「介護サービスの基盤強化のための介護保険法の一部を改正する法律案」に対する見解

2011年6月6日
日本医療福祉生活協同組合連合会 常任理事会

 政府は4月5日に「介護サービスの基盤強化のための介護保険法の一部を改正する法律案(以下、改正案)」を国会に上程しました。改正案は2010年11月30日に社会保障制度審議会介護保険部会が発表した「介護保険制度見直しに関する意見(以下、意見)」をもとにしています。意見で示された様々な利用者負担増案に対し、多方面から反対意見が表明されました。厚生労働省は2010年12月24日にケアマネジメントへの自己負担導入などの負担増案を盛り込まない「介護保険法等を改正する法律案のポイント」を発表し、3月11日の閣議決定を経て、法律案が国会に上程されました。
 日本医療福祉生活協同組合連合会(略称:医療福祉生協連)は改正案に対して、介護を必要としている人が必要な介護を受けることができることを基本とし、介護保険利用者の満足度を高める観点から以下の見解を表明します。

○介護予防給付の再編について
 改正案は、現在の要支援者に対する介護予防サービスを見守りや配食等を含めた「介護予防・日常生活支援総合事業」へ切り替え、市町村の裁量で実施可能としています。この仕組みでは要支援として介護保険給付を受けることができた人の中に、市町村の判断で給付を受けることができなくなる人が発生する恐れがあります。また、日常生活支援総合事業の内容や自己負担なども、すべて市町村の判断にゆだねられ、保険者間での格差が発生することになり「介護保険は、被保険者の要介護状態又は要支援状態に関し、必要な保険給付を行うものとする」と定めている介護保険法第2条に反することになります。
 また、介護予防給付の再編は2006年介護保険法改正時の重点のひとつである「予防重視型システムへの転換」から大きく舵を切るものです。「軽度者は、効果的なサービスを提供することにより、状態が維持・改善する可能性が高い(平成18年版厚生労働白書)」との認識に立ち、要支援者に必要でかつ効果的な介護保険給付が提供されることが必要です。

○新しい事業に伴う財源について
 改正案は、新しい事業として「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」及び「複合型サービス」が盛り込まれました。これら新規事業を行うためには介護保険財源が必要です。改正案では財政安定化基金の一部取り崩しを可能とする予定ですが、取り崩しは平成24年度限りであり、取り崩しの判断は都道府県に委ねられています。このままでは必要な財源が確保されない中での新規事業ということになりかねず、現行サービスの介護報酬削減による財源確保を行うとすれば、事業が立ち行かなくなる事業所が出てくるとともに、事業廃止等による利用者への影響が懸念されます。公費負担を5割から6割に増やすなど新事業財源への手当てが必要です。

○市町村介護保険事業計画について
 改正案は、市町村介護保険事業計画において、認知症である被保険者の地域における自立した日常生活の支援に関する事項、医療との連携に関する事項、高齢者の居住に係る施策との連携に関する事項等について定めるよう努めることとしています。
 上記は、日常生活圏域ごとに認知症高齢者等のニーズ調査を行い第5期介護保険事業計画に反映させることで具体化を図ることになります。これら調査を確実に実施し、結果を公表することを通じ保険者、住民、事業者等が自分たちの住むまちの介護に関わる問題解決に取り組めるような仕組みの構築が必要です。
 また、調査に応じない方々へのフォローアップ調査を徹底し、保険者ごとの認知症被保険者をはじめとする介護の実態が正確に反映されるべく、努力をするとともに経済的負担により介護保険サービスの利用を控えざるを得ない方々の調査も併せて実施することが必要です。

○社会医療法人が特別養護老人ホーム及び養護老人ホームの設置を可能とすることについて
 改正案は、社会福祉法人と同等の公益性を有する社会医療法人について、特別養護老人ホーム及び養護老人ホームの開設を可能としています。
 生活協同組合は消費生活協同組合法に基づき設立された法人です。非営利を原則とし厚生労働省、都道府県の監督のもと事業を行っており、公益性を有する存在といえます。
 私たちは組合員・地域住民の方々に医療・介護の切れ目のない支援体制を構築していく観点から消費生活協同組合による特別養護老人ホームの設置が可能となる措置を求めます。

○指定居宅サービス事業者の指定について
 改正案は、居宅サービスの量が市町村介護保険事業計画で定める見込み量に達している等の場合には、市町村は都道府県知事に対し当該居宅サービスの指定について相談し、協議の結果にもとづき当該居宅サービスの指定をしない、または条件を付すことができるとしています。
 これは、通所介護や訪問介護等、都道府県知事が指定する居宅サービスについて、市町村介護保険事業計画との関係でサービスが供給過剰であれば指定を行わないという総量の規制につながります。一律な総量規制ではなく要介護者が必要とするサービスが適切に提供されることが重視されるべきです。

○介護福祉士による喀痰吸引等の実施について
 改正案は、介護福祉士と認定特定行為業務従事者認定証の交付を受けた介護業務従事者(介護福祉士を除く)が診療の補助として喀痰吸引等を行うことができるとしています。
 本来、喀痰吸引等を行える看護師等資格者が適切に確保されることが必要です。資格者を適切に確保することなしに対象を介護福祉士等に拡げることは、根本的な問題解決を妨げることになります。

以上