医療福祉生協の出番です 郡山医療生協小野支部・安積(あさか)支部:comcom12月号

小野支部

福島県田村郡小野町。郡山医療生協がある郡山市から東南の方向へ約40km。阿武隈高地の一隅にある人口1万人余の小さな町。その東方、直線距離で約35km地点に東京電力・福島第一原発があります。

2011年3月。東日本大震災。小野町は震度6弱。地震による被害は甚大でしたが、原発の爆発・損壊による放射能汚染に関しては、阿武隈高地という地形と気流などの関係によって、かろうじて救われ、日常生活を破壊されるという深刻な事態には至りませんでした。しかし、「核害のまち」のひとつであることに変わりはありません。

「ありゃりゃうまく動かないね」笑いがこぼれる「お元気クラブ」の指あそび

ここに17年の歴史を持つ小野支部があります。未曾有の災害を経験した今、「ともに生きていけるまちづくり」も視野に入れながら意欲的な活動を展開しています。

お元気クラブ

何年か前のことです。ゲートボールの常連だった男性が、姿を見せなくなってしまいました。奥さんが亡くなったために張り合いを失ったのか、すっかり外に出なくなってしまったというのです。「なんとか元気づける方法はないかねえ」。支部運営委員のみなさんが話し合いました。
「その人だけではなく、まちのお年寄りも元気にしたいよねえ」。話し合いは、徐々に広がりはじめました。そして、「私たちもミニデイケアみでなことやっぺ」ということになったのです。

支部運営委員のみなさんは早速行動を開始しました。他支部のとりくみを見学に行ったり、実現するための話し合いを深めたり…。そうした準備をすすめる中でいろいろなことが決まりました。月1回実施する。場所は、まちの保養施設「ゆーゆーこまち」にする。利用料に関しては、行政と掛け合って一定額の減免をしてもらう。当日は昼食と入浴をはさんで、1日ゆっくりしてもらう。みんなで楽しめるプログラムを用意する。送迎は組合員ボランティアがおこなう。この企画は「お元気クラブ」と命名する。

「お元気クラブ」の健康チェック。おしゃべりも楽しみのひとつです

支部の成長

月1回のミニデイケア「お元気クラブ」。実際にはじめてみると、そう簡単ではありません。利用料を減免してもらうためにおこなう毎月の申請、参加確認、送迎の手配、健康チェックの段取り、お茶とお茶請けの用意、お弁当の手配、楽しい時間を過ごしてもらうためのプログラムづくり、問題が起きないようにするための目配り、気配り…。数え上げればきりがないほどの仕事。それを支部の運営委員と組合員ボランティアのチームワークでこなしていくのです。

「私は『お元気クラブ』に来るのが何よりの楽しみ。いろいろな人と知り合えるし、話もできる。歌をうたえば、踊りもおどれる。おまけに、医療福祉生協のみなさんは、一人ひとりを大事にしてくれる。ありがたいです」
山あいの村。厳しい生活。その中で子どもを育て、今は一人でくらすというおばあちゃんの言葉。

小野支部のみなさんがいいます。
「大変な時もあるけど、みなさんが楽しみに待っていてくれるからね。できるだけ期待に応えたい。そう思うんですよ。その努力が、結果的にみれば、私たちの成長につながっている。そんな感じがするんです」

「みんなで楽しくがんばっぺ」小野支部・運営委員のみなさん

小野サポートセンター「えがお」

「お元気クラブ」が軌道に乗りはじめた頃、東日本大震災に見舞われました。想像を超えた大地震の恐怖、放射能に対する不安…。小野支部のみなさんは考えました。「住み続けられるまちづくり」と同時に「ともに生きていけるまちづくり」が求められているのではないか。いつ、どこで、何があっても、すぐに手をつなぐことができる。そんな拠点が必要なのではないか。その思いを強くしていたときのことです。格好の場所が見つかりました。かつてまちの中心地で書店を営んでいたという広い店舗を借りることができたのです。

支部長の千葉慶一郎さんがいいます。
「改装すればデイケアのような介護事業をやれるスペースが十分にあります。もちろん支部の拠点としても十二分の広さです。これから、どんなふうに活用していくか。支部運営委員会だけではなく、本部のみなさんとも話し合っているところです」

新しく生まれようとしている小野支部の拠点。さっそく名前を付けました。それが「小野サポートセンター『えがお』」です。ここを拠点に協同のあるまちをつくる。その思いが「えがお」という表現にこめられています。

これからが支部づくり

郡山から遠く離れた小野支部は、地域の保健活動やくらしの支え合いを中心に支部づくり、医療福祉生協づくりをすすめてきました。その自立性の高さが、ミニデイケア「お元気クラブ」をはじめとしたとりくみになっているのです。

運営委員の千葉連子さんがいいます。
「これからは各種インストラクターの養成にとりくみます。支部の活動を支える人材の育成。これを急がなければなりません。私自身は介護福祉士の試験に挑戦します。支部運営も大事ですけれど、組合員さんのニーズに応えられるような人材を育てないとね。医療福祉生協のあるまち小野。住みたくなるまち小野。これが私たちのめざすところです。高齢化にも震災にも放射能にも負けていられませんからね」

小野サポートセンター「えがお」は、どんな展開を見せてくれるのでしょうか。郡山から遠く離れた山あいで、小野支部の新たな挑戦がはじまります。

安積支部訪問

JR郡山駅の南西、約5km地点。郡山の市街地が田園風景に変わろうかというあたりに広がる住宅地。800軒を超えるという団地(分譲・戸建て)を抱えた一帯が安積支部の活動エリアです。小野支部取材の帰路、訪問させていただきました。

支部長の大橋幸雄さんがいいます。
「福島第一原発までの距離はおよそ60km。小野町からみれば倍も離れているのに、放射線量は小野町よりはるかに高いんです。1年半たった今でも数値はあまり下がっていません。にもかかわらず、除染作業は遅々としてすすんでいません。特に家庭レベルになると、ほとんど手つかずといってもいいのではないでしょうか」

運営委員のみなさんがいいます。
「原発事故と放射能汚染は、過去のできごとじゃないんです。私たちにとっては現在進行形なんです。しかも、いつ終わるのか、全くわからないんです。健康をつくる医療福祉生協として放置できません」

小野町では住み続けられるまちづくりが、そして、郡山市の安積支部では、目に見えない放射能とのたたかいが続いていました。そして、どちらも今こそ医療福祉生協の真価を発揮するとき、という強い思いで結ばれていました。

〈郡山医療生協〉
●設立年月日 1972年5月14日
●組合員数 2万6,933人
●出資金 8億2,754万9,000円
●支部・班数 26支部 382班
●事業所 病院1 介護関連11 訪問看護1 眼鏡店1

〈小野支部〉
●設立年月日 1996年3月9日
●組合員数 585人
●班数 4班
●運営委員数 16人

〈安積支部〉
●設立年月日 2001年11月18日
●組合員数 1,060人
●班数 6班
●運営委員数 10人

※2012年9月30日現在