夢を叶えた柿の木ハウス 東京保健生協 学園通り支部:comcom4月号

東京都練馬区

かつて江戸市中にダイコンやゴボウなどの農産物を供給し、いわば近郊農村として生計を立てていた練馬区。しかし、当時の田園風景はいつの間にか姿を消し、わずかな面影を残すだけとなりました。都市部への人口集中が続く中で、住宅街へとその姿を変えたのです。東西約10km、南北は4km、ところによって7km、総面積は約48km。これが練馬区のサイズ。ここに70万人を超える人々がくらしているのです。そして、現在、65歳以上の人々が区の人口に占める割合は約20%。高齢化率は年々上昇しています。

学園通り支部の源流

時機にかなった学習もしっかりやります。こんにゃくづくりを始める前には放射能汚染について学びました

都心近郊の住宅地として人口が増え続けてきた練馬区。しかし、その一方で「医療過疎」といわれるような状況が続きました。医療機関は都心部に近い区域に集中し、練馬区民の「安心」とはほど遠い状況が続いたのです。そんな中で、安心して利用できる診療所がほしいという運動が広がりました。運営委員の藤田明子さんがいいます。
「いろいろ勉強もしましてね。結局、組合員が主役になれる医療福祉生協がいいということになったんです。練馬区独自で立ち上げるのか、他の方法があるのか…。模索を続ける中で、文京区を中心に活動していた東京保健生協への加入を決めました。練馬区での診療所づくり、支部づくりが本格化したのはそれからですね。今から20年ほど前のことです。現在は練馬区だけで12支部あります。私たちの学園通り支部もそのひとつということです」

支部長の金子浩一さんが続けます。
「地域住民の自発的な要求運動が練馬区の出発点。ですから、主体性もあるし、意欲もあるという人が多い。それが、この学園通り支部でも受けつがれ、元気の素になっています」

地域とつながる

「おいしいにんじんのチヂミができたよ〜♪」毎週火曜と金曜に実施している「みんなでランチ」。準備中のひとコマ

学園通り支部は、西武池袋線・大泉学園駅の北側に広がる住宅街の中で活動しています。細い一方通行の道路が交差し、家々が密集し、たくさんの人々がくらしています。学園通り支部は自分たちのまちを見つめ、情況を調査・分析しました。その結果、様々なくらしが見えてきました。

孤独や寂しさと向き合っている高齢者がいます。不安を抱えたままの障がい者がいます。閉じこもりがちな子どももいます。そして、気づいたことがあります。それは、地域の中に「悩みを語り合える場所」「ほっとできる場所」がとても少ないということでした。支部のみなさんは行動を開始しました。「ほんわかルーム」をスタートさせたのです。地域の集会所などを活用して「ほっとできる。くつろげる。語り合える」、そんな「場づくり」をすすめたのです。運営委員のみなさんがいいます。
「私たちの思いをかたちにしたかったんです。このとりくみが現在のたまり場『柿の木ハウス』につながりました」

仲間をふやす

「へえ!こんにゃくになった!」「だってこんにゃくだものアッハッハ」5年の歳月をかけて育てられたこんにゃく芋

108人、134人、120人…。学園通り支部は、毎年100人を超える仲間ふやしをしています。どんなとりくみをしているのですか、という問いに藤田明子さんが答えてくれました。
「医療福祉生協は『ためになる』『役に立つ』『面白い』。これがわかってもらえれば仲間はふえます。6割以上の人が、班会活動に参加したり、ふれあったりする中で組合員になっています」

学園通り支部は、出会い・ふれあいをたくさんつくるために、お知らせ活動を重視しています。機関紙、支部ニュースの100%手配り配付はもちろんのこと、まちかど健康チェックをおこなう時には毎回千枚のチラシを地域に配付しているのです。自分たちの活動計画をきちんと地域に発信し、参加を募る。そして、計画を実践したら評価を確認し、問題点があれば次に向けて解決する。この積み重ねが100人を超える仲間ふやしにつながっているのです。運営委員のみなさんが笑いながらいいました。
「だから、特別なことをやっているわけではないんですよ」

「こんなかわいいお客さんも参加します」「みんなでランチ」の後は、歌声喫茶に早変わり。みなさんが心待ちにしている時間です

ウエルカムパーティ

これが「柿の木ハウス」の「みんなでランチ」

すっかり定番となったウエルカムパーティ。新規加入者とお迎えする組合員の集いです。参加者は毎年70人を超えるといいます。名物は「班会紹介」。不用になった衣類を持ちよって作るリサイクル手芸の「もったいない班」、のど自慢をする「カラオケ班」、緑豊かな樹林公園で健康づくりと地域とのふれあいをめざす「スロージョギング班」。映像と実演で支部の班活動が次々と紹介されます。運営委員のみなさんがいいます。
「自分が参加したい班活動を探すもよし。これをヒントに新しい班活動を生み出すもよし。せっかく組合員になっても自分の居場所がなければつまらないでしょう。まずはきっかけづくり。その次は居場所づくり、班づくり。ウエルカムパーティは歓迎するだけではなく、支部の新しいエネルギーを見つけだす場でもあるんです」

誕生「柿の木ハウス」

表に掲示される看板。中で何をやっているかがご近所の方にもわかります

閑静な住宅街の一角。庭に1本の柿の木、そして、2本、すっくと伸びた白樺のある家。その入り口に「柿の木ハウス」と書かれた大きな木製の看板。学園通り支部が切望していた「たまり場」です。今は所沢に転居した家主さんが支部の熱意にほだされ、空き家の活用を認めてくれました。おかげでやっと積年の夢がかないました。学園通り支部では早速、「柿の木ハウス」の運営にあたるための世話人会を構成しました。「ほんわかルーム」などの活動経験を通して積極的に手を挙げてくれた組合員が17人。立派な世話人会ができました。世話人のみなさんがいいます。
「ここを地域の人たちの交流の場、支えあいの場にします。みんなで食事をしたり、おしゃべりしたり…。やっぱり、自分たちの居場所があるって素晴らしいですよ。私たちはね、ここへ来ると1歳ずつ若くなる、そんな気がします。だって、本当に楽しいことがいっぱいなんだもの」

2011年秋からの準備期間を経て、今年の正月から本格的に活動を開始した「柿の木ハウス」。毎週火曜と金曜に実施している「みんなでランチ」をはじめ、様々な催しで「たまり場機能」を発揮しています。

これからのこと

「支部課題ということでいうと、ここ1か所で十分というわけにはいかないんですね。地域は広いですから…。まずは、ここをしっかり運営すること。そして、経験を積んで、地域の中に複数のたまり場を展開する。そんな流れになるといいなあと思っています」

学園通り支部の挑戦はこれからも続きます。

〈東京保健生協〉
●設立年月日 1961年8月16日
●組合員数 4万8,762人
●出資金 20億710万6,000円
●支部・班数 39支部 364班
●事業所 病院2 医科診療所10 歯科診療所4 介護・福祉関連15

〈学園通り支部〉
●設立年月日 2003年7月1日
●組合員数 1,101人
●班数 17班
●運営委員数 12人

※2012年2月20日現在