行動へ

谷山東支部がコープかごしまの店舗で「WaiWaiカフェ」を開催

谷山東支部がコープかごしまの店舗で「WaiWaiカフェ」を開催

鹿児島市の谷山東支部では、つながりマップを作成した後の運営委員会で、「地域の人が気軽に集まって、お茶を飲んだり話ができる場がほしいね」と盛り上がり、早速、居場所づくりの準備にとりかかりました。翌月、コープかごしまの店舗2階スペースを借りて、「WaiWaiカフェ」と名付けた場所を開きました。

カフェらしい雰囲気を出すために、運営委員が協力してテーブルクロスや花でカフェの飾り付けをおこない、コーヒーやお菓子を準備。支部ニュースを見て来たという、小さいお子さんを連れた若いお母さんなどを含め、8人が訪れました。同支部では、今後も継続してやっていこうと話しています。こうした活動のほかにも、地域公民館や組合員宅の軒先をお借りしたたまり場や地域の老人会とのつながりができたり、休眠班が再開するなど、つながりマップを作成したことで各支部に様々な変化がありました。

職員が作るつながりマップ

川辺生協病院の「マップづくり委員会」が、つながりマップを作成

川辺生協病院の「マップづくり委員会」が、つながりマップを作成

川辺生協病院事務主任の西雅子さん

川辺生協病院事務主任の西雅子さん

つながりマップづくりは、組合員だけでなく職員もとりくんでいます。「川辺生協病院では、8月に開かれた南薩ブロックまちづくり委員会主催の学習会に参加し、組合員さんといっしょにマップづくりを学ぶことから始めました」と思い起こす、事務主任の西雅子さん。同病院は9月から、多職種で構成する「マップづくり委員会」を月に1回開いています。マップをつくりながら、「認知症にやさしいまちづくり」をどう具体化するかについて話し合ってきました。

12月初旬、作成したマップを「生協強化月間まとめの集会」で紹介したところ、「家族や自分が認知症になったとき、相談に乗ってもらえる場所や長寿長屋のような住まいがあったらいいね」といった要望が組合員から上がりました。マップづくり委員会では、こうした組合員の声を反映しながら、地域に役立つ医療福祉生協になるためのとりくみを模索しています。

マップから地域の団体との協同へ

鹿児島生協病院事務課長の宇都和夫さん

鹿児島生協病院事務課長の宇都和夫さん

鹿児島生協病院では、訪問看護ステーションの職員やケアマネジャーなども参加し、職員48人が病院周辺の5つの中学校区単位で、つながりマップを作成しました。これを発表する機会として、社会福祉協議会、鹿児島市長寿あんしん相談センター(地域包括支援センター)本部、コープかごしまに参加を呼びかけ、11月に「地域包括ケア(つながりマップ)学習会」を開催。つながりマップのとりくみを知らせるだけにとどまらず、各団体がそれぞれの活動を紹介し合う時間を設けました。

交流の機会を持ったことで、「患者さんの退院後は、どこに行くといいかを考えることができた」「医療福祉生協以外のとりくみを知るきっかけになった」などの声が出たと、鹿児島生協病院事務課長の宇都和夫さんはふりかえります。この学習会では、ほかにも多くの収穫がありました。

生活協同組合コープかごしま組織運営本部 機関運営組合員活動チームの下津曲幸子さん

コープかごしまの下津曲幸子さんは、「コープかごしまの助け合い活動などを紹介できてよかったです。くらしの視点を大切にして、医療福祉生協といっしょに住みやすいまちづくりを手がけていきたいです」と展望を語ります。

コープかごしまの専務スタッフ平田優さんは、鹿児島医療生協の組合員・職員とともに「つながりマップサポーター養成講座」に参加しました。「地域の中で医療福祉生協と購買生協が線を引いて活動していては、できることが限られてしまいます。『何かいっしょにできることがあるのでは』と検討が始まっているところなので、講座に参加しました。地域で不足する社会資源を専門家の視点で把握していくために、事業所の職員がマップづくりにとりくむのは大きな意味があります」と職員がかかわる意義を指摘します。同時に、「マップづくりは1つのきっかけです。マップをスタートに購買生協だけでなくほかの団体と協同することで、よりよい結果が生まれると思います」と、医療福祉生協と地域の団体との連携に期待を込めます。

生活協同組合コープかごしま専務スタッフの平田優さん

生活協同組合コープかごしま専務スタッフの平田優さん

「地域包括ケア(つながりマップ)学習会」の様子

「地域包括ケア(つながりマップ)学習会」の様子

作る過程が大事

鹿児島市長寿あんしん相談センター本部 業務課長の堀之内克行さん

鹿児島市長寿あんしん相談センター本部 業務課長の堀之内克行さん

鹿児島市内には17か所の地域包括支援センターがあります。「長寿あんしん相談センター」という愛称で呼ばれるセンターの本部の堀之内克行業務課長も、学習会に参加。「高齢になっても自分の存在価値を感じられるためには、元気なうちから地域とかかわることが大切」など、長寿あんしん相談センターの方針を紹介しました。つながりマップの発表を受けて、「作る過程がとても大事だと思いました。マップを作ることが目的ではなく、作る過程の中で地域を見る目が変わり、意識改革につながっていくのだと感じました」といいます。

鹿児島生協病院に続いて、国分生協病院や川辺生協病院でもこの3月、社会福祉協議会、地域包括支援センター、コープかごしまなどに参加を呼びかけて「地域包括ケア(つながりマップ)学習会」をおこないます。また、支部運営委員が一堂に会する組合員活動交流集会でも、つながりマップについての紹介や交流がおこなわれます。

組合員・職員が各地域にあったつながりマップを作成し、内外と共有することで、活動の幅を広げている鹿児島医療生協。お互いのマップを重ね合わせながら“つながりづくり”は大きくステップアップしていくことでしょう。

(編集部)
写真:大村洋介

<鹿児島医療生協>

鹿児島生協病院

●設立年月日  1974年2月1日
●組合員数   13万2,856人
●出資金    19億5,515万円
●支部・班数  39支部 2,476班
●事業所数   病院3 医科診療所7(歯科併設1) 歯科診療所1 介護関連29 保育園1
※2016年1月31日現在