第6回24時間蓄尿塩分調査報告

第6回24時間蓄尿塩分調査報告

第6回24時間蓄尿塩分調査報告書(2.2MB)
第6回24時間蓄尿塩分調査報告記者発表用(650kB)
第6回24時間蓄尿塩分調査報告記者発表資料集(850kB)

2012年11月27日

1.調査の目的
日本人の死因の多くを占める心筋梗塞や脳卒中などの予防のためには、高血圧の予防と治療が最も大切です。そのためには塩分制限が有効であることが知られており、厚生労働省の「健康日本21(第二次)」でも平成34年度までに1日の食塩摂取量を平均8gにすることを目標に掲げています。平成22年度年国民健康栄養調査では、食塩摂取量平均が10.2gとなっています。今年5月には呉市で減塩サミットが開催されるなど、近年減塩の重要性に対する認識が広まっています。
医療福祉生協連は、日本生活協同組合連合会医療部会時代の1984年からほぼ5年毎に、組合員を対象に「24時間蓄尿塩分調査」を約2,000人~3,000人の規模で実施してきました。この調査は、医療福祉生協の組合員の自主的な健康づくり活動、特に食生活面のとりくみの成果を確認することを目的に始まりました。30年近くにわたって全国規模で行ってきた、地域住民の健康調査活動としては非常に希少な調査です。また、厚労省が毎年行う、食べた物を記入しそこから食塩などの摂取量の推計値を出す国民健康栄養調査よりも精度の高い調査ですが、24時間蓄尿という調査方法に手間がかかるため、一定規模で継続的に調査した事例は多くありません。
今回は、塩分摂取量・カリウム摂取量(経年変化、地域や年齢による違い)を中心に組合員の食生活行動との関係も併せて調査しました。

2.調査の概要
調査実施日:2011年11月20日(日)を基本に実施しました
調査対象者:81生協(37都府県)2,894人(ただし集計対象は、2,516人)の組合員
※資料中の医療福祉生協連調査は 図1および図8・図9のみ全年齢を対象に集計
その他は20歳代~70歳代を対象に集計した(表1)
調査方法:
① 専用容器にて24時間の尿を回収し、検査委託機関にて成分を分析する
② 質問票により生活習慣・くらし・嗜好などの項目を集約する
③上記①・②の結果をクロス集計し分析する

表1

3.調査結果
(1)塩分摂取量
①1日塩分摂取量
1日塩分摂取量の推定値平均は、9.49g/日でした。3回連続して10-10.1gとほとんど不変であったのですが、今回は前回(2005年)に比べて0.53g/日と大幅に減少し、1984年の調査開始以来初めて10g/日を切りました。調査方法が違うので単純に比較はできませんが、厚労省が毎年おこなう国民健康栄養調査と比べると、医療福祉生協の組合員のほうが一貫して塩分摂取量は少なくなっています。しかし、最近の動向を見ると、塩分摂取量に関しては回を追うごとに近接した値になっています(図1)。塩分摂取量の目標値(日本人の食事摂取基準 2010年度版より)に対する達成率は、特に男性において国民健康栄養調査結果よりわずかによかっただけという結果でした(表2)。医療福祉生協連の調査対象となった組合員は、国民健康栄養調査に比べ、喫煙率や肥満者の割合が低く、健康的な生活習慣を送っている割合の高い集団と言えますが、食習慣にかんしてはあまり違わなくなりつつあると考えられます。また、国民健康栄養調査では男性と女性の比率がおよそ4.5:5.5であったのに対し、医療福祉生協連調査では3:7と女性の比率が若干高くなっていることも異なる点です。

