何も無いところからするけん 協力・共同で皆が集まるんよ 愛媛医療生協 今治西支部:comcom5月号

―無人駅からはじまった地域づくり―

菊間駅のとりくみ

クイズです。
JR四国の257ある駅のうち、無人駅はいくつあるでしょうか。

100駅? いやいや。じゃ、200駅…? もう一息! 正解は、なんと206駅もあるんです。
そんな無人駅のひとつ、愛媛県今治市にある菊間駅に灯をともした協同のとりくみをご紹介します。

「トイレと駅周辺の掃除をしてくれたら無料で貸します」

無人化した菊間駅

現在の今治市(人口16.7万人)は平成の大合併で12市町村が合併し、2005年に誕生しました。菊間駅がある旧菊間町の人口は8000人(当時)。石油精製業などの大規模工場が立地していたこともあり、財政も安定していました。合併後は、公共施設の有料化や自治体職員数が3分の1に縮小されるなど、行政が遠くなったと住民は感じていました。

そんな中、JR四国が10年6月に菊間駅を含む管轄内の29駅を新たに無人化すると発表(10月に完全無人化)。当時の駅長から、「無人駅になるけど、使う人がいないか」と声をかけられた住民有志が集まり、「ふれあいステーションきくま開設を考える会」を設置して協議をはじめました。当初JRは、月額20万円の賃料で使用する団体を募集しましたが、借り手は現れませんでした。そこで、「毎日トイレと駅周辺を掃除することを条件に無料で貸しましょう」という話になり、同年12月に考える会がJRと無償賃借契約を結び、「ふれあいステーションきくま」をオープンしました。

集う場所・食べる場所

無人化した駅舎が住民の交流拠点「ふれあいステーションきくま」として生まれ変わりました

「ふれあいステーションきくま」の活動の柱は、駅舎を住民の交流拠点として多くの方々に利用してもらうことです。愛媛医療生協今治西支部・今治商工会議所婦人部・婦人会・手話サークルの4つの住民団体が、地域交流サロンをおこなっています。サロン開始にあたって、社会福祉協議会の協力も得ながら、日本赤十字社・さわやか福祉財団などの助成金で冷蔵庫やエアコンを整えました。サロンは、会費と利用料で支えられています。会員は3種類。協力会員(500円/年)、会議に参加して発言することができる個人会員(2000円/年)、団体会員(5000円/年)です。今治西支部は団体会員です。

毎週水曜日10時から15時まで開かれるサロンは、4団体が週ごとに分担して運営しています。今治西支部の担当は、第3・第5水曜日。支部に所属する班が順番に作業を分担しており、数か月に一度当番が回ってきます。オープン当初、メニューには飲み物しかありませんでしたが、「食事を出してほしい」という声に応えてモーニングをはじめました。トーストやサラダ、ヨーグルト、ゆで卵がついて350円です。

サロンは班が担当

毎週水曜の駅舎は笑顔がいっぱい!班の仲間が集まってにぎやかにふれあいいきいきサロンを開催中

午前11時がくると、ガラガラと扉が開いて、4~5人のグループがサロンにやってきました。

「いらっしゃい!」

元気に出迎えるのは、近所に住む組合員の小谷英子さんです。

「今日は20人分のモーニングを用意しました。班の4人でメニューを相談し、昨日から準備しました。時間に追われるけど、外へ出ることは刺激になります。もうすぐ100歳になる義父が家にいるので、はじめたばかりのころは家族が私の外出を心配していました。でも最近は、『はよ行けよ』っていわれるんです。サロンが地域の役に立っていることを分かっているから、協力してくれるんでしょうね。ここに来ると気分転換になるし、友達がたくさんできました」と小谷さん。

ふれあいいきいきサロン

12時を過ぎると、サロンは満員に。

「いつも来てます。この前は当番でしたが、今日は食べに来ました。作る側と食べる側、役割が変わるのがいいですね。いつも作る側、いつも食べる側だと『やってあげてる』『やってもらってる』という感じがします。最近は土日も開けてほしいという声がありますが、作る側の人がまだまだ少ないのが悩みです」と、ある参加者は話してくれました。

ここがまちの中心

ふれあいステーションきくまにはコミュニティFM「ラヂオバリバリ」のスタジオが併設されています

「ふれあいステーションきくま」に毎週人が集まるようになったことで、駅はどのように変化したのでしょうか。

「年に4回の駅市(えきいち)、バラ祭り、盆踊りなど菊間地域の年中行事が駅で開催されるようになりました。児童館の子どもたちがキッズカフェを開いてくれますし、幼稚園や保育園の子どもたちも遊びに来ます。中学生と高齢者の交流イベントもやっています。ここが交流の場所になり、まちの中心になりました。駅に職員がいた時よりも、今の方が人は多いんじゃないですかね。サロンでは、情報発信も大切にしています。コミュニティFM『ラヂオバリバリ』と協力し、菊間駅ふれあいステーション『ふれあいスタジオ』から毎週15分の生放送で地域の話題や自慢話を届けています。電車に乗る人が早めに来て寄っていったり、降りた人が少し温まって帰ることもあります」と副支部長の田村キヨ子さんは話します。

自分たちでつくった場所

サロンができたことで人が集まり、無人駅にもかかわらず移動販売車が来るようになりました

「年取るとね、若い時とは違って友達に会うのが結構大変なのよ」。こう話すのは、支部運営委員の三宅惇子(よしこ)さんです。年を取るにつれ、相手の体調や家族のことを考えて会いに行くのを遠慮してしまうが、サロンは相手のことを気にせずに自分のペースで参加できるのが良いところだといいます。

隣に座る田村さんが、こう続けます。

「ここは、私たちがつくった場所じゃけん、なおさら参加しやすいです。誰かがつくってくれたものを利用して文句をいうのではなく、必要なものは自分でつくっていかないと。何もないところからするけん、皆が知恵を出す。皆で分担するけん、続く。自分たちでつくった場所じゃけん、居場所になるんよ」

今日も無人駅に協同の灯がともっています。

(編集部)
写真:大村洋介

 

<愛媛医療生協>
●設立年月日 1952年9月15日
●組合員数 4万5,649人
●出資金 9億9,193万円
●支部・班数 56支部 663班
●事業所数 病院2 医科診療所4 介護関連3
※2014年2月28日現在

<今治西支部>
●設立年月日 2009年4月25日
●組合員数 840人
●班数 30班
●運営委員数 10人
※2014年2月28日現在