緑のカーテンが結ぶくらしとリハビリ 高松協同病院(香川医療生協):comcom8月号

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大西哲治さん

大西哲治さん

病院のまわりをめぐる散歩道。リハビリに励む男性を作業療法士が傍らで見守っています。
「明日、ここにゴーヤの苗を植えるんですよ」
「あー、ゴーヤか。あの苦味がええなー」
ここは高松協同病院(香川医療生協)。85床の回復期リハビリ病棟をもつ病院です。病院の南側には2010年以来、夏になると2階の窓にまで届く立派な緑のカーテンが完成します。

苗植え当日。ボランティア委員会の組合員、入院患者、職員など40人近い人が集まりました。
病棟でリハビリに励む大西哲治さんは、作業療法士とともに参加しました。「団地で花壇の世話係をしています。土や植物に触ることが大好きで、時間を忘れるほどです。今年初めて土に触ることができました。まさか入院先の病院で土に触れることができるとは思っていませんでした」と嬉しそうに話してくれました。

用意された苗は参加者によって丁寧に植えられました。今年も大きく育つことを願いながら。

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よしっ、やろう! でもお金はどうする?

高松協同病院が緑のカーテンを始めたきっかけは、10年に「たかまつ緑のカーテン・コンテスト」(主催:高松市)がスタートしたことです。前年に同生協の善通寺診療所が緑のカーテンに取り組んでいたことも影響しています。

緑のカーテンでエコな夏を体感する。もしかしたら光熱費を削減できるかもしれない。そんな理由から「よしっ、やろう!」と決まったものの、費用の捻出が課題でした。

そこで取り組んだのが古紙回収です。事業所から出るダンボール、新聞紙やチラシなどの古紙を集めました。病院から少し離れた地域の組合員は、支部運営委員会に古紙を持ち寄り、会議のたびに車のトランクが古紙でいっぱいになりました。

2年連続で最優秀賞を受賞

事務長の山根幸子さん

事務長の山根幸子さん

「病院敷地内にある回収場所に組合員さんが古紙を持ってきてくれるんですよ。場所がいっぱいになってまわりに積まれていることもありました。『雨が降ったら大変だー』とドキドキしていました」「組合員さんが古紙を丁寧に包んで持ってきてくれるんです。頻繁に持ってきてくれるので、最初の頃は職員から『毎日病院にゴミを持ってくる人がいる』と相談されたことがあるくらいです。今では笑い話ですけどね」。こう語るのは、山根幸子事務長と森みどり総看護師長です。

総看護師長の森みどりさん

総看護師長の森みどりさん

古紙回収で得た資金で苗やネットなどの材料費をまかなうことができました。ネット張り作業には組合員が無償で協力してくれました。大きく育ったゴーヤのカーテンは「たかまつ緑のカーテン・コンテスト」事業所部門で10年、11年と2年連続で最優秀賞を受賞しました。

今年は、高松市と香川県が緑のカーテン・コンテストを同時開催します。高松協同病院はダブル受賞をねらっています。

ゴーヤの成長が楽しみ

介護職の谷亜季子さん

介護職の谷亜季子さん

緑のカーテンは患者さんの散歩道にあります。患者さんはリハビリの一環でそこを歩いて、ゴーヤの成長を毎日楽しみにしています。なかにはゴーヤに名前をつけている人もいて「あっ、これ斉藤さんのゴーヤって書いてあるわ、採ったらあかんで」。「調理実習で使うので、このゴーヤ採らないでください」とメモが貼ってあるゴーヤもあります。

介護職の谷亜季子さんはいいます。「ゴーヤの成長を見るのが楽しいんです。ゴーヤは毎日大きくなります。雨が降った次の日なんてビックリするくらい大きくなるんですよ。成長を楽しみに毎日散歩に行く人もいます。朝見に行って、夕方にも訪れる人がいるくらいです。ゴーヤの話題で職員はもちろん、患者さん同士のコミュニケーションが豊かになりました。携帯電話で写真に撮って『私のゴーヤのほうが大きい』と言いあったり。患者さんがすごく楽しみにしているのが伝わってきます。ある患者さんは歩くことが苦手で、院内でのリハビリに積極的ではありませんでした。『じゃあ、ゴーヤのカーテンの中で歩く練習しません? あそこだったら誰にも見られないし、涼しいし、ゴーヤの成長も見られるし』と提案したら、毎日歩く練習をしてくれるようになりました」

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くらしそのものがリハビリ

com_c_201308_08患者さんの中には「どうしても外に出るのはイヤ」という人もいます。何度誘っても嫌がっていた患者さんに、ゴーヤの水やりをお願いしました。その方の自宅はイチゴ農家なので水やりがくらしの一部になっていると考えたからです。すると、「あっ、忘れとった。水やり行かないかん」と、自ら外で作業するようになりました。

「リハビリというと、目標に向かって器具を使いながら一生懸命やるというイメージがありませんか。特別な場所で苦しみに耐えながら努力するみたいな…。でも、ゴーヤを通じて感じるのは、くらしそのものがリハビリだということ。患者さんが戻っていくのはくらしの場です。いくら立派な機能訓練を実施しても、くらしとの関連が不足していると十分な効果が得られないこともあります。くらしの中にリハビリを位置づける。ゴーヤはここに一役買っています」と森総看護師長はいいます。

緑のカーテンが協同の礎に

朝・晩の水やりは1時間かかります。平日は職員が、土・日は近所に住む組合員が担当しています。収穫したゴーヤは、患者さんがお見舞いに来た家族に渡したり、職員が自宅で調理したりします。病棟夏祭りではみんなでゴーヤチャンプルーをつくりました。

土を耕し、苗を植え、毎日水をやり、職員・入院患者・地域の組合員それぞれが緑のカーテンの成長を見守ります。毎夏くり返されるこの経験が、職員と組合員の協同の礎になっています。

com_c_201308_09〈香川医療生協〉
●設立年月日 1980年7月1日
●組合員数4万5,059人
●出資金9億2,159万9,000円
●支部・班数 59支部 345班
●事業所病院2、歯科2、診療所3、介護関連11 別法人1 (関連施設7)
※2013年5月31日現在