協同組合の実践で地域を豊かに 庄内まちづくり協同組合「虹」:comcom5月号

庄内地方の南部にある山形県鶴岡市は、2005年10月に鶴岡市・藤島町・羽黒町・櫛引町・朝日村・温海町の六市町村が合併し発足しました。月山・羽黒山・湯殿山の出羽三山、庄内平野に潤いをもたらす赤川、そして日本海と、自然環境に恵まれた地域です。人口13万6000人、4万8000世帯のうち7割が旧鶴岡市エリアに集中しています。この地域の高齢化率は28%、75歳以上の人口は15%を超えています。

高齢化が進むこの地域で「いつまでも住み続けられるまちづくり」にとりくむ「庄内まちづくり協同組合『虹』」をたずねました。

あのままだとフリーターだったかも

「事情があって介護専門学校を中退しました。行き場がなくなってしまい、手あたり次第に介護職員採用試験に応募しましたが、書類選考で全部ダメ。無資格で中退ですからね…。そんな時、庄内まちづくり協同組合『虹』に採用してもらいました。採用担当者は私の話を熱心に聞いてくれました。本当に嬉しかったですね。働きながら介護職員基礎研修にも通わせてもらいました。『虹』に出会ってなかったら、今どうなっているか分かりません。介護の仕事は楽しいですよ。将来は、社会福祉士資格を取得して地域で困っている人の力になりたい」

「大学でシューカツしていたんですが、なかなか決まりませんでした。もうダメかも、と考え始めた時、知り合いから『虹』を紹介され就職しました。『虹』に入っていなかったら、フリーターだったかもしれませんね。今は鶴岡協立病院など、施設清掃の仕事をしています。患者さんや職員から『あなたのおかげで毎日快適に過ごせる』と言われると嬉しいです。人とふれあえる仕事なのでやりがいを感じます。昨年、ヘルパー2級もとりました」

まちづくり協同組合「虹」で働く五十嵐大暁さん・高橋暁さんの声です。

まちづくりとは仕事づくりである

まちづくり協同組合「虹」は生協共立社(地域購買生協)、庄内医療生協、高齢者福祉生協、社会福祉法人山形虹の会など7団体が組合員となり04年に設立された事業協同組合です(図)。


「鶴岡をいつまでも住み続けられるまちにしたい。住み続けるためには仕事が必要です。食品や医療・福祉、地産地消など異業種の壁を乗り越えて協同組合が地域に役立つ仕事をつくり、高齢者の生活にも貢献する。人々のくらしに協同組合がどのような役に立てるのか、ここがスタートです」と庄内まちづくり協同組合「虹」理事長の松本政裕さん(生協共立社理事長、山形県生協連会長理事)は言います。

「虹」の事業概要は表の通りです。介護事業、給食・配食事業、支援事業、本部に総勢235人の職員が働いています。年間事業高は7億2800万円、剰余は2250万円です(11年度実績)。

順風満帆のようですが、ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。04年、住宅型有料老人ホーム「虹の家こころ」と給食・配食事業をスタート。その後、清掃・送迎事業、ホームヘルプやデイサービスなどの介護保険事業拡大を行ってきました(庄内医療生協から移管)。拡大していく事業と経営が噛み合わなくなり、09年度には累積赤字が3000万円に達しました。

松本理事長は言います。「配食事業や清掃事業などを含めて、ひとつの事業組織として運営する力が十分ではなかったことが原因です。この時期は赤字の解消が大きな課題でした」。

助け合いから採算がとれる事業へ成長

事業の管理・運営を強化することで11年度には累積赤字を解消。12年度はおよそ3000万円の剰余を確保しました。専務理事の五十嵐孝一さんは言います。「助け合い活動から採算がとれる協同組合としての事業へ、ここに苦心しました。助け合い活動は大切なことですが、継続性や仕事づくりという部分では不安があります。『虹』は協同組合として事業を行っているため、事業として成立することを大切にしました」。

栄養士の小林明奈さんは05年から「虹」の給食・配食部門に勤務しています。「最初は食事を届ける施設が3つでしたが、現在は11施設に増えました。事業拡大される中、食事の数はもちろん、ミキサー食など個別対応も増えてきました。大変ですが、やりきることで自信がつきました。これからも生活・希望に沿った食事を届けていきたいです」。

事業として確立していく中で、職員もしっかりと成長しています。

競争よりも協同を

庄内まちづくり協同組合「虹」の外観

設立時50人だった「虹」職員は現在235人にまで増えました。「まちづくりとは仕事づくりである」は着実に実現されています。事業も安定してきた今、高齢化が進み多死時代を迎える2025年を見据え、次の一歩をどうするか、「地域包括ケア」の中で「虹」とそれを構成するそれぞれの協同組合の役割を確認する作業が始まっています。

松本理事長は言います。「事業が安定したこれからが本格的な地域づくり活動です。協同組合が事業を通じて地域へ貢献するスタートラインについた、ということです。私たちは資本主義の世の中で暮らし、競争こそが良いものを生み出すと考えがちです。協同組合同士が競争している現実もあります。しかし、競争よりも力を合わせること、協同が生みだす実践で地域を豊かにしていくこと、これこそが私たちの考える地域づくりです」。

(写真提供:庄内まちづくり協同組合「虹」)