「新しい地域支援事業」を見すえて -私から始まる助け合い 郡山医療生協(小野支部):comcom7月号

組合員を訪ねる

組合員を一軒ずつ訪ねる

「誰が組合員なのか、よくわがんね」

2006年、支部総会に参加した組合員のひとことから全てが始まりました。

支部運営委員のみなさんは、翌月の支部運営委員会で組合員名簿の整理に着手。組合員の17%にしか機関紙が配付されていないこと、顔を知らない組合員が多いことが分かりました。次に取った行動は組合員訪問。450人を超える組合員を一人ひとり訪問するうちに、その人の生活や地域で果たしている役割が見えてきました。「この人たちの力を借りれば、小野町はもっと住みやすくなる」。運営委員のみなさんは、そう感じました。

次のステップは機関紙配付者を増やすこと。一軒ずつ足を運んで協力を依頼したところ、10人足らずだった配付者が40人、50人と増えていきました。当時、支部運営委員をしていた千葉慶一郎さん(現・理事)はこう語ります。

「一人ひとりの組合員と会って話す中で、埋もれていたダイヤモンドをたくさん発見したような気分になりました。区長さんや地元の学校の元教員など、地域をよく知っている人が組合員に大勢いることが分かったんです。その人たちの中には、支部結成時の1990年代半ばに組合員になった人も多くいました。みなさんが支部結成時につくった財産を礎に、新たな力を生み出すことができると感じました」

地域をよく知っている組合員、一人ひとりのマンパワーを活かす!小野町をより住みやすくするため、組合員一人ひとりのお宅を訪問して協力を仰ぎました。

小野町と業務委託契約

「奥さん亡ぐなってがら、あの人見かげねな」

小野支部の拠点「小野サポートセンター『えがお』」で毎月開かれるミニ・デイには、男性も多く参加しています

ある日の支部運営委員会のことです。ゲートボール仲間の姿を見かけなくなったことが話題になりました。「ミニ・デイサービス(以下、ミニ・デイ)をやれば、外に出てきてもらえるかもしれない」と考えた運営委員のみなさんは、さっそく行動を開始。ほかの支部や医療福祉生協を見学し、10年に町の保養施設を会場にして月1回のミニ・デイをスタートさせました。お風呂やカラオケ、昼食、おしゃべり、時には政治や社会の話題について。介護保険で提供されるデイサービスに比べて自由度が高い小野支部のミニ・デイは、「気軽で楽しい場所」と噂が広がり、30人を超える参加者が集まるようになりました。

施設の利用料は当初の500円から200円に、14年4月からは無料(昼食代除く)になりました。無料化には理由があります。小野町が実施する介護予防・日常生活支援総合事業 ※1 として郡山医療生協が小野町と業務委託契約を結んだためです。要介護・要支援状態になるおそれが高い65歳以上の人(二次予防事業対象者 ※2)が利用した場合、規定の委託料が生協に支払われます。

ミニ・デイに加えて、清掃・買い物・書類の代筆・修繕など、介護保険の訪問介護でカバーできない部分の家事援助を実施する「日常生活お助けサービス」も同生協が受託し、小野支部が実施しています。利用は週1回・2時間以内。1時間当たり250円の利用料と委託費が生協に支払われます。

「今回の業務委託は、来年度から実施が予定されている『新しい地域支援事業 ※3 』を見越してのことだと思いますが、私たちは地域支援事業のためにミニ・デイなどをやっているわけではありません。ここでくらす人々にとって必要だからやっているんです。といっても、自分たちの生活を犠牲にしてやっているのではなく、やっている私たち自身も楽しんでいますよ。今回のように行政から評価をいただいていることは大変うれしいことですし、励みになります」。こう話すのは、支部運営委員の千葉連子(れんこ)さんです。千葉さんはこの春、介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格を取得しました。「将来的には、この場所で居宅介護支援事業所を運営できたらいいですね。介護保険と助け合いの両面でくらしを支えることができますから」と夢を教えてくれました。

※1:介護予防・日常生活支援総合事業
要支援・要介護などの介護が必要な状態になる前から介護予防を推進し、高齢者が地域で自立した生活を継続できるよう市区町村が実施する「地域支援事業」のひとつ。多様なマンパワーや社会資源の活用などを図りながら、市町村の判断・創意工夫によって要支援者などに向けた介護予防や配食・見守りなどの生活支援サービスを提供する事業。

