わが支部自慢の入浴班会 富山医療生協 和合八重津支部:comcom8月号

和合八重津支部と和合ローズ支部

和合八重津支部・四方荒屋班の脳いきいき班会。これから「ふる里昔話」を大きな声で音読します

急峻な山間部を走りぬけてきた神通川(じんづうがわ)は、富山市内に入ると、川幅を一気に広げ、富山湾に滔々(とうとう)と流れ込んでいきます。その河口域の西側、かつて和合町(1960年、富山市に編入されたために町名は消失)といわれた地域で活動を続けてきたのが和合支部。3年前の2009年、以前からの懸案であった支部分割をおこない、和合八重津支部と和合ローズ支部という2つの支部になりました。

四方(よかた)

音読のあと、近くの公園で「輪・和・わ」をつくった四方荒屋班のみなさん。見上げれば青い空でした

和合町時代の繁華街。それが四方(よかた)。今もその名をとどめている海沿いの地域です。四方の人々は、漁業と売薬を生業とし、お互いに寄り添い、助け合いながらくらしていました。当時は長屋なども多く立ち並んでいたといいます。

そのくらしが一変します。大火です。まちなみの一角からあがった火の手は、折からの海風にあおられ、またたく間に燃え広がり、家々を焼きつくしました。焦土と化した四方は、防火をテーマにした区画整理をおこないました。広い道路が確保され、家々も適度な間隔を保って建てられたのです。長い年月をかけて平穏なくらしを取り戻しました。しかし、その一方で人口の都市集中、地方の深刻な過疎化といった時代の波がこの一帯にも確実に打ち寄せていたのです。

銭湯が消えた

銭湯の跡地。今は面影もありません

今から10年ほど前のことです。地域の組合員から和合支部(当時)にひとつの相談が持ち込まれました。四方にあった3軒の銭湯が次々と閉鎖に追い込まれ、とうとう最後の1軒も営業を停止。2kmも離れている銭湯にはとても通いきれず、「入浴困難者」が生まれている。なんとかならないか…、というのです。改めて地域内で営業している銭湯の所在を確認すると、3軒ありました。「ファミリー銭湯くさじま」「遊楽湯」「鯰(なまず)温泉」。しかし、どの銭湯も四方から2km、3kmと離れています。とても高齢者が歩いて行ける距離ではありません。

運営委員の塩谷良子さんがいいます。
「当時、市から高齢者向けに入浴券が提供されたんだけど、銭湯がないんだからね。利用のしようがないわけ。これはなんとかしなければということでね、支部で話し合ったんです」

見えてきたもの

四方のまちから銭湯が消えた。この変化から浮かび上がってきたのは消費社会・車社会の陰に隠れていた高齢者のくらしぶりです。車がなければ入浴ができない。それだけではありません。遠く離れた大型スーパー。買い物に行くこともできないのです。頼りにしていた近所の小売店は、すでにその姿を消してしまいました。2世代でくらしている高齢者の問題も見えてきました。若い世代のライフスタイルに合わせて風呂に入るとなると、どうしても遅い時間になる。高齢期にあった早寝、早起きの生活をしたいが、できない。それがストレスになる…。くらしの中に「孤立」「孤独」「遠慮」といった「影」がひろがっていたのです。

支部は行動する

「ファミリー銭湯くさじま」の内部。ここで入浴班会が開催されます

さっそく、地域の組合員から情報を集めました。その結果、銭湯がなくなり困っているという人たちが大勢いることがわかりました。ちょっと声かけをしただけで20人を超えたのです。そうした状況のもとで、支部運営委員会は議論を重ねました。

「車はどうする? 入浴時間帯が昼間ということになると、あいている車がない。かといって小さな車では何往復もしなければならない」
「運転手はどうする? 昼間だと時間をつくるのが難しい」
「週1回は実施する必要がある」
「いや、支部の力量を考えたら月2回が限度だ」
「多すぎて1回では送迎できないから、グループ分けする必要がある。待ち合わせ時間と場所もグループごとに決める必要がある。連絡網も必要だ。参加確認はどうする?」
「なんといっても高齢者。送迎中、入浴中、いずれの場面でも事故を起こすわけにはいかない。それなりの体制を組まなければ…」

実行するとなれば、「責任」が伴うことになるのです。

入浴班会誕生

「入浴班会へいってきま~す!」入浴班会へ出発。楽しい班会とお風呂が待っています

議論が白熱するなかで、ひとつのアイデアが生まれました。

「これは医療福祉生協のとりくみだから、ただの入浴支援ではなく入浴班会という新しい班会にしたらどうだろうか。本部・組織部と相談してマイクロバスを出してもらったらどうだろう」

入浴班会。このアイデアで視界が開けました。組合員が地域の人に声をかける。入浴と同時に交流を深め、医療福祉生協を知ってもらう。健康チェックなどを通して班会を体験してもらう。そうした活動を医療福祉生協のマイクロバスを活用しておこなう…。これまで入浴をなんとかしなければとあがいていた討論。それがすっきりと整理されたのです。そして、マイクロバスが確保され、運転は男性陣が都合をつけ合い、参加確認や連絡は2人1組の担当者が輪番制でおこなうことになり、ユニークな「入浴班会」がスタート。今から10年前のことです。

そして10年

入浴班会は、支部分割後、和合八重津支部に引き継がれました。お隣の和合ローズ支部との協力関係を保ちながら、今も続けています。入浴班会は毎月第1と第3の水曜日。正月も暮れも休みません。数遊びではありませんが毎年24回、10年で240回。1回の参加者を12人と少なく見積もってみても、延べ人数でみれば2880人。銭湯消失という地域の変化に対応した立派な支部活動です。入浴班会の効果は、「入浴の喜び」だけにとどまらないのです。日を追って切り離されていく地域の人間関係を、入浴というキーワドでつなぎ止めています。地域に密着した活動で医療福祉生協を地域にひろげています。入浴班会の10年間。それは支部の価値を証明する年月でもあったのです。

タスキをつなぐ

脳の活性化には健康づくりも欠かせません

和合支部時代に生まれ、和合八重津支部に引き継がれた入浴班会。これからも続けていくとなれば、当然出てくるのが後継者問題です。

理事の矢後正孝さんがいいます。
「“健康で長生き、力を合わせて生きていく”。この思いをぶつけていけば、次の担い手はきっとできると思います」

運営委員のみなさんが、うなづきながら聞いています。ですが、タスキをつなぐために残された時間はそう多くはありません。「後継者をつくったよ」という和合八重津支部からのニュース速報を、期待して待っています。

〈富山医療生協〉
●設立年月日 1962年9月30日
●組合員数 2万5,732人
●出資金 8億4,655万円
●支部・班数 32支部 280班
●事業所 病院1 医科診療所2 介護事業所5

〈和合八重津支部〉
●設立年月日 2009年3月29日
●組合員数 715人
●班数 6班
●運営委員数 8人

※2012年3月31日現在