夢に向かって一歩 また一歩~米子医療生協(鳥取県)境港支部:comcom1月号

米子の市街地を北の方角へ抜けていくと、弓なりにそった弓ヶ浜半島に差しかかります。その全長は、およそ20キロメートル。道路の左側には松の並木と白い砂浜。まさに白砂青松の世界です。そして、その北端が漫画家・水木しげる氏の故郷としてもよく知られた境港市。町の人口は、約3万6千人。風光明媚にして閑静な海辺のまちです。このまちに今年の5月、新しい支部が誕生しました。組合員数244人の境港支部です。

積年の思い

安田一夫理事がいいます。
「境港には昔から組合員がいました。主には境港と米子の中間にある弓ヶ浜診療所を利用していた人たちです。しかし、弓ヶ浜診療所の周辺で活動している弓ヶ浜支部に所属するにはちょっと距離が離れすぎていたので、弓ヶ浜支部に所属するということにはならなかったんです」

結局、境港のまちにくらす組合員は支部に所属せず、点在する形になりました。安田理事は、それが気にかかり、何としても境港のまちに支部をつくらなければ、という思いを抱き続けていたのです。同時に境港にくらす組合員の言葉が脳裏から離れませんでした。
「安田さん。境港のまちにも医療生協の診療所が必要だよ。もし、みんながその気なら、私は土地を提供するよ」

境港支部がデビューした健康まつり(おおたか診療所開設15周年記念)

2年ほど前のことです。安田さんの周りに支部づくりのために汗を流してもいいという人たちが現れました。状況は一変。「支部をつくりたい」から「支部をつくる」へと流れが変わったのです。それが現支部長の大山佑さんや副支部長の永見慎一さんたちでした。

大山佑さんがいいます。
「自分たちの診療所がほしい。この思いは、みんな持っていたと思う。だけど、支部もなく、組合員もバラバラでは力の出しようがない。自分たちの思いをかたちにするには、支部をつくって、組合員同士のつながりをつくって、力を束にして、新しい仲間をふやしていかないとねえ…」

まずは出会いの場をつくろう

2008年の秋、動きが本格化しました。支部結成準備会ができたのです。安田理事の周りには9人の元気な仲間が集結しました。安田理事が笑いながらいいます。
「いつの間にか元気なみなさんを僕が追いかけていく。そんな格好になりました」

結成準備会は、とりあえず出会い、ふれあいの場をつくろうということで多彩なプログラムを考案しました。霊峰大山の山裾に広がるリンゴ園でのリンゴ狩り、ソバ打ち体験と健康チェック、被爆体験を聞く会、保健大学、健康ウォーク、後期高齢者医療制度学習会などなど。その度に点在していた組合員を誘ったり、新しい仲間を誘ったり…。そして、10年5月、みごと支部結成にこぎつけたのです。

境港支部の出番は「きたろう体操」

境港は変化する

境港支部は9人の運営委員でスタート。第一に着手したのは、これまで郵送されていた機関紙「医療生協だより」の手配りです。地域内に19人の「手配りさん」を配置し、ほぼ100%に近い手配りを実現しました。副支部長の永見慎一さんがいいます。
「名簿を整理し、手配り網をつくってみて、初めてどこに組合員がいるのか、誰が組合員なのかが分かりました。これからは、手配りと合わせて対話をふやし、組合員さんの声が聞こえる支部にしていきたいと思っています」

 

「仕分け作業にも慣れました!」

運営委員の仁志澄子さんがいいます。
「そうなると、医療生協とは何か。組合員にはどんなメリットがあるのか。それを自分の言葉で語れるようにならないといけませんからね。結局は、こっちがしっかりと勉強しなければいけなくなります。必要に迫られますから、勉強が身につきますよ」

地域の組合員さんからの声も聞こえてきます。
「支部ができて、機関紙が配達される。温かな感じというか、組合員としてのつながりが実感できますね」

点在していた境港の組合員にも、「目覚めの時」が来たようです。

こんにちは境港支部です

台風が過ぎ去った10月31日。日曜日。米子市の郊外にある体育館、米子勤労者体育センターで、「おおたか診療所」開設15周年を記念する健康まつりが開催されました。体育館の入り口付近には各支部の「店」が並びます。その一角に境港支部の店が出ました。魚のまちともいわれる境港の「カニ汁」、郷土料理の「芋ぼた(芋ともち米を練り合わせたぼた餅)」「綿あめ」という品揃え。

「こんにちは! 境港支部です。『カニ汁』はいかがですか。『芋ぼた』もおいしいですよ!」
境港支部の健康まつりデビューです。慣れない売店業務に戸惑いやぎくしゃくもありましたが、売り切れた時は、みんなが素敵な笑顔になりました。

「いただきま~す!」「あちちっでもおいしっ!」カニ汁を食べにきたかわいいお客さん

組合員を100人ふやす

できるだけ早い時期に医療生協の診療所建設をめざす。これが、境港支部の展望です。といっても、まだ250人弱の組合員しかいません。当面の課題は組合員ふやしです。支部結成の準備段階から走り続けてきた運営委員のみなさんの前に提案されたのは100人という数字。その場の空気が重くなるのも無理はありません。11月の運営委員会で、副支部長の永見慎一さんがポツリといいました。
「このまちの組合員名簿を見ると、まだ声をかけられる人がたくさんいる。名簿以外に3人、4人の顔はすぐ浮かぶ。そんなに難しい数字じゃないと思います」

運営委員の仁志中さんがいいます。
「それぞれが1ヵ月に1人ふやせばいい。10ヵ月で10人だ。それを10人がやれば100人という数字が見える」

100人という大きな数字が、1ヵ月に1人と分解された時、運営委員会の空気が変わりました。境港支部は、将来の展望を開くためにコツコツと数字を積み上げる道を選択したのです。

花開く

診療所建設をめざしながらの歩み。その道程には、たくさんの花が見えます。組合員の顔が1人ひとり分かる境港のまち。組合員が寄り合い、語り合うたまり場づくり。健康づくりと助け合いの楽しい班会づくり。そして、お互いの趣味を生かしたサークルづくり…。

支部長の大山佑さんがいいました。
「道は遠いが、まずは500人の支部づくり。その先にはきっと診療所建設という大輪の花が見えてくる」

(左)「少しずつ裾野をひろげていかないとね」運営委員の仁志中さん
(中)「組合員のメリットをきちんと伝えたい」運営委員の仁志澄子さん
(右)「この頃は、みなさんの元気に引っぱられてます」理事の安田一夫さん

(左)「境港には声をかけられる人がまだまだいます」副支部長の永見慎一さん
(中)「境港で診療所づくり。これをめざしてがんばります」支部長の大山佑さん
(右)「そのうち500人の支部にしたいね」運営委員の明石孝男さん

〈米子医療生協〉

●設立年月日 1953年4月1日
●組合員数 5,730人
●出資金 1億1,876万4,000円
●支部・班数 4支部 42班
●事業所 医科診療所3 介護関連事業4
〈境港支部〉
●設立年月日 2010年5月7日
●組合員数 244人
●班数 3班
●支部運営委員 9人
※2010年10月31日現在