ふれあい サロン「えみさんの家」 宮崎医療生協 西部支部 大塚・江南支部 小松支部:comcom9月号

「えみさんの家」

車で宮崎市の市街地を抜け、水量豊かな大淀川を渡り、しばらく走ると県営や市営の集合住宅、整然と区画された住宅街が現れます。1960年以降、年々増加する人口の受け皿として開発されたニュータウンです。その中にある大塚台西の一角。170戸を超える個人住宅と、12の集合住宅が建ち並んでいます。「えみさんの家」は、その中の1軒。高嶋恵美さんとご主人がくらす個人住宅なのです。ところが、毎月、第4金曜日になると、ふれあいサロンに早変わり。地域からいろいろな仲間が集まってきます。それまでは静かだった家の中から、楽しそうなおしゃべりや笑い声がこぼれてきます。始めてから11年目を迎えるという、「えみさんの家」の1日が始まるのです。

「きれいでしょ!」「えみさんの家」でつくられた七夕飾り。おおつか生協クリニックに届けました

第4金曜日

「えみさんの家」。キッチンも居間も特別に広いわけではありません。人が集まれるような余分なスペースがあるわけでもありません。にもかかわらず、10人を超える「世話人さん」が集まって来るのです。午前10時、玄関は履物であふれます。キッチンには昼食のための食材が所狭しと広げられます。料理当番が調理を始め、お互い身をよじるようにキッチン内を動き回りながら煮炊きをするのです。おしゃべりは勢いを増すことはあっても、おさまることはありません。その間に健康チェックも済ませます。

そうこうしているうちに、ご近所の長老たちが介護者とともにやってきます。ある人は施設から、ある人は自宅から。「えみさんの家」の昼食とおしゃべりが楽しみでたまらないのだそうです。やがて心のこもった手づくり料理がテーブルに並び、「お客さん」と「世話人さん」の昼食会が始まります。食事担当のベテラン、峯千津子さんが笑顔でいいます。
「毎回、献立を考えるのが私の仕事。みなさんでつくるのも、食べるのも楽しい。気がついたら10年、という感じですね。医食同源という言葉がありますけれど、ここでは食楽同源かな」

そして、食後は茶話会、学習会、手芸、ストレッチ、合唱、ウエス切り※1、古新聞を再利用してのゴミ袋づくり※2。自分たちで決めた月ごとのプログラムを楽しみ、3時には解散します。

※1:ホテルから払い下げてもらったシーツを切りわけ、病院での清拭に役立てています。
※2:古新聞を折り込んでつくるゴミ袋。病院での汚物入れとして利用しています。

「80歳過ぎてからお邪魔してね。あっという間に10年もういい年ですよ」「えみさんの家」の常連さん

身も心も普段着のままで

「えみさんの家」のまとめ役、理事の岩井ユキヱさんがいいます。
「10年前、私はこの一帯で活動していた西部支部の運営委員だったんですけど、その時、地域の人たちが集える場所があるといいねって話をしたんです。そしたら、恵美さんが、だったら家を使えばっていってくれたんです。何の迷いもなく…」

ご本人の恵美さんがいいます。
「それまで家で班会をやっていましたからね。集まる人数が班会より多くなるだけのこと。場所を提供するだけで何かがはじまる、何かが生まれる。そう思ったら楽しいじゃないですか。迷いなんてありませんでした」

岩井さんが続けます。
「声をかけたら、みなさんすぐに集まって、世話人を引き受けてくれました。それぞれに医療福祉生協のボランティアをやったり、地域でいろいろな活動をしたりしていた人たちだから、要領もわかっていたし…」

西部支部運営委員の野井麗子さんがいいます。
「それもあるけど、やっぱりあれよね。どこかに無理があったらここまで続かなかったと思う。恵美さんとご主人はいつも自然体。身も心も普段着のままで受け入れてくれるから、私たちも気兼ねなく集まれる。だから続くんですよ」

午後のプログラム。ウエス切りと新聞紙を利用したゴミ袋づくり。ボランティア活動も「えみさんの家」の特徴になっています

ひろがれ「えみさんの家」

10人を超える「世話人さん」で運営されている「えみさんの家」。その内訳は西部支部をはじめ、大塚・江南支部、小松支部に所属している組合員さんたち。まさに支部を超えた仲間で構成されているのです。そこには、この10年の間にとりくまれた支部分割という経過がありました。組合員による助け合いネットワークを広げよう、1人ぼっちの高齢者をなくそう、地域に楽しい集いをつくろう。そんな思いで開設した「えみさんの家」。当初は「おおつか生協クリニック」を拠点に活動する西部支部のとりくみでした。しかし、当時の西部支部は5千世帯を超える大所帯。支部分割もまたさし迫った課題になっていたのです。

岩井さんたちは「えみさんの家」を立ち上げ、その一方で支部分割にもとりくみました。結果、西部支部、大塚・江南支部・小松支部の3支部が誕生。「世話人さん」もそれぞれの支部にわかれて所属するということになったのです。

「いただきま~す!」楽しい昼食会。医食同源・食楽同源

岩井さんがいいます。
「でもね、『えみさんの家』は、支部を超えたかたちで続けようということになったんです。ここでの経験を生かして、それぞれの支部に持ち帰り、第2、第3の『えみさんの家』づくりにつなげていければ、その方がいいでしょ」

遠く離れた大淀支部から参加しているという廣井寿美子さんがいいます。
「私たちもここを参考にして、地域づくり、まちづくりをすすめていきたいと思っているんです」

この間の経過もあって、支部を超えた自立的な活動をしている「えみさんの家」。地元3支部に限らず、多くの支部から地域づくり、まちづくりの「かたち」として注目されているのです。

「えみさんの家」の高嶋恵美さん。この笑顔がみんなを惹きつけます

恵美さんのひと言

「私は裏方。表には出ません」
控えめに語る恵美さんは元気な86歳。その恵美さんがぽつりと…。

「主人が病気で入院した時、1人じゃ大変だろうって、みなさんが支援してくれたんです。助かりましたよ。いざという時に『助けて』といえる。近くに支援してくれる人がいる。これこそ『えみさんの家』がめざす地域の安心づくり。それを自分で体験しちゃった」
フフフ…と笑った恵美さんの顔がとても印象的でした。

この先10年

「えみさんの家」の未来についてお話をうかがいました。みなさんが異口同音に答えます。
「あと10年は続けます。とはいってもその頃は、私たちがお客さん。その日のために、もうひとがんばりしなくちゃね」

そこへ元気なひと言が。
「何いっているの。私は生涯現役だよ!」

声の主にみんなの拍手。やがて、笑い声がはじけ「えみさんの家」から地域へと広がっていきました。

10年の歩みが丁寧に記録されています

 〈宮崎医療生協〉
●設立年月日 1990年1月19日
●組合員数 4万6,575人
●出資金 5億817万円
●支部・班数 17支部 335班
●事業所 病院1 医科診療所4 介護関連8

〈西部支部〉
●設立年月日 1992年6月1日
●組合員数 2,646人
●班数 18班
●運営委員数 8人

〈小松支部〉
●設立年月日 2003年10月8日
●組合員数 1,899人
●班数 16班
●運営委員数 10人

〈大塚・江南支部〉
●設立年月日 2007年4月25日
●組合員数 2,369人
●班数 31班
●運営委員数 12人

※2012年3月31日現在