被曝リスク低減にむけた福島4生協のとりくみ きらり健康生協・福島医療生協:comcom4月号

~知ることで工夫が生まれる~(後編)

きらり健康生協・福島医療生協

先月号に続き、福島県内の医療福祉生協が放射線量の測定を通じて、地域住民の不安に応えている実践をお伝えします。今回は、食品放射線測定器で食べ物の放射線量測定にとりくむ「きらり健康生協」と、WBC(ホールボディカウンター)を設置した「福島医療生協」を紹介します。

WBC
体内の放射性物質を体外から計測する装置。内部被曝の検査に用いる。

自宅で採れた野菜、食べていいのでしょうか?

きらり健康生協で測定した食品は、5000件を超えました(2014年2月現在)

きらり健康生協は、2011年11月に食品放射線測定器を導入しました。

「自宅で作っている野菜や果物の放射線量を知りたい」。家庭菜園をやっている組合員からの要望がきっかけでした。

本格稼働は12月。季節的には収穫できる野菜や果物があまりないにもかかわらず、予約枠は連日いっぱい。予約の電話も絶えませんでした。電話口からは、「お米を作っているお宅からもらったんですが、食べていいのかなと思って」「家で採れた野菜を、離れてくらす息子に送ってあげたいけど…」「家に妊婦がいるのですが、自宅で採れた野菜を食べていいのでしょうか」といった、いろんな声が聞こえてきました。

当時、福島市でも食品の放射線量測定を実施していたものの、台数が少なく申し込んでから順番がくるまでに時間がかかる上、測定結果は後日郵送でした。一方、きらり健康生協は測定結果をその場で示し、相談もできる場にしたため、地域住民から大変喜ばれました。

具体的な数値が知りたい

食品に含まれる放射線量を計測(右)。その場で結果を確認できます(下)

蓬萊(ほうらい)支部運営委員の八巻美恵子さんは、家庭菜園で採れた野菜や果物を定期的に検査しています。

「今日はカボチャを持ってきました。何度も検査していますが、今のところ私が持ち込んだもので、国の基準の100ベクレルを超えたものはありません」

八巻美恵子さん

八巻さんは、市が実施する測定との違いについて、こう指摘します。

「行政は、基準を超えているかどうかしか教えてくれません。細かい数字を知らせることで、かえって不安を大きくすることがないよう配慮しているのかもしれません。ですが私は、基準以下かどうかではなく、具体的に何ベクレルあるのかが知りたいんです。具体的な数値を知ることで『こうすればもっと値を下げられるのではないか』と工夫もできます。生協の検査では、測定した数値をそのまま伝えてくれる。そこが一番の違いです」

八巻さんの周りでは、福島第一原発事故の後、家庭菜園をやめた人が多かったのですが、再開する家が増えてきました。帰り際に、「今年、震災後初めて息子に野菜を送ったんですよ」と、うれしそうに教えてくれました。

福島市と委託契約を結ぶ

自然界からの放射線を計測しないよう、検査室は厚い壁で遮へいされ、厳重に管理されています

福島医療生協は、13年12月にWBC(ホールボディカウンター)を設置。調整期間を経て、14年2月から稼働しています。

設置に先立ち、どのように地域住民のくらしに貢献するかを議論し、2つのことを確認しました。一つ目は行政の事業を通じて(委託を受ける形で)貢献すること、二つ目は医療機関としての役割を果たすこと。これらを実現するには、WBCが最も適していました。福島市が全ての市民を対象に無料で実施している内部被曝検査にWBCが用いられており、測定には診療放射線技師を中心に医療機関のスタッフの力が欠かせないからです。

こうして市内3番目の医療機関として福島市と委託契約を結び、毎週木曜日午後2時~4時半まで、WBCによる内部被曝検査がスタート。各支部でのWBC学習会も始まりました。

数値を理解するサポートも必要

診療放射線技師の會田怜史さん

WBCは、医療生協わたり病院の放射能対策センターに設置されています。外部の放射線を測定することがないよう、検査室は厳重に管理され、外気を取り込まない形で気温・湿度を調整し、壁は全て鉛で遮へいされています。

検査にかかる時間は4分。測定そのものは2分です。最初に、衣類や体の表面に放射性物質が付着していないかどうかを検査します。衣類などに放射性物質が付着したまま検査をすると内部被曝かどうかの判断ができないためです。

「測定は分厚い壁に挟まれる感じがあるので、長く感じる人もいます」。こう話すのは、同病院・診療放射線技師の會田怜史(あいたさとし)さんです。會田さんは、福島市が実施する学校での出張検査で活躍する、放射能対策センターの中心メンバーのひとりです。

會田さんはいいます。「食物を通じて摂取するカリウムの中には放射性カリウムが一定の割合で含まれており、放射性カリウムは全ての人から検出されます。体重60kgの成人男性で4000ベクレル程度です。4000ベクレルと聞くと驚くかもしれませんが、異常値ではありません。検査は市の委託事業であるため、結果は後日に市を通じて知らせる、くらしに関する相談は別の機会を設けるなど、いくつかのルールがあります。検査結果を正しく理解する知識が不足している中で、数字だけが一人歩きするのが心配です」

福島医療生協では、組合員向けの自費検査枠を設け、その場で生活相談ができる仕組みづくりを検討しています。

※FTF・食品放射線測定器・WBCの購入には、全国の医療福祉生協や地域購買生協から寄せられた募金が活用されています

自分のことは自分で決める

2回連載でご紹介した福島県内4つの医療福祉生協では、FTF・食品放射線測定器・WBC※の機器を駆使して、組合員や地域の人が自分の体の被曝状況や食べ物の放射線量を知り、適切な対応をしていくために欠かせない情報へのアクセスを保障しています。これらの実践は、「医療福祉生協のいのちの章典」(いのちの章典)にある「自己決定に関する権利」にもかかわるものです。自分のことを自分で決めるためには、判断するための情報が必要です。専門家の知恵や知識が必要な場面もあります。自己決定を支える情報が保障され、当事者と専門家がそれぞれの立場で力を合わせて「昨日より今日が、さらに明日がより一層意欲的に生きられる(いのちの章典)」社会をつくる。福島での実践は生活協同組合がめざす医療・介護の姿とも重なります。

(編集部)
写真:大村洋介

 

きらり健康生協

<きらり健康生協>
●設立年月日 1982年1月24日
●組合員数 2万1,188人
●出資金 5億9,945万5,000円
●支部・班数 29支部 89班
●事業所数 医科診療所4 併設歯科診療所1 介護関連18
※2014年1月31日現在

 

福島医療生協

<福島医療生協>
●設立年月日 1969年7月27日
●組合員数 2万8,525人
●出資金 8億8,258万9,000円
●支部・班数 23支部 119班
●事業所数 病院1 医科診療所2 介護関連7
※2014年1月31日現在