図1

表2

②食生活と塩分摂取量の関連
「日常生活で薄味や減塩を実践しているか」(図2)、「減塩表示を意識した食品選択をしているか」(図3)という質問に対しては、特に女性において、しているという人の塩分摂取量が最大で約1.6g少ない傾向でした(図2)。しかし、男性では減塩行動を実践している者としていない者との間に有意差がありませんでした(図2・図3)。男性は薄味や減塩の意味を具体的につかんでいないことが多いということかもしれません。「漬物を食べる頻度」(図4)、「1日の汁物(みそ汁など)を飲む頻度」(図5)のような具体的な食行動に関する質問では、男女とも頻度の少ないほうが塩分摂取量が少ない傾向がわかりました。なお血圧と栄養摂取についての国際共同研究INTERMAP日本研究では、減塩食群では普通食群に比べて男女とも約1g程度の減塩が実行できているとの報告があります。(常松典子.上島弘嗣.奥田奈賀子.他.減塩食実施者は通常の食生活の人に比べ食塩摂取量がどの程度少ないか?日循協誌.2004:39:149-156)

図2

図3

図4

図5

③塩分チェックと減塩との関連
組合員が自ら行う、簡易的な検査紙を用いた尿塩分チェックやみそ汁の塩分チェックは、30年以上前から医療福祉生協の健康チェックの基本となっています。医療福祉生協連調査では全国を北から10ブロックにわけて検討しています。地域別に塩分チェック者の割合と5年間の減塩の程度との関連を検討しました。男女別にみると男性では関連性が見られなかったのに対し(図6)、女性では塩分チェック者の割合が多い地域ほど有意に減塩がすすんだ地域が多くみられました(図7)。組合員による塩分チェックのとりくみは、女性にはインパクトを与えていますが、男性にはそうでもないということが判明しました。

図6

図7

(2)カリウム摂取量
①カリウム摂取量の減少
カリウムの排泄量は、1.88g/日でした。1995年から減少傾向が続き今回も止まりませんでした。減少傾向については医療福祉生協連による調査と国民健康栄養調査の結果は類似していました(図8、図9)。
ただし、図8のグラフにおける医療福祉生協連のカリウム摂取量は尿に排泄されたカリウム量=カリウム摂取量としているため、食べたものから摂取量を推計する国民栄養調査(秤量調査)とは乖離があります。カリウムについては摂取したカリウムの77-87%が尿中に排泄されますが、調理法によっても損失が多く、秤量調査では過大に見積もられやすいとされています。前回第5回24時間蓄尿塩分調査で比較検討したところ、秤量調査で推計したカリウム値に対し蓄尿調査で計測したカリウム値の比率は平均51.6%でした。つまり食べたものから推計するカリウム値の半分程度の数値しか蓄尿調査のカリウム値には表れないということが予測されます。

図8

図9

②カリウム摂取量と野菜摂取量の解離 国民健康栄養調査によると、ここ数年野菜摂取量が横ばいであるのに対し、カリウム摂取量は年々減少し、解離傾向が続いています(図10)。なお、医療福祉生協連調査では野菜の摂取頻度(4段階)の評価をしていて、摂取量については調べていません。女性についての結果ですが、「1日数回野菜を摂取する」が2.8%増加し、全体としても増加傾向が明らかであるにもかかわらず、カリウム排泄量は7%減少していました(図11)。1回に食する野菜の量が減少したのか、野菜以外のカリウム源が減少したのか、野菜自体のカリウム含量が減少したのかが考えられます。国民健康栄養調査によると、野菜の摂取量は変わっていないという事なので考えられるのは野菜以外のカリウム源が減少したか、野菜自体が変化してカリウム含量が減少した可能性があります。 国民健康栄養調査によるカリウムの食品構成比(H19)では、野菜が約3割と最も多いのですが、その他にも魚介類・乳類・果実類・穀類・イモ類・豆類など多品目にわたっています(図12)。和食離れとの関連が示唆されます。 また野菜自体の変化の可能性についても、カリウムは食品の加工過程で流失し易いので、安易な外国産野菜依存やカット野菜の流通などから十分ありえることです(表3)。

