組合員が地域包括支援センターを訪問 富山医療生協:comcom3月号

~支え合いの地域づくり~

富山協立病院の敷地内にある「豊田地域包括支援センター」

富山県の中央部に位置する県庁所在地の富山市は、総面積が県の約3割を占めています。ホタルイカをはじめとした豊富な魚介類の宝庫である水深1000メートルの富山湾から3000メートル級の山々が連なる立山連峰まで、豊かな自然も有しています。約42万人の総人口は2010年をピークに減少に転じて、高齢化率は全国平均より高い28.0%(2015年12月末現在)、要介護認定者も増え続けています。

地域包括支援センターを訪問

富山医療生協は2013年に、地域の将来を見据え、各支部が地域包括ケアの推進で大きな役割を担う地域包括支援センターを訪問し、懇談することを呼びかけました。それまでも一部の支部で日常的なつながりはありましたが、全ての支部でとりくもうという試みでした。

「富山市には、地域包括支援センターが32か所あります。地域包括支援センターは生活圏域ごとの拠点となり、各地域の中で多様な団体をつなぐ役割を担おうとしています」と話す、豊田地域包括支援センター(※1)の管理者・岡本茜さん。医療福祉生協の活動を知らないところが多いため、「つながりの少ない高齢者が増えてきている状況を考慮すると、医療福祉生協の存在を知り、いっしょに地域活動をすることはとても重要です」と期待を込めます。

(※1)富山医療生協が富山市から委託を受けて運営している地域包括支援センター。

副理事長でまちづくり委員長の湯島修さん

副理事長でまちづくり委員長の湯島修さん

方針は出されたものの、「訪問の意義がよくわからない」という組合員の声が多く、「最初は、地域包括ケアそのものや、地域包括支援センターの役割や業務を学ぶことから始めました」と、副理事長でまちづくり委員長の湯島修さんは当時を振り返ります。「支部運営委員会などで、理事や支部長が訪問の意義を繰り返し説明しました。実は、医療福祉生協と地域包括支援センターは競合やライバル関係ではという誤解も一部にあったのですが、いざ訪問してみると、地域で抱える課題は同じで、共感することがたくさんありました」

訪問の目的は、医療福祉生協の支部と地域包括支援センターが協力・協同関係をつくること。「地域住民、医療福祉生協の支部として、地域包括支援センターと連携し地域の健康づくりや助け合いの活動を広げていく」「富山医療生協の『たすけっとクラブ』を紹介する」「認知症サポーター養成講座の計画について相談する」の3つが具体的に掲げられました。

たすけっとクラブの仕組み

組合員の助け合い「たすけっとクラブ」

常務理事の稲垣由佳子さん

常務理事の稲垣由佳子さん

富山医療生協の「たすけっとクラブ」は、くらしの中で手助けが必要な組合員とお手伝いできる組合員が助け合う有償ボランティアの会です。創設時からかかわっている常務理事の稲垣由佳子さんは、「2008年の冬、雪かきを手伝う少人数のとりくみから始まったんです」ときっかけを語ります。地域に夫婦2人暮らしや独居の高齢者が増えるとともに、雪かきやごみ出し、電球の取り替え、家の片付けなど、ちょっとしたことに困る人も増えていました。特に、雪が多い富山では、積雪は大きな問題。頼みづらかった雪かきも、「有償の助け合いにしたことで、気兼ねなくできるようになった」といいます。

「たすけっとクラブ」は、理事や支部長などが担う「地域コーディネーター」が、「てつだってさん」(依頼する利用者)と「たすけっとさん」(支援する協力者)をつなぎます。依頼内容は、力仕事や話し相手など、多種多様。39人のコーディネーターが支部に密着しているので、依頼によって最適な人選が可能で、ときには新しい協力者を見つけることもあるそうです。現在、約300人が依頼を受ける「たすけっとさん」に登録する、大きな活動に発展しました。驚くことに、そのうちの半数は男性が占めています。

庭木の片づけや障子はり

庭木の片づけや障子はり、窓ふき、廃材・衣類整理など、介護保険では対応できないちょっとした困り事を、組合員同士が助け合って解決します。

「いつでも相談できると思うと安心」「依頼したことだけでなく、お茶を飲みながら話をするのが本当に楽しい」など、てつだってさんから喜びの感想が多く聞かれます。たすけっとさんからは、「ささやかなお手伝いを感謝してもらってうれしい。役に立っている実感がわく」といった声や「自分で家事をできるようにしておかないと大変だと、勉強になった」と、自分を見つめ直す男性もいました。

2013年、「たすけっとクラブ」の活動から、介護タクシー「とまと(※2)」の事業が誕生しました。富山市は全国の中核都市圏の中でも自動車交通への依存度が高い地域です。その一方で公共交通機関が乏しいため、送迎や付き添いが必要な高齢者を支援する「とまと」は、地域の人たちに重宝されています。送迎は「とまと」、付き添いは「たすけっとクラブ」と、それぞれが役割分担して活動しています。

(※2)運輸局より認可を受けた福祉車両に限定した一般乗用旅客自動車運送事業。介護保険や自由料金で利用できる。

介護タクシー「とまと」

介護タクシー「とまと」は、介護資格を持ったドライバーが対応。送迎は「とまと」、付き添いは「たすけっとクラブ」と、役割分担しています

訪問を続けることで

活動方針を出した年に訪問したのは4支部だけでしたが、今では38支部のうち29支部がとりくみ、訪問した地域包括支援センターは24か所になりました。「たすけっとクラブに墓掃除はお願いできますか?」といった具体的な相談や、地域のボランティア情報誌で「たすけっとクラブ」を紹介したいとの要望もありました。また、認知症予防の「脳いきいき班会」や「無料・低額診療事業(※3)」といった医療福祉生協のとりくみに共感を持たれ、認知症サポーター養成講座を合同開催したり、支部の新春の集いに講師として参加してもらうなど、日常的に連絡を取り合う支部も生まれています。

(※3)経済的な理由で医療費の支払いが困難な人が病院や診療所を利用した場合に、自己負担を減額・免除する社会福祉法が定める第二種社会福祉事業。生活改善するまでの一時的な措置で、公的な制度活用を含めて問題解決に向けた支援をおこなう。

喫茶ルームで談笑

2015年11月、三郷支部の3人と上条支部の2人が水橋南地域包括支援センターを訪問。終了後、喫茶ルームで和やかに談笑しました

訪問した組合員から、「高いと思っていた垣根が低くなったように感じる」「いっしょに地域づくりができるんだと実感した」という声がありました。“地域まるごと”の活動づくりのために、地域(町内会や長寿会など)や自治体など、様々な人たちとつながろうとするとりくみが始まっている支部もあります。

「高齢者や困っている人を地域で支え合う仕組みや制度を充実させるという視点を持ちながら、訪問活動することが大切だと思っています。学び続けることが大切ですね」と湯島さん。

時間をかけて続けてきた訪問活動が少しずつ実を結び、地域の中での連携が広がっています。

地域包括支援センターでは、高齢者やその家族、近隣にくらす人たちの生活における心配事の相談に応じています

地域包括支援センターでは、高齢者やその家族、近隣にくらす人たちの生活における心配事の相談に応じています

(編集部)
写真:大村洋介

<富山医療生協>

富山医療生協

●設立年月日  1962年9月30日
●組合員数   2万6,795人
●出資金    9億6,339万円
●支部・班数  38支部 229班
●事業所数   病院1 医科診療所2 介護関連4
※2016年1月現在