※2:二次予防事業対象者
介護予防事業には、一般の高齢者向けのサービス(一次予防事業)と、要介護・要支援状態になるおそれが高い65歳以上の人を対象にして実施するサービス(二次予防事業)がある。

※3:新しい地域支援事業
介護保険の予防給付見直しに伴い、現行の地域支援事業に代わって実施が検討されている事業。住民ボランティアによるゴミ出しなどの生活支援サービス、NPOや民間事業者などによるミニ・デイサービス、リハビリ・栄養・口腔ケアといった専門職が関与する教室など、介護保険事業者や住民団体が予防サービス・生活支援サービスなどを一体的に提供することが想定されている。2014年7月ごろをめどに、ガイドラインが示される予定。

小野町にくらす全ての人を対象とした事業へと活動の幅を広げています

支部活動を見える化

業務委託に至るまでの行政との関係づくりは、決して平坦な道のりではありませんでした。町の祭りに健康チェックブースを出展したいと申し入れましたが、3~4年断られ続けました。ミニ・デイを始めるなど、住民向けの活動が広がるにつれて支部の活動が見えるようになり、健康チェックブースの出展も可能になりました。さらに13年6月には、町と支部が高齢者の見守り協定を締結しました。

理事の千葉慶一郎さんは、「行政との連携はブースの出展が初めてでした。それまでにも年に数回、行政と懇談する機会を設けて自分たちの活動内容や要望を伝えてきました。懇談には町の長期振興計画を持参し、テーブルに広げながら『この部分は医療福祉生協が担えます』と具体的に提案をしてきたのです。こうした懇談会の積み重ねが信頼になり、今回の事業委託につながりました。行政に私たちの実現したいことを理解してもらうのは、簡単ではありません。具体的な活動がないと、納得してもらうのは難しいというのが実感です。具体的な話を抜きにして『あれをしろ、これをしろ』と行政を追及するだけで物事が変わるのであれば、これほど楽なことはないですよ」と笑います。

ミニ・デイ、健康チェックブース出展、見守り協定締結、介護予防・生活支援総合事業と支部の活動が組合員向けの活動から全ての住民を対象にした事業へと広がる中で、組合員が増え、出資金も集まるようになりました(下表)。

(表)課題と組織統計

「誰かのため」というよりは「私のため」

なでしこ班のメンバーが、心を込めてお弁当作り

昨年4月から月2回の配食サービスも始めました。支部運営委員の熊谷加子(ますこ)さんが営む釜めしや「ふじ」の厨房で、なでしこ班が1個450円のお弁当をつくり、25か所に夕食として届けています。県立小野高校の生徒さんの協力で、おやつとメッセージが付く時もあります。

支部運営委員の阿久津好江さん、釜めしや「ふじ」を営む熊谷加子さん

「寒い日にひとり分の食事をつくるのは大変。私、一人暮らしだからよく分かるんです。たとえ月に数回でも温かい食事を届けてもらったら、どんなに良いでしょう。自分がこういうものがあったらいいなと思うことをやっているだけです。自分が必要だと思わなければ長続きしません。医療福祉生協にかかわると、自然と多くの人に出会えるし、適当に忙しいし、生きがいだって見つかります。誰かのために一生懸命というよりも、自分のためにやっていますね」と支部運営委員の阿久津好江さんはいいます。

「誰かのため」というよりは「私のため」、「誰かがやってくれるのを待つ」のではなく「まず私たちがやってみる」。小野支部では「私」から出発する活動がおこなわれ、地域に広がっています。

温かいお弁当を直接手渡し。笑顔を届けます

(編集部)
写真:大村洋介

 

<郡山医療生協>
●設立年月日 1972年5月14日
●組合員数 2万7,751人
●出資金 8億9,240万円
●支部・班数 28支部 396班
●事業所数 病院1 介護関連12 眼鏡店1 保育園1

<小野支部>
●設立年月日 1996年3月1日
●組合員数 594人
●班数 6班
●運営委員数 16人
※2014年3月31日現在