郡山医療生協におけるFTF(ファーストトラックファイバー)あっせんの経過と医療福祉生協連の立場

2012年11月17日
日本医療福祉生活協同組合連合会

 2012年9月、福島県郡山市にある郡山医療生活協同組合は、放射能に汚染された福島県で暮らし続ける人々の健康上の不安や心配にこたえようと、FTF(ファースト・トラック・ファイバー:ミリオンテクノロジーズ社製)を桑野協立病院に設置し、被爆放射線量のモニタリングに活用し始めました。このことはマスコミによって大きく報道されましたが、一部報道に事実と異なる表現があったことが問題となりました。日本医療福祉生活協同組合連合会(以下、医療福祉生協連)が、そのFTFの選定・購入に関与したこともあり、FB(フェイスブック)やツイッターで多くの人から質問や意見が寄せられ、あるいは発信される事態となりました。
 そこで、寄せられた質問・意見を踏まえ、これまでの経過と現時点での到達点をまとめ、医療福祉生協連としての今回のFTFあっせんを巡る見解とさせていただき、FBは閉鎖させていただくことといたしました。今後も必要に応じて新たな情報や見解を発信して参りたいと考えておりますが、ご理解賜りますようお願い申し上げます。

1.郡山医療生協へのFTFあっせんの経緯
 郡山医療生協は、東京電力福島第1原子力発電所の事故以来、自らの事業と組合員をはじめ、福島の地で暮らすすべての人びとが安心して暮らし続けるために模索と実践を重ねてきましたが、その到達点として、FTFの設置とスクリーニング活動を位置づけています。
 郡山医療生協が公表した「ファースト・トラック・ファイバー(FTF)導入についての私たちの考え(郡山医療生協桑野協立病院ホームページ)では、その経緯と目的が以下のように述べられています。
・ 「本来、福島県民の健康を守るための除染や、食品検査体制の確立、人体の被曝状況の把握等については、東京電力や国が責任を持って進めるべきものであることを強く訴えたいと思います。しかし、現地で生活する者にとって、これらの対策は大変遅れているのが現状です。郡山医療生協は、この地に住み続けたいという立場から行政と協力し、自分たちにできる学習活動、空間線量測定活動、汚染マップの作成、食品放射線測定器の導入と活用、子供保養企画、ひまわり運動、避難者支援など全日本民医連、医療福祉生協連の支援に支えられて、手探りで、悩みながら、必死で活動してきました。FTFの導入もこれらの取り組みの一環です。」
・ 「私達は、WBCやFTFの事前調査、事前学習をやりその機能や違いについて理解したうえでFTFを導入しました。私達は、体内・体表面に関わらず人体の被曝状況(γ線)をスクリーニングする道具としてFTFを導入しました。今後長期間汚染地で生活していく上で、活用しだいによって有用な情報を提供してくれると考えました。簡便に短時間でスクリーニング出来ることから、組合員が班会やミニ学習会を通して生活に役立てていきたいと考えています。

 医療福祉生協連はこうした郡山医療生協の考え方を理解し、機器の紹介、あっせんを行ってきたものです。医療福祉生協連は、他の機種と比較してFTFには、
1)専門職員の配置が不要
2)検出時間が短時間で大勢の組合員のスクリーニングが可能
3)価格もWBCの半分以下
4)指向性を持ったシンチレーターがゲートの上下左右一面に配置されており
 全身から出てくるγ線を検出することができる の4点の特徴があり、郡山医療生協の使用目的に沿うものであると考えています。

