医療福祉生協の理念をつくろう(4) 「医療生協の患者の権利章典」は医療福祉生協の理念的文書:comcom6月号

医療福祉生協連専務理事 藤谷惠三

医療福祉生協運動の基本となる考え方のひとつは、1991年に決定された「医療生協の患者の権利章典」です。当時の「お医者様に診てもらう」という意識が強い社会環境の中で、患者主権(権利)を高らかに宣言した先駆的な文書として評価され、「医療生協の患者の権利章典」に照らした実践の整理もおこなわれてきました。

一般的な「患者の権利」と「医療福祉生協の患者の権利」は何が違うのか。策定当時の文献を読み返してみると、違いを明らかにするために「医療生協とは何か」について多くの時間を割いて論議がおこなわれていたことが分かります。当時、患者の権利に関する宣言や文章は、ヨーロッパやアメリカではすでに定着し始めており、国内でもいくつかの先駆例がありました。その中で当時の医療生協では、「医療従事者も患者も同じ生協の組合員であることをどう活かすか」「医療における民主主義と協同組合の自治・参加・協同をどう実現するか」が真剣に論議されました。論議の到達点は「医療生協の患者の権利章典」の前半部分「医療における民主主義」と「医療生協」にまとめられました。

この中で「医療生協とは何か」という問いかけに、明確にこたえています。私は、大事な視点が2つあると思います。ひとつは、組合員(患者)が学習し成長することが強調されている点です。組合員自身が「自分の体の主人公」になることを要求し、自己決定ができるようになることで医療従事者と協同しようという視点が強調されています。もうひとつは、医療活動の全ての分野に組合員がかかわることの重要性を示していることです。「医療は素人にはよく分からない」を超えて、利用委員会をつくって医療の質を高めること、経営にもかかわること、医師や看護師の確保と育成に組合員が積極的にかかわることなど、医療生協の基本的な活動はこの文書をもとに広がってきました。

現在、全国の医療福祉生協では介護事業の広がりもあり、「患者」だけで組合員を表現することは難しくなっています。「健康の主体者」として元気な時も病める時も組合員と事業との関係をどのように構築するか。これが「医療生協の患者の権利章典」の発展と、医療福祉生協の理念の元になると思います。

資料 「医療生協の患者の権利章典」(抜粋)

【医療における民主主義】
人間が人間として尊重され、いかなる差別も受けることなく、必要な医療を受けることは、私たち国民すべてが持つ基本的権利です。民主主義を求める運動が前進し、健康で文化的に生きる権利という憲法の理念が、国民の間に根づいてきています。この視点から、医療における公開と参加が求められるようになりました。(略)

【医療生協】
医療生協は、地域の人々が、それぞれの健康と生活にかかわる問題を持ちより、組織をつくり、医療機関を所有・運営し、役職員・医療従事者との協同によって問題を解決するための運動をおこなう、消費生活協同組合法にもとづく住民の自主的組織です。
組合員は、出資、利用、運営を通じて、あらゆる活動の担い手です。保健・医療活動においても、単なる受診者・受療者ではなく、これらの活動に主体的にとりくむことが求められています。
医療生協では、班や家庭を基礎とし、地域で健康づくりの運動をすすめています。ここでいう健康なくらしとは、あらゆることに意欲的で、楽しく生きつづけることを可能にするため、自分を変え、社会に働きかけ、みんなが積極的に協力することです。これが私たちの追求する健康づくりの運動です。