地域の根っこ~福島中央市民医療生協 吾妻西支部:comcom12月号

 

吾妻西支部

福島の市街地から真西へ約10キロメートル。のどかな田園地帯が広がり、その先には吾妻山系の山裾に点在する家々が見えてきます。福島市在庭坂、町庭坂、そして二子塚。吾妻西支部が活動する地域です。およそ2,000の世帯があり、817人の組合員がくらしています。今、地域を歩くと、荒廃した果樹園がところどころに…。高齢のために放置せざるを得なくなったのです。そこには果樹栽培に全てを注ぎ込んできた農民の悔しさと寂寥がにじんでいます。福島中央市民医療生協設立時に誕生し、間もなく30年になろうという歴史をもつ吾妻西支部。時代とともに高齢化がすすみ、厳しさを増す地域の中で奮闘しています。

訪問行動

訪問行動。雪の季節の心配事を聞く

吾妻西支部は地域内に80ヵ所のポイントを設けて、100%の機関紙配付を実現しています。しかし、山裾にある組合員の家は、あちこちに点在しており、配付するだけでも時間がかかります。配付時に声をかけ、話をしたくても、なかなかその余裕を生み出すことができません。

「配付するだけでは、読んでくれているのかいないのかわからない。組合員が抱えている困難も、医療生協に対する要望も聞きとることができない」
支部の運営委員会は、地域の声を聞こうと、訪問・対話活動を重要な柱に位置づけ、とりくんでいます。

浮かび上がる現実

雲ひとつない青空の下、ウォーキング前のストレッチ

「80歳になるが、後継者がいないから、今も現役で畑仕事をしている。いつまでやれるかわからないが、目の黒いうちは畑を荒らしてしまうわけにはいかない」
「もう年だ。車の運転ができなくなった。バス停まで遠く、おまけに坂道だから出かけるにも出かけられない。こうなったら家に閉じこもるしかないのか」

「去年の冬、凍りついた坂道で転倒し、頭を打った。救急車で運ばれ、大騒ぎになった」
「家の者は働きに出る。昼は一人ぼっち。誰もいない家で一日過ごすのは寂しすぎる」
対話の中から、日ごとに追い詰められていく高齢者のくらしが浮かび上がってきます。

支部長の後藤重勝さんがいいます。
「スーパーマーケットがあり、住宅が集まっている一帯はともかく、山あいのくらしは本当に大変なんです。診療所から送迎バスを回してもらって受診したり、デイケアをすすめたり…。話を聞くだけではなく、問題を具体的に解決していかないといけませんからね。けっこう大変です」

そして、こう付け加えました。
「大げさかもしれないけれど、支部の活動は地域の命綱、そんな気がします」

ウォーキングの途中。由緒ある神社の前でひと休み

これでいいのか

支部長の後藤さん。頭の中は「地域の要望に応えられる元気な支部づくり」でいっぱいです。ますます困難が増大する地域…。支部が元気を失ったら大変なことになると考えているからです。運営委員のみなさんと話し合い、地域の人と人をつなぐとりくみに力を入れています。健康づくり班会の定期開催をはじめ、カラオケ大会、ボーリング大会、バス旅行、芋煮会、健康づくりウォーキングなどの企画を定例化させ、組合員が交流できる場を一生懸命につくっています。健康づくり班会には通年で約80人が参加し、支部の企画には、やはり通年で約100人が参加するまでになりました。機関紙配付を100%やり遂げ、年中行事を定着させ、訪問活動と対話の中で地域の声を聞き、高齢の組合員が抱えている問題を事業所と連携しながらひとつずつ解決していく。立派な支部活動です。ですが、支部長をはじめ、運営委員のみなさんの中には、共通の悩みが残されていました。それは、何をやっても金太郎飴のように「顔ぶれが変わらない」という現実。これをどう解決するか、ということです。活動はやっているけど、800人組合員が住む地域全体に広がらない。このままでいいのか…。自分たちの支部活動を改めて見直す時がきていました。

支部を見つめる

10月、ウォーキングで汗を流し、楽しい芋煮会をやったあと、支部の役員や保健委員さんがテーブルを囲みました。コムコムの取材を契機に、支部活動の見直しをやってみようということになったのです。土地柄もあってか、遠慮がちで日頃はあまりモノをいわないという人たちが、ポツリポツリと語り出しました。

「企画ごとのテーマ設定が甘かったのではないか。何のために、誰のために企画するかということをもっと明確にすれば、声かけに広がりが出てくるのではないか」
「そういえば動員目標の設定、企画ごとの獲得目標…、こういった点もきちんと論議してこなかったね」
「私たち役員が、声をかけられる範囲、お誘いできる範囲から、もう一歩踏み出していない。だから地域的に広がらないし、同じ顔ぶれになる。…ということだよね」

「地域全体に企画の魅力を伝え、幅広く参加者を募るためには、お知らせとお誘いの方法をもっと工夫する必要があるのではないか」
「運営委員の中にも『支部活動のお手伝い』的な感覚があるような気がする。ここは意識変革しないといけない。みんなが積極的に意見をいい、知恵を出し合う…、そんな運営委員会づくりをしたいよね」
「地域の要望に応えていく活動をしていくのはもちろんのこと。これからは、それだけではなく、支部の姿が地域にどう見えているのか、ここらへんも客観的に評価できるような力をつけていきたいね」

深まる秋の陽ざしの中、支部運営にかかわる要点が、次から次へと飛び出してきました。

「いただきます」みなさんは芋煮が大好きです

新しき段階へ

吾妻西支部。その根は地域に深く根ざし、広がっています。ですが、その根っこでどんな樹を天空に伸ばすのか、枝を広げるのか。日々の忙しさに追われ、自分たちの明日について語り合う時間を忘れていました。それが「各自、できることをできる範囲でコツコツやる」というかたちを生み出し、持てる力の分散につながっていたのです。吾妻西支部は、今という時点に立ち「自分たちがめざす支部づくり」についての話し合いを開始しました。歴史のある支部です。きっと、地域の安心をつくるコーディネーターとしての役割を果たし、そこに若い世代を巻き込んでいく方策を見つけ出すに違いありません。

(左)「もっと意見がいい合える支部にしたいよね」副理事長の木村公(きみ)さん
(中)「改めて支部の姿を見直してみることも大事だね」支部長の後藤重勝さん
(右)「班会は、まさに「いのちの大運動」。これからも大切にしていきたい」運営委員の安斉文江さん


(左)「やっぱり組合員と職員の連携が大事。これが医療福祉生協の強みだものな」運営委員の茅原良朗さん
(中)「機関紙を配達するだけでなく、語り合うことも大切にしたい」保健委員の桜井静子さん
(右)「組合員としてつながりあうと安心というか、心強いっていわれる」運営委員の安斉真郷さん

芋煮を食べながら情報交換。ここから支部の課題が見えてきます

〈福島中央市民医療生協〉
●設立年月日 1982年5月8日
●組合員数 2万1,433人
●出資金 5億76,51万7,000円
●支部・班数 28支部 97班
●事業所 医科診療所4 介護関連事業19 健診事業1
〈吾妻西支部〉
●設立年月日 1984年1月29日
●組合員数 817人
●班数 10班
●支部運営委員 13人
※2010年10月16日現在