私たちのサロン「かあさんの茶の間」 東京ふれあい医療生協:comcom2月号

東京都北区・荒川区界隈

近所の商店街。この裏には狭い路地と密集する住宅が。高齢者のみの世帯が増えています

出発進行「チンチン!」。昔ながらのベルの音を鳴らし続け、今も住民の足として活躍している都電荒川線。その王子電停(駅)から三ノ輪橋に向かう鉄路の周辺、区でいえば北区と荒川区、そして足立区の一部が東京ふれあい医療生協のおもな活動エリアです。かつてアメリカの無差別爆撃によって家を焼かれ、焦土と化した地域。そこにバラックを建て、戦後の歩みを始めたという歴史があります。その後の高度成長期、この一帯には、都市に集中する人たちの住まいとして、たくさんの団地も建てられました。つまりは新旧の住民が、混然一体となってくらしてきた地域なのです。そして今、往時のにぎわいは消え、年を追うごとに高齢化がすすんでいます。

北区の高齢化

ここで、東京ふれあい医療生協の主たる活動地域、北区の高齢化率をみてみます。総人口はおよそ31万7600人。そのうち65歳以上の人の数はおよそ8万。高齢化率は東京都23区の中で最も高く、25・3%になっています。65歳以上の方々のくらしを、もう少し詳しくみてみましょう。単身でくらしている世帯がおよそ2万6000世帯あります。単身ではないが、高齢者のみでくらしている世帯はおよそ4万世帯です。そして、高齢者全体の一人暮らし率をみると33・52%になっています。この数字は、全国平均の2倍。高齢化は首都・東京でも深刻な問題になっているのです。

40周年とワークショップ

誕生したばかりの「すまい・地域づくりの会」。これからの活動が楽しみです

1971年に設立された東京ふれあい医療生協は、昨年、40周年の記念行事をとりおこないました。その一環として「組合員の声を聞く」ためのワークショップが実施されました。1回あたり100人の参加で、計3回。300人の声を聞いたのです。その声の中で最も多かったのが、「住み慣れたこのまちで、死を迎えるその日までくらしていきたい」。

周辺に高齢世帯が増え、ある日、施設に入ったり、亡くなったり。気がつけば、空き家も年々増加している。当然のことながら活気はなくなり、地域のコミュニティも頼りないものになっている。そんな背景からしぼりだされた切実な声でした。このまま手をこまねいているわけにはいかない。組合員のみなさんは、さっそく動き出しました。そこで誕生したのが「すまい・地域づくりの会」です。

すまい・地域づくりの会

「かあさんの茶の間」を説明するためにこんなミニチュアもつくりました

この会は、文字通り「住まいづくり・地域づくり」に目的を特化したプロジェクトです。支部組織を超えた横断的な組合員によって構成されています。

会長の阿部貞治さんがいいます。
「安心してくらせるということは、亡くなるその日まで、ということですからね。つまりは、終(つい)の棲家(すみか)をどうするのかという問題と向き合わざるをえないわけです。それがアパートのような施設なのか、住み慣れた家なのか。まだ形ははっきりしていません。検討はこれからです」

理事の遠藤弘子さんがいいます。
「東京ふれあい医療生協は、在宅ケアに力を入れている生協です。『路地は廊下、家が病室。壁のない病院構想』という考え方で地域医療にとりくんでいます。こうした医療福祉生協の方針と組合員のプロジェクトチーム『すまい・地域づくりの会』の活動をどう重ね合わせていくのか…。この先に、きっと何かが見えてくる。そんな気がするんです」

かあさんの茶の間

「ようこそ!」「こりゃたまらんね」これから楽しい1日がはじまります

 「すまい・地域づくりの会」は、「終の棲家づくり」にとりくんでいる阪神医療生協のホームホスピス「愛逢の家」の視察をおこない、組合員の声を聞きました。地域を歩いて、空き家探しもしました。こうした行動を通して、自分たちの「思い」を具体化していこうと考えたのです。しかし、条件にあった都合のいい物件が、そうそうあるわけではありません。そんなある日のことです。組合員で健康づくり委員長の白岩清さんからうれしいニュースが入りました。

「娘が出ていって1棟空いたから、もしよかったら使いなよ。終の棲家というわけにはいかないが、たまり場くらいにはなるだろう」

終の棲家はともかく、たまり場ができる。「すまい・地域づくりの会」は白岩さんの申し出に飛びつきました。まずは地域で楽しく過ごせる「場づくり」に着手しよう。そして、段階的に「終の棲家構想」を煮詰めていこう。2012年1月。「かあさんの茶の間」がスタートしました。

茶菓とおしゃべり、しめて100円なり

「時間を気にしないでおしゃべりができる。最高だね」と語る常連のお2人

間口2間。奥行き5間半。2階建ての民家。その玄関に「かあさんの茶の間」と染め抜かれた暖簾が掛けられました。今までは何の変哲もなかった路地に、小さなサロンができたのです。「毎週木曜日。11時から夕方5時まで。お茶とお菓子とおしゃべりを楽しみながらのんびり過ごしてください」といった呼びかけに惹かれて近所の人がやってきます。

スタッフのまとめ役、鈴木功子さんがいいます。
「オープンしてから10か月。あっという間でしたね。毎週7~8人の方が立ち寄ってくれますから、延べ人数にすると300人を超えますね。ここにはプログラムみたいなものは、ないんです。ぶらりと来て、お茶を飲んで、おしゃべりをして、それだけです。自由で気まま。これが特徴…かな? ここは施設じゃない、本当にお茶の間。だから好きなように過ごしてもらえれば、それでいいんです。来る方も楽しい。迎える方も楽しい。そんな関係を大事にしたいですよね」

これからどうする?

「すまい・地域づくりの会」のメンバーと「かあさんの茶の間」を支えるスタッフのみなさんが語ります。
「こういう場所を地域のあちこちにつくりたい。やはり『近所にある』ってことがとても大事なことだと思う」
「来年からは週2回にしたいよね。違うスタッフグループが、木曜日とは違う『かあさんの茶の間』をやってもいいと思う。やっぱり、自分たちが背負うだけじゃだめ。できるだけ地域の人が、多くかかわり合えるようにしないと広がらないよね」
「私は近い将来、毎日できたらいいと思う。いつでも気が向いた時に立ち寄れるようにしたいな」

最後に会長の阿部貞治さんがまとめました。
「こうした活動を積み重ね、安心してくらせる地域づくりをすすめながら、『求められる終の棲家』について考えていきたいと思います。『かあさんの茶の間』は、まさにそのスタートラインというところですね」

〈東京ふれあい医療生協〉
●設立年月日 1971年6月30日
●組合員数 1万5,003人
●出資金 5億2,261万2,000円
●支部・班数 8支部 178班
●事業所 医科診療所3 介護関連5

※2012年11月30日現在