2.あっせん後の経過
 9月20日、桑野協立病院でFTFの設置工事があり、ソフトの調整などの導入作業を経た9月24日マスコミ取材を受けるところとなりました。同日夜のNHKニュースで全国放送され、翌日の新聞にも記事が掲載されましたが、そこで「内部被曝検査用の機器を購入」と紹介されたことから議論が起こることになりました。
 まず、テクノヒル社(放射線測定器の供給事業者、東京都中央区)がホームページ上に「内部被曝用検査には使えない」「並行輸入業者が売った」「価格が高い」などと書き込み、ソーシャルネットワーク上でも様々な意見が出されることになりました。
 郡山医療生協はあらためて「ファースト・トラック・ファイバー(FTF)導入についての私たちの考え」をホームページに公表し内部被曝検査用ではなくスクリーニング用に導入したことを表明しましたが、東京大学の早野氏が桑野協立病院を見学した上で、「FTFは外部被曝検査用なのでスクリーニングにも使えない」との意見を自身のツイッター公表したことから、さらに話が拡大することになりました。しかし、早野氏の指摘は、「FTFが内部被曝『検査』装置の規格をクリアした機器ではない。」ということであり、そのことを理解したうえで「FTFは体表面と体内の被曝の状況を『検出』(スクリーニング)」するという郡山医療生協の使用目的とは、議論がかみ合わないまま経過しました。
 早野氏のツイッター読者は14万人以上いて非常に大きな影響力を持ち、会のFB上では、桑野協立病院に対してマスコミ発表記事の訂正や、FTFについての見解の修正を求める意見等が数多く書きこまれる事態が進行していきました。
 医療福祉生協連は、郡山医療生協がFTFの導入を決定するにあたっての情報提供や代理店との連絡調整などを行い、FTFをあっせんしました。FTFの機能についてはメーカー(ミリオンテクノロジーズ社)・代理店(株式会社ゾンデックス:東京都港区)並びに販売店(日本リビング株式会社:岡山県高梁市)と協議を重ねて信頼に足るものと評価しており、郡山医療生協へのあっせんも適正な取引であったと認識しておりますが、その導入によって生じた混乱に対して一定の説明責任があると考え、FB等への書き込みに対しては、事実に基づいてコメントを行って参りました。しかし、ソーシャルネットワーク上では、コメントの全部または一部がコピーされて独り歩きし、事実と異なるものも含めて広範囲に拡散する状況となってしまいました。
 こうした事態は、医療福祉生協連が意図したものと異なるものであり、何よりも「福島の地で暮らすすべての人びとが安心して暮らし続けるため」という、郡山医療生協のFTF導入の目的から離れてしまうものになってしまいます。そこで医療福祉生協連としてはFBを閉鎖し、新ためて経過と基本的な認識を本文書によって明らかにすることとしたものです。

3.その後の動き
 ネットワーク上でマスコミ関係者から、「事実と異なる報道を正すためにもあらためてレクチャーの場を持った方が良いのでは」という指摘を受けたこともあり、10月31日(水)に福島県政記者クラブでゾンデックス社及び日本リビング社がFTFの機能や評価に関する説明を行うことになりました。また、FB等で寄せられた様々なご意見・ご指摘の中には、製造元であるミリオンテクノロジーズ社の認識と異なるものが多々あるため、ミリオンテクノロジーズ社に対して公式な回答を要求していたところ、FTFの開発に携わってきたフェリンガー博士(ミリオンテクノロジーズ社副社長)が11月6日(火)に来日し、桑野協立病院でFTFのテストデータの分析を行った上で、「Depending on the contamination level, the FTF can detect external and internal radioactive contamination.(汚染レベルにより、FTFは体内及び体外の放射線物質汚染が検出できます。)」というコメントを発表しました。

4.医療福祉生協連の今後の対応
(1)FTFの価格について
 今回、医療福祉生協連が郡山医療生協にあっせん販売したFTFの価格は、テクノヒル社がホームページに書き込んでいる額と大きな乖離があります。郡山医療生協が設置したFTFは、標準の基本構成(ゲート左右に6個ずつ計12個のシンチレーター検出器搭載)に加え、上下1個ずつ(計2個)のシンチレーターを追加搭載しているほか、本体価格に一部システムプログラムの料金を含めていると聞いておりますが、この点についてはミリオンテクノロジーズ社及びゾンデックス社にさらなる説明を求めています。

(2)福島県内会員生協への支援
 郡山医療生協は、組合員を中心に広範な人びとのスクリーニング活動を行っていく予定です。また、郡山医療生協以外の福島県内医療福祉生協も、それぞれの活動区域を中心に、「福島の地で暮らすすべての人びとが安心して暮らし続けるため」の活動を続けています。医療福祉生協連はこうした活動を支持し、全国の会員生協とともに支援を続けて参ります。

以上