支部の再生でまちを変える 栃木保健医療生協 那須支部:comcom8月号

那須町

栃木県宇都宮市から70kmほど北上すると、那須の山裾に広大で緑豊かな林野がひろがっています。那須高原です。那須町はその高原の中にあり、人口はおよそ2万7千人。那須山塊の主峰・茶臼岳の麓に旧い温泉郷があり、少し下ると終戦直後、開拓されたという人里があります。そこには開拓に入った人々のくらし、別荘を得た人々のくらし、ペンションやコテージなどを営む人々のくらしが混在しています。さらに下ると、黒磯の駅へと通じる那須街道沿いにレストランをはじめ、おしゃれな店が並び、その先の平地にはまちなみが形成され、周囲には稲作などの農耕をする人々のくらしもあります。…と、ここまで書けばお分かりのように、様々な「くらし」を内包したまち、それが那須町なのです。

つつじの名所、那須八幡でのウォーキング交流会。活動を再開した那須支部は縁の下で本部主催のイベントを支えました(写真提供・栃木保健医療生協)

那須支部

那須町に支部が誕生したのは1991年。今から20年前のことです。医療過疎地といわれた那須町で、健診活動をするための拠点としてつくられたのです。しかし、診療所は遠く離れた宇都宮。医療福祉生協の事業と日常的にかかわることができない那須町に支部活動を定着させるのはとても困難なことでした。何度か活動停止状態に陥り、再び立ちあげては、また停止する…、といった歴史が続きました。しかし、那須町で医療福祉生協の組合員になり、ともに力を合わせて健康をつくる、人間らしいくらしをつくるという経験をした人々は「医療福祉生協の灯」を消しませんでした。

運命の出会い

再起して2年目を支える新運営委員のメンバー

支部ができたころからの組合員で、ペンション野花を営む高橋さんご夫妻は、なんとか医療福祉生協の活動を再開したいと考えていました。ある日、心躍る出来事がありました。「念ずれば通ず」とはこのことでしょうか。城南保健生協(東京都)の組合員でペンション野花の常連客だった人が、看護師として働いていた奥さんとともに那須町に移住する決心をした、と打ち明けてくれたのです。それが現支部長の森四郎さん、現運営委員の森泰子さんご夫妻。高橋さんたちは手を打って喜びました。
「さっそく那須町の支部活動について相談しよう!」

森四郎さんがいいます。
「本当は妻と2人でゆったりとした時を過ごそうという計画だったんです。那須の自然の中で、好きなことをやりながら…」

ペンション野花の高橋絹枝さんがすかさずいいます。
「その味を覚えたら、人間、ものぐさになって活動しなくなるからね。間髪をいれずに相談をもちかけたんですよ。鉄は熱いうちに打てっていうでしょ!」

支部活動、再開

熱の入った討論が続く支部総会

那須支部は新支部長に森四郎さんをすえて活動を再開しました。活動停止状態だった支部の組合員総数は50人弱。1日も早く100人の支部にしよう。これが運営委員会の合言葉になりました。ですが、数だけ増やすといったとりくみではなく、50人弱になってしまった組合員とのつながりを改めて確かなものにし、そこに依拠しながら丁寧に仲間ふやしをしていく、という原則を堅持しました。同時に班づくりに着手し、班活動をスタートさせるという、医療福祉生協づくりのもうひとつの原則にもこだわりました。月1回という定例の運営委員会も再開しました。「健康とくらし│那須版」という支部ニュースの発行も始めました。森四郎さんがいいます。

「宇都宮の診療所をどう利用していくかという問題も大事ですが、それだけではなく、安心してくらせる那須町をつくる、この点にみんなの力が結集できたらと思っているんです」

様々な「くらし方」が混在する那須のまちで、人と人をつなぐ医療福祉生協の活動が再び始まったのです。那須高原の空の下に「青空健康チェック」の幟旗がひるがえる日は、そう遠くないかもしれません。

お元気ネット

お元気ネットの活動。ドア・ツー・ドアの送迎は大助かりと感謝されています

森さんを中心に那須支部の活動が再開した頃、「お元気ネット」という活動も本格化していました。前支部長の灰野一男さんが「那須から孤独死は出さない」という強い思いで種をまいた「まちの助けあい運動」です。灰野さんがいいます。

「私が体調を崩して那須のまちを離れることになり、みなさんにはご迷惑をかけてしまいました。しかし、私の思いは現支部長はじめ、みなさんに引き継いでもらい、やっと形になりました。うれしいです」

「困った時はお互いさま」という関係を大切に育てていこうという思いで始ったこのとりくみ。しかし、実際にサポートを始めると、あれこれの「お礼」をいただくことになります。すると、「お互いさま」といいながら、かえって気をつかってしまうという「厄介な問題」が発生します。そこでメンバー制にして、ルールをつくり、「お元気ネット」内だけで通用する金券「おげんきカード」を発行することにしたのです。メンバーには、このカードを購入していただき、サポーターには事務局精算で規定の料金を支払います。事務局長の今岡憲治さんがいいます。

「入会してもらう時、その人と協力して、周辺に3人のサポーターをつくるんです。そして、お願い事ができたら、本人がその人たちに直接頼むわけです。その3人のうち都合のつく人がサポートに行くということになります。事務局が人の手配をするということはほとんどありません。3人とも都合がつかないといった時には事務局に相談がきたりしますが、それはめったにありませんね。『お元気ネット』は、くらしのサポートを通じて人づきあいをつくる、これを大事にしたいんです。…やはり、通院や買い物の送迎依頼が圧倒的に多いですね」

「お元気ネット」は、地域の新しいコミュニティー。サポーターと利用者が会員となり、新しい「つきあい」を生み出しているのです。メンバーは80人を超えました。

夏めぐり来て

「お元気ネット」の利用券。お手伝いしてもらったら、この券を既定の枚数だけ渡します

支部活動を再開して2度目の総会がペンション野花で開かれ、活発な討論がおこなわれました。そして、
●100人の支部をめざすこと
●班会を通して班をつくれる人をふやすこと
●福島原発による放射能汚染対策を具体化し、医療福祉生協らしさを発揮すること
●宇都宮と那須の距離感を埋めるため、診療所などの施設見学を実施すること
●「お元気ネット」との関係性を深め、「健康で安心のまちづくり」をすすめること
などが確認されました。

今は組合員50人の支部。ですが、那須のまちには無くてはならない支部です。今後の健闘に期待を寄せたいと思います。

〈栃木保健医療生協〉
●設立年月日 1975年6月22日
●組合員数 1万2,398人
●出資金 3億3,528万円
●支部・班数 16支部 78班
●事業所 医科診療所2 介護関連7

〈那須支部〉
●設立年月日 1991年12月10日
●組合員数 50人
●班数 2班
●運営委員数 5人

※2011年5月31日現在