空き家から人が集まるサロンへ 東京西部保健生協~:comcom12月号

きずなサロンひまわり

「大原さん家(ち)」のきずなサロンひまわり

「ふれあい・いきいきサロン」をご存知ですか。

「ふれあい・いきいきサロン」は、交流や助け合いを目的に住民自身が企画・運営する場所で、社会福祉協議会が開催を提唱しています。高齢者、障害者、子育てサロンなどがあり、全国5万5000か所で活動しています(2011年4月現在)。全国の社会福祉協議会ではサロンへの助成要綱などを作成し、運営を手助けしています。

東京都杉並区内では、23か所が「きずなサロン」という名前で住民の手により運営されています。その中のひとつ「きずなサロンひまわり」は、東京西部保健生協の組合員が運営しています。

医療福祉生協がつなぐ縁

作家の大原富枝さん(故人)の旧宅をお借りして、子どもから高齢者まで誰でも気軽に立ち寄れるサロンが誕生!

11年度の生協強化月間中のこと。広い敷地内にある2軒の空き家のひとつに、人が引っ越してきました。空き家になる前は作家・大原富枝さん(故人)※が住んでいました。大原さんは高知県本山町の出身で、亡くなった後、自宅を本山町に寄贈。引っ越してきたのは管理を任された本山町の職員でした。

東京西部保健生協の支部役員がさっそく訪問したところ、医療生協の説明が驚くほどスムーズに受けとめられました。「医療生協のことを詳しくご存知ですね」と尋ねると、「私は高知医療生協の組合員なんです。お世話になっていました」との返事。杉並と高知が医療福祉生協でつながっていたことに、お互いにビックリしました。

高齢化がすすみ、一人暮らしの高齢者が増える中、人々の交流の場をつくりたいと考えていた支部役員が「空いている家を貸してほしい」と頼んだところ、二つ返事で了解してもらえました。借家は元の持ち主にちなんで「大原さん家」と名付けられました。東京西部保健生協の組合員5人で立ち上げ準備をすすめ、杉並区社会福祉協議会(以下、杉並社協)からの補助金で備品をそろえ、「大原さん家」は「きずなサロンひまわり」(以下、大原さん家)として12年8月29日にスタートしました。

生誕100年記念事業のポスターと全集。本山町には立派な大原富枝文学館があるが、この家にも大原富枝文庫をつくろうと作品を集めている

※大原富枝
1912年9月28日生まれ。高知県出身。高知県女子師範学校中退。長く結核と闘いながら創作を続け、38年に『祝出征』で注目される。57年、『ストマイつんぼ』で女流文学者賞、60年に野中兼山の娘をえがいた『婉という女』で毎日出版文化賞、野間文芸賞。98年、芸術院恩賜賞。2000年1月27日死去。享年87歳。

みんなの力で「大原さん家」のきずなサロンひまわりがスタート

事前におこなわれた見学会には、地域住民など150人を超える参加がありました。若いお母さんは「まわりを気にしないで子どもを遊ばせられる」、近所の方からも「お手伝いのボランティアとして登録したい」などの声が寄せられました。

商店が近くにない地域なので、一人暮らしの方から「食事が出たらうれしい」という要望がありました。しかし、保健所の認可の問題もあり食事提供は難しく、喫茶をおこなうことに。喫茶をおこなうにあたっては、たくさんの人に手伝ってもらい準備をすすめました。代表の横井妙子さんは言います。「ボランティアにはいろんな特技を持った方がいます。食事づくりが得意な人、看板づくりなど工作の得意な人、一人ひとりが自分の得意なことで力を発揮しました。期待してくれている参加者や仲間がいるから、楽しみながらやることができますね。私も楽しんでいます」。

喫茶のほかにも、杉並社協や保健所の職員を講師に招き「嚥下(えんげ)体操と口腔ケアの話」を聞いて勉強をしたり、転倒予防の「ころばん体操」や「小顔エクササイズ」は毎回おこなっています。

杉並社協からも「『大原さん家』が、近隣住民の悩み事やニーズ発掘、福祉などの情報発信の場として、地域の拠点になることを期待しています」という声が届いています。

オープン1周年を記念しておこなわれた納涼寄席。橘家扇三師匠の「青菜」は、ゴーヤのグリーンカーテンにぴったりのお噺で、部屋いっぱいに笑いがはじけました

人と話すって元気が出ます

「週一回だけど、ここにくれば誰かがいて話ができる」

「元気が出て、笑顔になれました」

「一週間ぶりに人と話したわ。今夜はゆっくり眠れそうです。ここが唯一、人と話せる機会なんです」

「大原さん家」に集う人の声です。

つながりができたのは参加者同士だけではありません。サロンがスタートするまでは、庭に雑草や木が生い茂り近所からの苦情が出るほどでした。「大原さん家」に人が出入りするようになってからは、手入れされて庭全体が見通せるようになり、ご近所さんともあいさつをするなどの交流が生まれています。

みんなで茶飲み話に花を咲かせたり、体操や寄席などの催しを楽しんだり、「大原さん家」では笑顔が絶えません

助け合いのある地域をめざして

「大原さん家」がスタートして1年が経ちました。今、スタッフのみなさんには夢があります。

「このあたりはスーパーマーケットなどのお店が近くになく、食事や買い物に不便を感じている人がいます。もっと食事の援助をしていきたい。一人でご飯を食べるのではなく、気が置けない仲間と笑いながらご飯を食べる。そんなサロンを夢見ています」

「今は週1回しか開けていませんが、毎日誰かいて、近所の人たちがいつでも顔を出せる場所にしたい」

「庭に子どもたちを集めて、バーベキューなんかできたら楽しいだろうなぁ。夏休みとか親の仕事の都合で旅行できない子どももいるだろうから」

困った時は助け合う。そんな地域をめざして「大原さん家」に集うみなさんのとりくみは続きます。

(編集部)
写真:大村洋介

東京西部保健生協

〈東京西部保健生協〉
●設立年月日 1951年1月17日
●組合員数 7,016人
●出資金 1億8,861万6,000円
●支部・班数 6支部 53班
●事業所数 診療所3 介護関連6
※2013年3月31日現在