協同でくらしを支える 松江保健生協:comcom2月号

~地域つながりセンターで広げるまちづくり~

地域つながりセンター
地域の諸団体が話し合う場を提供する拠点、「地域つながりセンター」

島根県の県庁所在地、松江市。人口約20万人を有する地方都市ですが、2015年3月時点で平均高齢化率は27.35%と、全国平均の26.0%より高く、高齢化とともに人口減少も年々すすんでいます。

「くらしを支える」をビジョンに

せいきょうサポートセンター
松江保健生協の「せいきょうサポートセンター」は多様な相談に対応しています

せいきょうサポートセンターでは、様々な相談に答えられるように、多様な職種が集まっています

松江保健生協は、2013年の臨時総会と翌年の総代会の2回の総代会で論議を重ね、「あったかまちづくりビジョン」を確定しました。2020年をめどに実現していくことをめざす「元気・安心の地域・くらしを支える生協版地域包括ネットワーク」の姿を描いたもの。生協の強みをいかした協同の力で、「くらし」と「その人らしく生きる」を支えることがビジョンの柱です。

ビジョンの具体化として、長期の介護療養をサポートできるように、2つあった病院のうち松江生協リハビリテーション病院を介護老人保健施設と高齢者住宅に転換し、総合的介護センターとして再スタート。また、松江生協病院に40床の医療療養病棟を増設し、「せいきょうサポートセンター」を開設しました。

せいきょうサポートセンターは、退院する患者さんの相談、介護保険の申請、経済的に困難な人への支援や法人内・地域の事業所との連携を推進する役割を担っています。それまでバラバラに点在していた医療福祉相談室、地域連携室、居宅支援室(ケアマネジャー)など18人の職員が同じ空間に集まったことで、情報を同時に共有できるようになり、相談窓口の一本化で地域の事業所や法人内の連携もスムーズになりました。

医療福祉生協だけでは解決できない

地域ケア連携推進フォーラム
様々な団体が協力して、毎年、「地域ケア連携推進フォーラム」を開いています

あったかまちづくりビジョンの基礎になったのは、2008年に松江保健生協と生協しまねがいっしょに始めた「地域づくり研究会」でした。同研究会は、まず、医療福祉生協と購買生協のお互いの組合員に「医療・介護・生活支援ニーズ1000人アンケート調査」をおこないました。アンケートから見えてきたことは、孤独や買い物困難など切実な実態。これらは松江保健生協だけでは解決できない課題でした。

そこで、「地域全体で地域の課題を考えましょう」とフォーラムを開催することに。2011年、JA島根中央会、JAくにびき、松江市社会福祉協議会、松江市地区社会福祉協議会会長会、生協しまね、松江保健生協の6団体が共催して「第1回 地域ケア連携推進フォーラム」を開催。実行委員会に松江市社会福祉協議会が事務局として協力し、以後、毎年実施する大きな力になりました。

生協を地域の共有財産に


(左から)地域つながりセンター常任幹事で、せいきょうサポートセンター長の門脇章子さん、地域つながりセンター 代表の高橋玲子さん、地域つながりセンター 事務局長の野津久美子さん

フォーラムをきっかけに、お互いの関係を大切にしようと14年7月、6団体が中心になって「地域つながりセンター」を設立しました。地域つながりセンターは、地域の諸団体が話し合う場を提供する拠点であり、有償ボランティア活動「おたがいさま」を広げることを目的にしています。「おたがいさま」は、もともとは生協しまねの組合員有志が出雲市で2002年に始めたもの。困り事を抱える人と、誰かの役に立ちたい人をつなぐ、有償の助け合い活動です。特筆すべきは、困り事は相手(依頼者)が決める、どんな内容の依頼も応援できる人を探すことに徹していること。地域つながりセンターは、「おたがいさま」を生協内の宝としてだけではなく、地域の共有財産として応援しようと考えました。

地域つながりセンターができたことで、くらしの困りごとは「おたがいさま」、医療や介護の課題は松江保健生協で対応するといったように、一つの団体だけでは解決できない課題をお互いに持ち寄って連携することができるようになりました。また、市社会福祉協議会や市公民館会長会など地域の諸団体とも課題を共有しやすくなりました。

