支部を育てる 津山医療生協(岡山県)三浦・加茂支部:comcom12月号

山あいの集落 三浦

津山市にある津山医療生協・平福診療所からおよそ20km。市街地を離れ、やがては一級河川・吉井川へと注ぎこむ加茂川沿いに北上していくと、周囲は山里。山懐に抱かれた小集落の点在。のどかな風景が広がります。

三浦・加茂支部の拠点、三浦地区もそうした風景の一角にあります。四方を山に囲まれ、それぞれの家が軒を寄せ合うようにしてくらしています。その戸数は、およそ100戸。高齢化率は43%。住民の半数近くが65歳以上ということになります。かつては林業と農業で生計を立てることが可能でした。しかし、時代とともに地域の中で生計を立てることが難しくなりました。基幹産業だった林業が衰退し、現金収入の道を断たれ、わずかばかりの田畑から収益を上げることも難しかったからです。そんな中で育てた子どもたちは、仕事を求めて都会へと向かい、それぞれに生活の根を下ろしました。高齢化率43%は、巣立つ子どもたちを見送った、親たちの現在なのです。

支部づくりは地域づくり

寝たきり防止体操

寝たきり防止体操

高齢者世帯が増えていく三浦地区。それだけではありません。施設への入所、あるいは逝去といった事情で「住む人のいない家」も少しずつ増えています。このままでは三浦地区でくらし続けることができなくなるのではないか…。日ごとに強くなっていく危機感。そんな中で「健康づくりをしよう」「寝たきりにならないようにしよう」「困った時は、お互いに助け合おう」「いつまでも住み続けられる地域づくりをすすめよう」といった声が大きくなり、2009年3月、待望の三浦・加茂支部が誕生したのです。支部づくりに奔走した宰務美恵子理事がいいます。
「津山にある平福診療所までは20km。日常的に利用できる距離ではありません。支部づくりは困難でした。私たちは地域の差し迫った課題である健康づくり、地域づくりを柱にすえて声をかけたのです」

はつらつ班

三浦・加茂支部は班づくりにこだわりました。希薄になりかけていた「人づきあい」をなんとか再生したいと考えたからです。現在は100世帯にも満たないといわれている三浦地区の中で55の組合員世帯をつくり、6つの班に集う30人の「人づきあい」を再生しました。その中のひとつが「はつらつ班」。仲良く健康づくりに励み、趣味の手芸やおしゃべりを楽しんでいます。班のみなさんがいいます。
「そりゃ、個人的なつきあいはあったけどな、こうしていろいろな人が寄り合うことはあまりなかった。班はいいよ。つきあいは広がるし、楽しみは増えるし、医療や福祉の話も聞けるから勉強になるし…」

医療福祉生協の「班」。それは目的をもって、主体的に参加した人たちによる新しい人間関係づくりです。「はつらつ班」のみなさんは今までの「近所づきあい」とは一味違う「新鮮さ」を楽しんでいるようです。

健康づくり

支部の誕生とともに始まった楽しい食事会

「みんなで食事をするのが何よりの楽しみです」支部の誕生とともに始まった楽しい食事会

三浦・加茂支部のもうひとつのこだわりが「寝たきり防止体操」。ゆっくりしたリズムで歌を歌いながら、ストレッチや筋トレを組み合わせて動きます。支部結成以来、毎週実施しているこの体操。今ではすっかり定着して、毎回15人から20人が参加しています。組合員さんが笑いながらいいます。
「この辺は、坂ばっかり。年をとるとこの坂がきつい、きつい。しっかり体操しておかないと、そのうち隣近所にも行けなくなる。その先にあるのは閉じこもりと寝たきりだけ。そんなふうになったら困るからね、一生懸命やるしかないわけよ」

笑顔に隠された胸のうちが痛いほどわかりました。実際、「寝たきり防止体操」に出てこられない人たちは、すでにそうした現実と向き合っているのです。

理事の宰務美恵子さんがいいます。
「毎週やっていると効果も出るし、喜ばれています。この体操は情報交換の場にもなるんですよ。出てこない人がいると、子どものところに出かけたとか、体の具合が悪くて寝ているとか…。そういった事情がすぐにわかる。一種の見守り合い効果ですね」

これからの課題

高齢化社会の現実に直面している三浦地区。支部の存在価値とその役割がきわめて明瞭に見えてきます。しかし、現状では、三浦地区からもう一歩外に踏みだすという活動ができていません。運営委員の安藤敏顕さんが辛口のひと言。
「たしかに支部ができたことの意味は大きい。しかし、今のままだと小さくまとまった仲良しクラブみたいな気がする。これからは三浦地区以外の住民の声にも耳を傾けて、その要求をくみ上げ、応えていく。そういう力量をつけていかないとな。そのためには、自分たちだけで活動を背負わない、新しい担い手さんをもっともっと増やす。これが大事じゃないかな」

誕生して間もない三浦・加茂支部。運営委員のみなさんは、それぞれに次の課題を見据えていました。

これからの夢

佐々木正昭専務理事から事業所の新築移転の話を聞く支部のみなさん。津山のまちからは遠いけれど「心はひとつ」なのです

運営委員のみなさんに「夢」を語っていただきました。みなさんに共通していた夢は2つありました。そのひとつは、健康づくりをベースにした地域コミュニティーの再構築と活動エリアの拡大。もうひとつは施設づくりへの挑戦です。運営委員の安藤利子さんがいいます。
「やはり、この地域に高齢者のための施設をつくりたいですね。国民年金程度の収入でも安心して入所できる。必要な時にケアが受けられる。元気な時には家に戻れる。地域の人が気軽に出入りできて、今までのつきあいが続けられる…。そんな施設ができたら、と思いますね。生まれ育った土地で、ともに生きてきた人たちに囲まれながら過ごしたい。これは贅沢でも何でもない。当たり前の願いです」

みなさんの夢は、まだ具体的な像を結んではいません。しかし、それは地域の現実から生まれた切実なものでした。それだけに夢を夢で終わらせるわけにはいかないのです。理事の宰務美恵子さんがいいます。
「夢を実現するために急いで組合員を増やす…、というより、人と人の結びつきを大事にしながら丁寧に活動を広げていく。そうやって本物の力をつけていく。それが大事だと思う。のんびりしてはいられないけれど、あわてずに。私たちの支部も、これからが本番だよね」

住み続けられる地域づくりを標榜して山里に生まれた三浦・加茂支部。これからどんな地域連帯を構築していくのか。そして、どんなふうに夢実現への道を歩むのか。しばらくは目が離せません。

〈津山医療生協〉
●設立年月日 1980年8月12日
●組合員数 6,960人
●出資金 8,500万円
●支部・班数 4支部 68班
●事業所 医科診療所1 介護関連4
〈三浦・加茂支部〉
●設立年月日 2009年3月15日
●組合員数 105人
●班数 6班
●支部役員数 6人
※2011年9月30日現在