野菜に添えたメッセージ ~被災地福島へ想いを届ける 浜北医療生協~:comcom11月号

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東日本大震災から2年8か月。福島県の医療福祉生協に、「つながっているんだよ」のメッセージを野菜にのせて毎週送り続けている医療福祉生協があります。浜北医療生協(静岡県浜松市)です。メッセージを添えた野菜定期便は、2013年の夏で100便を超えました。

みんなの気持ちがひとつに

生協では東日本大震災後すぐに震災支援対策本部を設置し、募金活動とともに「物資を送ろう」と決め、震災支援がスタートしました。「集まってきたものを送るだけでは、現地の人が中に何が入っているのかわからなくて困ってしまう」。阪神・淡路大震災時のボランティア経験者からアドバイスを受け、箱の中身を明記し、受け取った方に内容がわかるようにしました。

物資の支援を地域の組合員に呼びかけていくうちに、組合員活動に顔を出したことのない方からも「これだけしかないけれど、私も何かしたいと思って…」と支援が寄せられるようになりました。支援物資を被災地に送っていることが地域に伝わるにつれ、「これを送ってもらえませんか」「私も何かしたいと思って市役所へ行ったら、『浜北医療生協で支援活動をおこなっていますから、そちらへお持ちください』と言われて持ってきました」とたくさんの方がとりくみに参加し始めました。浜松医科大学の学生や子ども連れのお母さんもSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて浜北医療生協が震災支援をおこなっていることを知り、「現地には行けないけれど、自分ができることをしたい。少しでも想いを届けたい」と参加するようになりました。

自分ができることをしたい!被災地への物資支援の輪が地域の中に広がっていきました。

新鮮野菜を届ける

11年7月、物資支援を終わりにしようと決めました。そんな時、郡山医療生協の職員から、「家庭菜園をやっているけれど、できた野菜を前にして食べてもいいのかどうか迷っている。土壌を測ったら0.5マイクロシーベルトの放射線が出ている」「仕事が終わってからスーパーに行くと何もなくて…」という声を聞きました。浜北医療生協にも家庭菜園をやっている職員・組合員がおり、「多くはないけれど、家庭菜園でとれた野菜を送ったら喜んでもらえるのではないか」と、毎週月曜日に家庭菜園で収穫した新鮮野菜を送る活動がスタートしたのです。

送っているのは「みんなの気持ち」

震災直後に支援物資を集めていた時、オムツ1個や携帯用ミルク1袋にメッセージを添えて持ってくる人がいました。被災者の方がこの小さなメッセージを受け止めてくれたことを知り、浜北医療生協では「送ることができる量は限られているが、気持ちを添えることはできる」と、送る野菜に毎週メッセージを添えています。

生協きたはま診療所の橋爪伸江さんは言います。「私たちが送っているのは庭先で採れる野菜です。郡山医療生協から『いつもありがとう』というメッセージや、送った野菜でつくった料理の写真などが送られてきます。それを見るとうれしくて、また野菜を送りたくなる。そんな気持ちのキャッチボールの中で、今の『福島』の日常を知り、思いを寄せることができるんです」。

橋爪伸江さん、高津日出子さん、渥美邦夫さん

日常の一部だから続けられる

「生協デイサービスにじの家」職員の桐山はま子さんの言葉です。「『ありがとう』のひと言が一番うれしいです。いつものことをしているだけで、特別な何かをしているわけではないんです。家庭菜園や畑で出来た野菜だったり、趣味でお菓子を作っている人もいるんです。そこで出来たものを送っているだけなんです。『やらなきゃいけない』と考えたら、とても続けられません。支援のために自分の何かを犠牲にするのではなく、普段のくらしの中でやっていることが支援につながっています」。

伎倍(きべ)支部長の高津日出子さんも言います。「果物をもらった時に、ジャムやお菓子にして送っています。郡山医療生協のみなさんから『すごくおいしい。どうやって作るんですか。レシピを教えてください』と言われました。とってもうれしいですよ。私はただ、好きなことをしているだけなんですけどね。私のできることは小さいけれど、みなさんの声に励まされて何かしたいという気持ちになります」。

一回に送れる野菜の量はそれほど多くありません。「被災地で野菜に込めた気持ちを楽しみに待ってくれている人がいる」これこそが浜北医療生協のみなさんの原動力なのです。

家庭菜園の野菜を送る桐山はま子さん

2つの現実を前に

浜北医療生協が野菜の定期便を送り続けるのは、2つの現実があるからです。

1つめは、福島の人たちのくらしを肌で感じた、という現実。

野菜を通しての気持ちのやりとりから始まり、顔の見える関係になりました。今年の支部長研修では、10人を超える組合員が郡山医療生協へ健康づくりを学びに行きました。現地を訪れ、福島の人々のくらしに触れ、声を聞く中で感じた被災地の現実。

2つめは、県内に浜岡原発を抱える、という現実。

「浜岡原発はここから35kmくらいしか離れていません。福島のような事故が起こったら、もうこの地域には住むことができなくなります。今までの日常がすべてなくなってしまう。福島の現実は他人事ではありません」。渥美邦夫理事長の言葉です。

浜北医療生協はこれからも想いのこもった野菜を送り続けていきます。

自家製野菜にメッセージを添えて送ると被災地から届く「ありがとう」の声。気持ちのキャッチボールが支援の原動力に!

(編集部)
写真:大村洋介

浜北医療生協

〈浜北医療生協〉
●設立年月日 1997年9月16日
●組合員数 3,935人
●出資金 1億3,695万8,000円
●支部・班数 8支部 33班
●事業所数 診療所1 介護関連4
※2013年8月31日現在