「いっしょに食べる」で広がるつながり 愛媛医療生協:comcom3月号

コミュニティカフェ『ら・ぽーる』

1/笑顔で「いただきます」

アツアツの湯気とそばつゆの香りが漂う店内。テーブルを囲んでおしゃべりに花を咲かせる組合員さんたちに笑顔があふれます。

ここは、愛媛医療生協がワーカーズコープ(※)と協同して運営する「コミュニティカフェ『ら・ぽーる』」。公募で決まったカフェの名前は、フランス語で「架け橋」を意味します。新病棟建設に伴い、愛媛生協病院の既存棟の「待合室」が2013年秋にカフェとして生まれ変わりました。

「ほとんど毎日来てるんじゃないかな。最初は、週に一回くらいだったんだけどね」。定年退職後、東京から故郷の松山に戻り、市の観光ボランティアとしても活躍する愛媛医療生協理事の石川志朗さんはいいます。組合員の廉谷咲子さん、青木一子さん、小島優子さんは、「ちょっとした空き時間に食事やおしゃべりができるからとても便利。持ち込みもできるしね」「職員さんもここでお昼が食べられるようになったからいいですよね」「病院に来た人や隣にあるフィットネスの利用者も使っていますよ」と、口々にカフェの特長を話してくれました。

ワーカーズコープ:働く人々・市民が、みんなで出資し、民主的に経営し、責任を分かち合って人と地域に役立つ仕事をおこす、協同労働の協同組合。中小企業等協同組合法で規定されている「企業組合」の法人格を活用し、1973年から「企業組合労協センター事業団」として事業をおこなっています。2001年9月、同事業団が母体となって新設した「特定非営利活動法人ワーカーズコープ」は、高齢者・こども・まちづくりにかかわる様々な地域密着事業に挑戦しています。

愛媛生協病院で

2・5/初めて病院を訪れた人に「ら・ぽーる」を知ってもらえるよう、看板で案内
3/「ら・ぽーる」の隣にある、「メディカルフィットネスCo-core」。病院と連携し、生活習慣病や足腰が弱い方のためのプログラムなどを用意して、健康づくりのスペシャリストが指導します
4/愛媛生協病院
6/新しいお付き合いも生まれます

コミュニティカフェをやろう

新病院棟の建設と旧病院のリニューアルに合わせて、「地域の協同を育む」病院として、地域の人たちが交流できる場を提供できないかと考えていた愛媛生協病院。「病院を利用する人も、介護の相談に来た人も、ボランティアとして訪れる人も、元気な地域の人も、どこかで顔を合わせる場所がほしい。そこでお茶を飲んだり食事ができるといいね」というみなさんの思いに応えて、従来の喫茶店や食堂とは違う「コミュニティカフェ」をつくることに決まりました。コミュニティカフェとは、いつでも利用でき、おいしい食事があり、おしゃべりしたり、持参したものを飲食してもいい、誰もが気軽に集まれる場所です。

そんな夢のあるスペースを実現させるため、12年に「コミュニティカフェプロジェクト」が立ち上がり、メニューや価格をどうするかといった具体的な検討が始まりました。中でも大きな課題は、誰が食事を作るかでした。「やりたい人を募ってみては?」「支部で運営するのはどうだろう」など、いろいろな意見が出されました。いくつかの可能性を吟味した結果、事業として継続させるためには専門家との協同が必要だという方向でまとまりました。複数の候補の中から、描くイメージとコンセプトが一致した「ワーカーズコープ」が選ばれました。

食器類も自分たちで調達

坂口直江さん

カフェのオープンは決まったものの、課題は山積み。「すごく貧乏所帯でね、資金が限られていたんですよ。お鍋やお皿は安い店へ買いに行き、広く呼びかけて、湯飲みやコーヒーカップ、包丁とかはとにかくみんなで持ち寄りました」と、プロジェクトのメンバーで理事の坂口直江さんは振り返ります。「オープンに向けてワーカーズコープといっしょに試行錯誤しましたね。チラシを作って病院で配ったり、支部ニュースに入れてもらったり。オープンメニューは、地元でとれる赤米ご飯を使ったものを考えました」

いよいよオープン!

13年10月28日のオープン初日は、宣伝効果もあって近所の人がたくさん集まり大盛況。ところが、通常営業が始まり、日替わりランチを500円で提供するようになると、途端に客足が伸び悩みました。

毎月1回開催するコミュニティカフェ会議で、お客さんが来ない原因を話し合いました。職員にすら存在があまり知られていなかった状況を踏まえて、外来受付に看板ボードを置いたり、チラシを配り、「ら・ぽーる」を広める工夫にとりかかりました。そのうち、「食事ができるところがあるんですね」「どこにあるんですか?」と聞かれることが増え、今では月間の提供食数はもう少しで計画に届くまでになりました。

ワーカーズコープと協同組合間協同

大森哲也さん、川上健太さん

「厨房の仕事って、普通は職人の世界。一番偉い人がいて、その人の指示を仰ぐトップダウンなんですよ。だから、みんなで考えるワーカーズコープのやり方に、入職当初は戸惑ったんです。それが10年経った今は、楽しみに変わっています」と話すのは、四国エリアマネージャーの川上健太さん。

「医療福祉生協の組合員さんの力も借りて、コミュニティカフェに来られない人への配食サービスや保育などの活動へとつなげていけたらいいですね。医療福祉生協とワーカーズコープがめざすものは、とても近いと感じます。だからこそ、協同することでいろんな可能性があるのではないでしょうか」と思いを語ります。

愛媛生協病院の清掃業務を担う大森哲也さんは、生協内で農園プロジェクトへの参加を呼びかけています。5年前、耕す人がいなくなった近くの畑をワーカーズコープが借り、大森さんがサツマイモやジャガイモなどを育て始めました。「『ら・ぽーる』の手作りコロッケは、この畑で採れたジャガイモを使っているんですよ」と教えてくれた大森さんは、それまで畑仕事の経験はありませんでした。「失敗を繰り返しながら続けてきましたが、組合員さんといっしょにやることで、つながりがもっと広がるかもしれない」と期待を込めます。

ワーカーズコープのみなさんが、心を込めて食事を提供

夢は大きく

「ら・ぽーる」は、何をしても、何を持ち込んでもいい自由な場。ですが、「お昼の混雑時間だけは、食事を注文する人を優先するようにお願いしています」と坂口さん。経営を成り立たせる、事業として継続することも大切な視点だからです。「旬の食材がたくさん入った手作りの料理を提供できたらいいなと思うんですよ。健康な生活を送るためには、こういう食事をすればいいんだと気付きがあるような料理。そして、新しいお付き合いが生まれるような医療福祉生協ならではのカフェをめざしたいんです」

ここに来れば誰かがいる―。初めて会った人でも隣り合わせると笑顔になり、会話もできる。一人ひとりがつながっていく、そんなコミュニティカフェのとりくみは、始まったばかりです。

コミュニティカフェ

7・8・12/ワーカーズコープのみなさんが、心を込めて食事を提供
9/ランチメニューを中心に、軽食やドリンクが楽しめます
10/近くの農園で「ら・ぽーる」で使う野菜を育てています
11/昼食時には、病院の利用者やフィットネスの利用者、地域の人、職員たちでにぎわう

(編集部)
写真:中村香代

 

<愛媛医療生協>
●設立年月日 1952年9月15日
●組合員数  4万6,675人
●出資金   10億1,121万円
●支部・班数 57支部 651班
●事業所数  病院2 医科診療所4 介護関連3
※2014年12月31日現在