医療福祉生協の理念をつくろう(14) 自らの役割をどう規定するかで活動の質が変わる:comcom4月号

医療福祉生協連専務理事 藤谷惠三

私たちの周りには、高い理念や目的を定めることによって事業の質を変えた例がたくさんあります。

例えば、鉄道会社が自らを「私たちは、線路を敷いて列車を走らせる会社です」と規定するのと、「私たちは、大事なお客様が安全に目的地に行けるよう最大限のサービスを提供する会社です」と規定するのとでは事業の質に大きな違いが出てきます。

前者は、できるだけ多くの路線をつくって、たくさんの列車を走らせることが会社の目的になります。ところが後者では、鉄道は目的を達成するための手段となり、本来の目的である「安全に目的地に行ってもらうこと」を達成するために必要であれば鉄道だけでなく、飛行機を飛ばすことも視野に入れることができるでしょう。

また、職員の仕事に対する使命感についても、前者は「鉄道を安全・確実に走らせること」となるのに対し、後者では「大事なお客様に快適な旅をしていただくために必要なことはすべてやる」となります。これが「理念の力」です。

 

私たち医療福祉生協は、社会の発展や変化の中で自らの役割に関する規定を変えてきた歴史を持っています。

終戦間もない時期の医療福祉生協の役割に関する文書では、「医師のいない農村部の医療を担う」「貧しい人々の医療機関」などの規定が目立ちます。その後、1961年に国民皆保険制度が成立すると、曲がりなりにも保険証があれば誰もが医療機関にかかることができるようになりました。そうなると医療福祉生協の役割も、「組合員が病気になった時のために医療機関を持っている」という規定から、「組合員の健康を守る」「健康な組合員が多数を占める組織」という記述に変わり、医療機関を持つことは、組合員の健康を守るための一つの手段という側面が強くなってきました。

さらに、1970年代以降、公害問題などがクローズアップされ、個々の力だけでは健康が守れないということが明確になるにつれ、「健康なまちをつくる」「明るいまちをつくる」などの役割を重視する医療福祉生協が増えてきます。

現在では、多くの生協が「安心して住み続けられるまちをつくる」「健康を守る。平和を守る。」ことなどを自らの役割として掲げています。

 

これらの歴史は、毎日の活動や事業分野は同じように見えても、その目的や使命・役割をどう定めるかで活動の質や広がりが大きく変わることを示しています。

現在すすめている理念づくりは、大きく変化する社会の中で、より多くの人たちが医療福祉生協の“わ”に入れるような使命を高く掲げるためのものです。