せいきょうサポートセンター
地域つながりセンターの事務所は、JAしまね津田支店の中にあります

地域つながりセンター
2015年から、ひかわ医療生協と出雲医療生協も参加しています

「フォーラムの1回目は初顔合わせだったので、お互いが何をしているのかを話し、まるでお見合いみたいでした」と、地域つながりセンター事務局長の野津久美子さんは当時を思い出して、笑みを浮かべます。

地域つながりセンターの常任幹事を務める門脇章子さんは、看護師であり、松江保健生協のせいきょうサポートセンター長です。「せいきょうサポートセンターに『孤独だ、寂しい』という相談がありました。医療や介護で『寂しい』という問題を解決するのは難しいんです。いざというときの不安にこたえられる、『おたがいさま』の活動を紹介しました」と語る門脇さん。

地域つながりセンター代表の高橋玲子さんは、「ここが拠点になって、それぞれの団体の活動がつながること、住民が元気になって、もともと地域にあった近所の助け合いが見直されるきっかけになればいい」と思いを話します。2015年からは、ひかわ医療生協、出雲医療生協も参加し、島根県全体の活動に広がりました。

おたがいさま

島根県内全域にひろがる「おたがいさま」

【おたがいさま】
現在、おたがいさまは、生協しまねから独立した自立運営の団体として県内6か所(出雲市、松江市、雲南市、大田市、浜田市、益田市)に広がっています。

設立応援会

いっしょにやるからこそまちづくり

理事の富田恵子さん

理事の富田恵子さん

松江保健生協理事の富田恵子さんは、公民館・地区社協・自治体の協力を得て、地域の居場所「一の谷つくしの会」を立ち上げました。「理事になって、高齢者の独居や老々世帯の増加など、地域にたくさんの課題があることが見えてきました」と、富田さん。

「以前、大きな出来事がありました。一人暮らしをしていた高齢の男性が、認知症のせいか『火をつける』と騒ぐようになって、近隣住民が困っていたのです。近所の方と何度かお宅を訪問するうちに、落ち着きを取り戻してくれました。しかし、地域全体の課題を医療福祉生協の活動だけで解決するのは限界があるとも感じていました」

せいきょうサポートセンター長の門脇さんは、「私たちはこれまで、地域包括ケアを医療の目線で見てきました。ですが、公民館の館長をはじめとした地域の方々は、高齢者や子ども、障がい者だけでなく、健康な人も含めた、すべての住民目線でくらしやすさを考えていたんです。医療や介護は地域住民が抱える困り事の一部でしかありません。住民一人ひとりのくらしの視点で考えるのが重要だということ、『住民発信版地域包括ケア』を考えていかなければと思うようになりました」と語ります。

松江保健生協「まちづくり事業推進室」事務局長の須田敬一さん

松江保健生協「まちづくり事業推進室」事務局長の須田敬一さん

松江保健生協「まちづくり事業推進室」の須田敬一事務局長(地域つながりセンター副代表)は、「どこかの行政や事業者にお任せではなく、自分たちの課題としてとらえる。自分たちが考えて、自分たちでとりくむ。生協には、そういう考え方がもともとあるんです」といいます。

くらしを支えるのは医療福祉生協だけではできない。地域の中で多様な団体とのネットワークを広げながら、松江保健生協の「協同」ですすめるまちづくりが始まっています。

 

【一の谷つくしの会】
地域の居場所「一の谷(いちのたに)つくしの会」は、松江市で2000年度からおこなわれている孤立・閉じこもり防止などを目的にした事業「なごやか寄り合い事業」の助成を受け、活動しています。

一の谷つくしの会
「一の谷つくしの会」での折り鶴(連鶴)作りの様子

(編集部)
写真:大村洋介

<松江保健生協>

松江保健生協

●設立年月日  1952年8月4日
●組合員数   3万6,727人
●出資金    14億2,252万500円
●支部・班数  44支部 514班
●事業所数   病院1 医科診療所2 歯科診療所1 介護関連19 助産院1
※2015年11月30現在