地域購買生協との協同ですすめる給食・配食事業 株式会社あおもりコープフーズ:comcom9月号

― 医・福・食・住の充実をめざして

株式会社あおもりコープフーズ
(青森保健生活協同組合・生活協同組合コープあおもり)

夕食宅配弁当のお届け

「年とったらご飯つくるのも大変。毎食一人分つくるのは、不経済で手間もかかるしね。お弁当があればいいなと思ってだんだ。共働きのワケエ人にもいーじゃ」

「いいどご? んだな、3つある。一つは夕方にふたを開けだ時の楽しみ、二つ目は経済的なこと。もう一つは私(わ)がコンサートに行くとき、父ちゃんに『ほれこれ食っててけろ』っていえることだな」

こう話すのは、青森市に住む稲田悦実さんと佐藤カヅコさん。お2人の家には夕食宅配弁当が届きます。このお弁当は、青森保健生活協同組合と生活協同組合コープあおもりが共同出資して運営する「株式会社あおもりコープフーズ(以下、コープフーズ)」で調理されたものです。

お互いの強みを活かして新しい価値をつくる

病院や介護事業所への給食提供と見守りを兼ねた地域への弁当配食

コープフーズの事業は大きく2つに分かれます。病院・介護事業所などへの給食提供と、地域住民への配食弁当の提供です(いずれもクックチル方式 ※1)。両方合わせて1日6000食の供給が可能な設備を整えています。

工場長の伊藤正さん

給食は、青森保健生協の2病院と介護事業所15か所、それに八戸医療生協の介護事業所3か所に合計2010食届けられています。配食弁当は、青森・弘前・五所川原方面に1日当たり450食を提供。配達はコープあおもりが担当しています。

2014年6月に3つの医療福祉生協と4つの購買生協が参加して、「高齢者等見守りの取組」推進に関する協定を青森県下24市町村と締結したこともあり、配食は見守りも兼ねています。

病院食・健康食への深い専門性、食品衛生・管理ノウハウの蓄積という青森保健生協の強みと、県内全域を対象とした受注・宅配・集金システムがあるコープあおもりの強み。コープフーズは、お互いの強みを活かした食を通じた事業です。

※1 クックチル方式
加熱調理した料理を、90分以内に中心温度が3℃以下になるまで急速冷却し、0~3℃の状態でチルド保存する調理法。喫食時間に合わせて再加熱し提供します。

雇用にも貢献

質の高い「食」の提供をめざすとともに知的障がい者の雇用にも貢献

「食を通じた社会貢献」へのこだわりは、地産地消など事業の様々な場面で感じることができます。雇用もそのひとつ。コープフーズでは養護学校高等部を卒業した知的障がいのある2人が働いています。事業が始まる1年前から養護学校と相談し、生協さくら病院での実習を経て採用に至りました。

病院では一人がいろいろな業務を担当するスタイルでしたが、ここではチームワークを重視。

工場長の伊藤正さんはいいます。「コープフーズは雇用を拡大し、障がい者を含めた県内の雇用率の向上を図ることを目標のひとつに掲げています。障がいのある方に力を発揮してもらうために、仕事のスタイルを、一人が全ての工程にかかわる形から分担制に変更しました。青森保健生協も含めて、知的障がいを持つ人の雇用は初めての経験でしたが、共に働くことを通じて、自分たちの仕事を見直す機会になりました。稼働1か月後の振り返りで、本人たちから『協力してやることで早く終わらせ、次の作業に移ることができた』『今後はぺティーナイフを使用して、皮むきができるようになりたい』など積極的な声が寄せられています」

「協同組合間協同」を基礎に

コープフーズの事業開始は14年3月。青森保健生協とコープあおもりは「協同組合間協同 ※2」を大切にしながら、7年かけて丁寧に準備してきました。

07年、お互いの活動を知ることから始めようと、組合員活動にかかわる職員が月に1回顔を合わせて、情報交換をすすめました。次に、青森県生協連主催で協同組合講座を開講し、生協の理念・原点を確認。講座や日ごろの交流を通じて、「医療福祉生協も地域購買生協も基本は同じ」と共通の認識が生まれました。さらに、青森保健生協とコープあおもり両理事会の承認を経て、「提携推進委員会」を設置。非常勤理事や職員がメンバーになりました。委員会では、便潜血チェック、認知症サポーター養成講座などにとりくむと同時に、生協としてどのような事業で地域に貢献していくのかについての議論も重ねました。そして、給食・配食事業を検討しようということになり、別の委員会を立ち上げて事業計画を練り、開設に至りました。

コープフーズは、協同組合間協同を基礎にした社会貢献事業なのです。

※2 協同組合間協同
「協同組合のアイデンティティに関するICA声明」(1995年:世界協同組合同盟)に掲げられた原則のひとつ。「協同組合は、ローカル、ナショナル、リージョナル、インターナショナルな組織を通じて協同することにより、組合員に最も効果的にサービスを提供し、協同組合運動を強化する」ことをめざしています。

食を通じてつながるセンターに

地元の生産者や加工業者と連携して地産地消をすすめ、安心と笑顔を届けます

コープフーズには、当面の使命が2つあります。ひとつは「介護事業における食の質を高いレベルで統一する」こと。もうひとつは、「食の提供を通じて在宅生活の継続に貢献する」ことです。

社長の鎌田敦子さん(青森保健生協・専務理事)はそれぞれの使命について、こう語ります。

見た目がキレイでおいしい。塩分やカロリーもコントロールされたお弁当です。

「地域包括ケアという大きな流れの中で、介護事業はさらに広がっていきます。介護事業にとって『食』の満足度は、提供する介護サービス全体の満足度に大きく影響します。青森保健生協では、これまでもそれぞれの事業所で食の質を高める努力をしてきました。それ自体はすばらしいことですが、どうしても事業所ごとにバラツキが出ます。そこを高いレベルで統一することが、コープフーズの使命です。この7月からは八戸医療生協の介護事業所にもお届けしていますし、希望があれば生協以外の介護事業所にもお届けします」

「組合員として、長い間生協活動に参加してきたにもかかわらず、老人ホームに入所したために人生の最期の場面で生協との縁が切れてしまうケースをこれまで何度も見てきました。私たちは在宅医療に積極的にとりくんでいますが、施設の建設は簡単なことではありません。食事を届けることで、自宅で生活する時間が少しでも長くなればと思っています。病院や介護事業所との縁が切れたら終わりではなく、食を通じてつながり続けていく、コープフーズがそういうセンターになっていきたい。連携できる医療機関があって、在宅療養を支える在宅チームがあって、介護事業所があって、食事があって、助け合い活動があって。そこで初めて安心が生まれると思います」

事業への強い想い

コープフーズの給食・配食は株式会社による事業です。株式会社という法人格について最後まで様々な角度から検討しましたが、NPO法人やボランティアという発想は当初からありませんでした。そこには、支える基盤が弱いまま在宅に戻ってくる高齢者を支えるために、事業として実施することが必要だという強い想いがあります。コープフーズは青森保健生協の地域包括ケアへの具体的な一手であり、生協が組合員のくらしを支える重要な一手です。

(編集部)
写真:大村洋介

 

<青森保健生協>
●設立年月 1956年4月15日
●組合員数 4万5,560人
●出資金 15億5,840万円
●支部・班数 37支部 162班
●事業所数 病院2 医科診療所3 介護関連17
※2014年3月31日現在