「いのち見守りたい」お変わりなくお過ごしでしょうか? 大分県医療生協 竹田支部:comcom8月号

森さん

 1/90歳の森シゲ子さん。近所の人に手伝ってもらいながら、お米を作っています

「こんにちは、お変わりないですか?」と声をかけるのは、大分県医療生協竹田支部「いのち見守りたい」で訪問する、佐藤忠士支部長と浅川里美看護課長です。「見守りカードは見えるところにありますか?」と尋ねると、「あります、あります。電話のそばに」と、田部三恵子さんは笑顔で答えます。

大分県南西部に位置する竹田市は人口約2万5千人。くじゅう連山、阿蘇山、祖母山(そぼさん)に囲まれた地にあり、大野川の源流からは一日に数万トンもの湧出量があるといわれる、水と緑があふれるまちです。しかし、市の総人口は毎年減少、2015年には高齢化率43%と、高齢者が占める割合は増加し続けています。

組合員の不安の声にこたえて

竹田診療所は1992年、この地に開設しました。人口減少や組合員の高齢化、医師の体制上の問題など診療所をとりまく状況は年々厳しくなっています。

「いのち見守りたい」は、竹田支部と診療所職員が2011年11月1日から始めた活動です。竹田診療所の利用者で、75歳以上の独居または高齢世帯の組合員なら無料で登録できます。登録すると、2か月に1回の自宅への訪問と、診療時間外でも医療スタッフに24時間つながる電話連絡が利用できるようになります。15年6月現在の登録人数は58人。そのうち独居世帯が38人、夫婦世帯が10世帯20人です。

この活動のきっかけは、組合員の「一人暮らしで何かあったときに心配」との声でした。高齢化がすすむ地域で、「病院がほしい」という願いにはこたえられませんが、不安を和らげるために何かできないか? と考え出されたのが「いのち見守りたい」でした。活動が始まると、「医療福祉生協に入っていて良かった」「電話したらすぐに対応してもらって、とても心強かった」など、多くの喜びの声が寄せられています。

見守りカードは電話の近くに常備しています

 2/竹田診療所事務長の高山弘さんが出発前に訪問コースを確認
 3/田部三恵子さん。見守りカードは電話の近くに常備しています

 組合員と職員がペアで訪問活動

田代さん

隔月の訪問活動は、竹田診療所事務長の高山弘さんの説明で始まります。「今日は5コースに分かれます。訪問したら『見守りカード』があるか確認してください。食事は取れているか、日常生活で困ったことはないかなどを聞いてください」。今回初めて訪問活動に参加する人もいるので、訪問のポイントについて丁寧な説明がされました。

「いのち見守りたい」のみなさん

説明が終わると、各コースに分かれて車で出発。今回同行させていただいた支部長の佐藤さんは、定年退職後、医療福祉生協の活動にかかわるようになりました。地域のことはよく分かっていて、竹田診療所も開設のころから知っているそうです。佐藤さんとペアを組んで訪問するのは、看護課長の浅川さん。「組合員の高齢化で、活動がなかなか思うようにいきません。昔は、班会も活発で、診療所でも保健大学をやっていましたが、今は集まるのが難しくなりました」と、悩みを口にします。地域の活動の中心になっていた方が高齢になり、その方を訪問しているのが現状です。

高齢者の一人暮らしは、災害への備えも手薄になります。84歳の田代チカヲさんは、ご主人を亡くしてから32年間一人で暮らしています。訪問したときは、川のほとりで作業しているところでした。「変わったことはないですか?」と佐藤さんが尋ねると、田代さんは「2人の娘が隔週で来てくれて、買い物したものを持ってきたり、美容院に連れて行ってくれるので、生活で特に困ったことはない」といいます。

しかしながら不安を抱えるのは、護岸工事が終わったばかりの自宅近くの川。普段は穏やかで作物に恵みの水ですが、大雨が降ると、家が流されるほどの水害をもたらす危険な川に変わるそうです。「雨が降ると恐ろしい。ワイヤーで張ってあるけど、家の裏の岩も崩れてきたら恐ろしいんよ」と表情を曇らせます。佐藤さんは、「100年に1回しか来ないといわれる洪水が、20年に1回あるんですよ」と教えてくれました。

 4/一人暮らしの田代チカヲさん。自宅近くの川や、家の裏の岩などで起きる災害に不安を感じています
 5/ご自宅を訪問し、「お変わりないですか?」と竹田支部支部長の佐藤忠士さん(左)。一人ひとり様子を尋ねます
 6/「いのち見守りたい」のみなさん

情報を共有し 専門的な支援へ

訪問終了後は、各コースの情報を共有

滝澤さん、永田さん

訪問終了後は、診療所に戻って報告会をおこないます。理事の滝澤喜明さんと永田康子さんからは、どの方も比較的元気そうな様子が報告されました。玉ねぎのお土産があったコースもありました。また、初めて訪問活動に参加した方から「足が不自由なのに、トラクターを自分で運転して田んぼを耕しているというんです。私よりもはるかに年上の彼女に、私の方が元気をもらったような気がします」という報告も。ほかにも、「診療所の送迎が重要だと思いました」「2、3日前に、いい薬があるよという怪しい電話があったそうです」など、この日のすべてのコースから感想や情報を共有した後、「24軒の訪問予定で、18軒で会えました」と全体の振り返りをして終了しました。

ヘルパーなど専門職が訪問活動に参加することで、診療や普段の生活では見えない日常的な支援の必要性が明らかになり、地域包括支援センターなどにつなげることもあるといいます。「いのち見守りたい」は、地域になくてはならない活動として、これからもその重要性を高めていきます。

 7/訪問終了後は、各コースの情報を共有し、振り返りをおこないます
 8/訪問の様子を報告する、理事の滝澤喜明さん
 9/永田康子さん

(編集部)
写真:杉山 隆

 

通所リハビリテーションの建物<大分県医療生協>
●設立年月日 1981年8月23日
●組合員数  2万6,358人
●出資金   9億5,881万2,987円
●支部・班数 17支部 315班
●事業所数  病院1 医科診療所3 介護関連16
※2015年3月31日現在

<竹田支部>
●設立年月日 1983年8月
●組合員数  2,982人
●班数     15班
●支部運営委員 21人

※2015年3月31日現在