図10

図11

図12

表3

③女性では若い世代のカリウム摂取量が少なく、若年層ほど野菜の摂取量が少ないことが推測されます(図13)。

図13

④高齢の男性の単身者と若い女性の単身者のカリウム摂取量が特に少なく、こうした人たちが野菜を食べる機会が特に少ないと推測されます(図14)。

図14

< 本調査で特に明らかになったこと>
医療福祉生活協同組合員の保健行動調査として1984年から約5年おきに24時間蓄尿方式で塩分・カリウムの測定と、生活習慣や暮らし全般についての質問票による調査を繰り返して行ってきました。今回は第6回目として、調査結果の分析を通して次の点が明らかになりました。
① 喫煙率や肥満者の割合の低さなどから、国民健康栄養調査の対象者と比べてより健康志向度の高い集団といえますが、塩分やカリウム摂取量についてはその違いはかなり小さくなっています。従って、食生活に関しては、医療福祉生活協同組合員についての調査・分析ではありますが、わが国の一般的な住民の食生活を反映するものと考えます。
② 女性では薄味、減塩、塩分表示の具体的な意味を理解されている傾向があり、減塩行動実践者は非実践者より1.6g程度の減塩ができていることがわかりました。又塩分チェックに参加している割合が高い地域ほど前回比で減塩がよりすすみました。この点も女性のみでみられました。女性だけとはいえ、班での組合員自身による塩分チェックが長期的な減塩につながる事を始めて示しました。一方男性では年齢にかかわらずこれまでの減塩教育のあり方が余り効果的ではないことが判明しました。
③ カリウム摂取量は明らかに減ってきています。この点については国民健康栄養調査の結果とも一致しています。問題はその背景ですが、食事全体の「欧米化」や日本食離れが第一に考えられました。若い女性の単身者や高齢の男性の単身者では、野菜摂取量の減少を含め食事全体が「粗食」になっている事がうかがえます。さらに野菜自体の成分変化についても検討すべき課題だと考えました。

4.医療福祉生協連の今後の目標と課題・とりくみ
(1)目標について
①塩分摂取量6g未満
これまでは塩分8g以下を目標に減塩運動にとりくんできました。今回の調査で初めて平均が10gを下回ったことと、38.8%の組合員が8g以下の目標を達成していたことを受け、今後の目標を日本高血圧学会にならって6g未満に改訂しました。
②カリウム摂取量2.5g以上
カリウムの摂取量目標を2.5g以上とします。具体的には野菜の摂取量350g以上とし、食事全体のバランスを改善することもあわせて強調します。
(2)今後の課題
・塩分チェックをあらためて重視し、定期的な塩分チェックを地域に広げます。
・男性への減塩アプローチをいかにして進めるかを検討し、減塩につながる食生活習慣の啓蒙活動をすすめます。
・若い世代や単身者など野菜の摂取機会が少ない層に対して、食生活改善のための学習の機会やメニューなどの提供をおこないます。
(3)今後のとりくみ 各地の生協で、以下のようなとりくみをすすめていきます。組合員はもとより、広く地域の健康づくりに貢献することをめざします。
・減塩レシピコンテスト
・事業所や学校への出前教室
・企業や販売店へのわかりやすい減塩表示の申し入れ
・ヘルシーメニュー店のマップづくり
・地域購買生協や大学生協との協同の取り組み
・新たな食品表示制度下での栄養成分表示における食塩相当量表示義務化への働きかけ
健康日本21(第二次)では「社会全体として、個人の健康を支え、守る環境づくりに努めていくことが重要」だとした上で、「行政機関のみならず、広く国民の健康づくりを支援する企業、民間団体などの積極的な参加協力を得るなど、国民が主体的に行う健康づくりの取組を総合的に支援する環境を整備する」(厚生労働省告示第四百三十号)とのべられました。医療福祉生協がこれまでの組合員の取組の枠を越えて、広く地域全体の健康づくりに貢献していくことがこれまでにも増して期待されていると考えております。